独立行政法人国民生活センター

検索メニュー

×閉じる

現在の位置:トップページ > 注目情報 > 発表情報 > 給湯器の貯湯タンクの転倒−大きな地震が起きて初めて見つかる設置不良「熊本地震の相談より」−

ここから本文
[2016年10月20日:公表]

給湯器の貯湯タンクの転倒−大きな地震が起きて初めて見つかる設置不良「熊本地震の相談より」−

*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。

 2016年4月14日(木曜)以降に発生した「平成28年熊本地震」(以下「熊本地震」)に関連して、給湯器の貯湯タンクが倒れたり、傾いたりして被害を受けたという相談が、被災地域の消費生活センター及び国民生活センターに寄せられました。

 給湯器の貯湯タンクの転倒によるトラブルは、東日本大震災の際も多くの相談が寄せられたことから、国民生活センターでは消費者に対しては注意喚起を、事業者に対しては要望を行いました。これを踏まえて、国土交通省でも「建築設備の構造耐力上安全な構造方法を定めた告示」を一部改正し、給湯設備の転倒防止措置を講ずる際の基準を明確にしました。

 しかし、今回の熊本地震でも、設置工事の不備が原因とみられる転倒事例が複数みられました。

 そこで、熊本地震における相談事例を紹介するとともに、今後の貯湯タンクの転倒によるトラブルを未然に防ぐための注意点について情報提供します。

PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)(注)にみる相談の概要

(1)相談件数

 熊本地震が発生した4月14日以降10月3日までの間に、給湯器の貯湯タンクが転倒したという内容の相談が82件寄せられています。

(2)給湯器設置からの年数

 転倒事例のうち給湯器を設置した時期が分かった55件について、設置からの年数を見ると、平均は7.1年で、最も短いものは2カ月、最も長いものは28年でした。なお、5年以内、つまり東日本大震災が発生した後に設置したと思われるものが約半数を占めました。

  • (注)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのこと。

相談事例

【事例1】
設置説明書ではM12のアンカーボルトが指定されているが実際はM8が使われていた
【事例2】
19年前に設置した貯湯タンクが二つのブロックに載せただけで固定されていなかった
【事例3】
倒れた貯湯タンクの接地面を確認したらボルト固定がされておらずじか置きだった
【事例4】
アンカーボルトを打つ位置が設置説明書通りではなかった
【事例5】
コンクリートの基礎が薄かったため貯湯タンクがアンカーボルトごと抜けて倒れた
【事例6】
貯湯タンクを固定した土台状のものが地面に固定されていなかった
【事例7】
倒れた貯湯タンクで隣家に損害を与えてしまった

問題点

  1. 「設置説明書」通りに施工されていない
  2. 大きな地震が起きるまで、設置不良が見過ごされやすい
  3. 複数の事業者が関連しているため、責任の所在が不明確なケースがある
  4. 東日本大震災の教訓が生かされていない

消費者へのアドバイス

(1)現在給湯器を設置している場合

  • 給湯器の設置がメーカーの設置説明書の通りになっているかを確認しましょう。
  • もし、設置説明書通りの工事がなされていなかった場合は、設置業者にその旨を伝えて、説明書通りにしっかり固定してもらうようにしましょう。
  • 当初の工事が設置説明書通りになされたとしても、年月の経過により固定が緩む可能性もありますので、心配な点がありましたら、設置業者に点検を依頼しましょう。

(2)これから給湯器を設置する場合

  • 給湯器を設置する際は、設置説明書通りの工事を行っているかを、設置業者とともに確認しましょう。
  • 設置時に渡された書類は、その給湯器を使用している間は保管しておきましょう。
  • その他、設置工事について疑問点がある場合は、納得するまでメーカーや設置業者に確認しましょう。

(3)不明な点は最寄りの消費生活センターに相談しましょう

事業者団体への要望

(1)給湯器メーカーに対して

  • 改正告示で示された「給湯設備の転倒防止措置を講ずる際の基準」を満たす設置説明書を、引き続き作成・使用すること。
  • 消費者にとって分かりやすく、工事の内容ができるだけ詳細に確認できるチェックリストを作成すること。
  • 販売業者、設置業者に対して、既に設置している機器の点検を行うことを呼びかけるとともに、設置説明書通りの工事を行うよう対策を講じること。

(2)販売業者・設置業者に対して

  • 機器の設置工事の不備や地震により、機器が不安定になっている可能性があることから、既に設置している機器の点検を行うこと。
  • 設置説明書通りの工事を行うよう徹底すること。
  • 設置説明書通りの工事を行ったかどうか消費者に説明するとともに、消費者に設置説明書等の関係書類を確実に渡すこと。

要望先

  • 一般社団法人日本電機工業会(法人番号8010005016727)
  • 一般社団法人日本冷凍空調工業会(法人番号9010405010551)
  • 一般社団法人日本ガス石油機器工業会(法人番号4010005018108)
  • 一般社団法人住宅生産団体連合会(法人番号2010405000311)
  • 一般社団法人日本建設業連合会(法人番号7010005003742)
  • 一般社団法人日本建設業経営協会(法人番号3010005017936)
  • 一般社団法人全国中小建設業協会(法人番号9010005003170)
  • 全日本電気工事業工業組合連合会(法人番号9010405001848)

情報提供先

  • 消費者庁消費者政策課(法人番号5000012010024)
  • 内閣府消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
  • 経済産業省商務情報政策局情報通信機器課(法人番号4000012090001)
  • 国土交通省住宅局建築指導課(法人番号2000012100001)
  • 電気事業連合会

参考

熊本地震で転倒した貯湯タンクの一例
横倒しになり、底部が見えている貯湯タンクの写真


本件連絡先 相談情報部
ご相談は、お住まいの自治体の消費生活センター等にお問い合わせください。

※[PDF形式]で作成した文書を開くにはAdobe Readerが必要となります。PDF形式の閲覧方法について