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[2016年9月30日:更新]
[2016年9月15日:公表]

60歳以上の女性の美容医療トラブルが高額化!−しわ取り注射で1,300万円もの請求が…−

*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。

 近年、全国の消費生活センター等に寄せられた美容医療サービス(注)に関する相談をみると、60歳以上の相談件数は2014年度がピークであるものの、契約購入金額は年々高額化しています(図)。

 自由診療が中心である美容医療では、施術費用は個々のクリニックで自由に設定できます。しかし、注射を数本打たれ1,000万円前後の請求を受けた事例が複数みられる等、深刻な高額請求トラブルが60歳以上の女性を中心に発生しています。また、料金が明確な基準に基づいて請求されているのか不明である事例や、施術費用を明確にしないまま施術をされた後で高額請求された事例等、費用に関するトラブルが目立ちます。

 美容医療は病気の治療と異なり、本人がなりたい姿を実現するための施術であることから、医師による十分な説明のもと、本人が納得して施術に同意することがより重要になります。しかし、施術内容や費用、リスクについて、十分な説明がなく納得しないまま即日契約・即日施術をさせられてしまうケースが少なくありません。そこで、トラブルに遭わずに、施術を希望する人が納得した上で施術を受けられるよう、60歳以上の女性における美容医療トラブルの実情を周知するとともに、注意点をまとめたチェックリストも併せて情報提供を行います。

  • (注)美容医療サービスとは、医師による医療のうち、「専ら美容の向上を目的として行われる医療サービス」を指し、医療脱毛、脂肪吸引、豊胸手術、二重まぶた手術、包茎手術、審美歯科等が主な施術である。

図 美容医療サービスにおける契約当事者60歳以上の相談件数及び契約購入金額平均額の推移
2011年度から2016年8月31日までの年度別相談件数と年度別契約購入金額平均額のグラフ。グラフに続いてテキストによる詳細。

(2016年8月31日までの登録分であり、2016年度は参考値)

 2011年度の美容医療契約当事者60歳以上の相談件数は160件、2012年度の美容医療契約当事者60歳以上の相談件数は193件、2013年度の美容医療契約当事者60歳以上の相談件数は230件、2014年度の美容医療契約当事者60歳以上の相談件数は253件、2015年度の美容医療契約当事者60歳以上の相談件数は204件、2016年8月31日までの美容医療契約当事者60歳以上の相談件数は67件です。2011年度の契約購入金額の全体平均金額は68万2781円、そのうち60歳以上の平均金額は86万5086円、2012年度の契約購入金額の全体平均金額は64万3926円、そのうち60歳以上の平均金額は97万9508円、2013年度の契約購入金額の全体平均金額は67万1332円、そのうち60歳以上の平均金額は122万4707円、2014年度の契約購入金額の全体平均金額は76万221円、そのうち60歳以上の平均金額は124万5200円、2015年度の契約購入金額の全体平均金額は70万8428円、そのうち60歳以上の平均金額は126万8023円、2016年8月31日までの契約購入金額の全体平均金額は68万7395円、そのうち60歳以上の平均金額は162万6925円です。

相談事例

【事例1】
 しわ伸ばしのためにクリニックに行ったら即日施術され、約1,300万円を請求された
【事例2】
 相談のつもりで訪れたクリニックでしつこく勧誘され、帰るために即日施術をしてしまった
【事例3】
 クリニックでリフトアップの注射をした。一部支払ったが、効果の説明や高額な請求に納得がいかない
【事例4】
 目の下のたるみを取る注射をしたが、5年間保証なのに全く効果がなく、対応もされない
【事例5】
 腹部の脂肪溶解注射を勧められ、当日に施術したが、対応がずさんで高額すぎる。効果も感じられず解約したい
【事例6】
 クリニックで口の周りのしわを取る施術を受けたが、腫れがひかない。ずさんな施術なのに高額な支払いに納得ができない

相談事例からみられる問題点

  1. きっかけは「折り込み広告」
  2. 医師でないクリニックのスタッフが医療行為をしている可能性も
  3. 効果を強調するが、根拠は不明確、即日施術を迫るケースも
  4. 料金体系が不透明、支払える金額によって料金が変わる
  5. 苦情が申し立てにくい、「異議申し立てしない」という誓約書に署名させられている

消費者へのアドバイス

  1. リスクなく簡単にきれいになれるとうたう広告をうのみにしないようにしましょう
  2. 医師の担当する範囲や施術の流れを十分に確認しましょう
  3. 想定した金額より高額な料金を提示された場合には、契約しないことを伝えましょう。特に、希望しない即日施術ははっきり断りましょう
  4. やむなく高額な契約をしてトラブルとなった場合等には、消費生活センターに相談しましょう

行政への要望

 全国的に60歳以上の女性の高額な美容医療トラブルが発生し、深刻化していることを踏まえ、厚生労働省に以下の通り要望します。

  • 高齢者が、広域的にトラブルに巻き込まれている実情を踏まえ、全国の自治体に対し高齢者被害の防止の観点から、本トラブルについて十分な周知を行うとともに、各種法令に照らして問題のある事業者について、適切な指導等の実施を促すこと
  • 広域的に発生している上記トラブルに迅速に対応するため、全国の自治体間で相互に関連する情報の共有をより一層充実させること。特に問題のある事業者に対して行政指導等を行った場合には、その指導事例の共有等により、円滑な指導のための連携を行うこと

要望先

  • 厚生労働省 医政局 総務課(法人番号6000012070001)

情報提供先

  • 消費者庁 消費者政策課(法人番号5000012010024)
  • 消費者庁 表示対策課(法人番号5000012010024)
  • 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
  • 警察庁 生活安全局 生活経済対策管理官(法人番号8000012130001)
  • 公益社団法人日本美容医療協会(法人番号4010005016755)
  • 一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)(法人番号1010005013078)
  • 一般社団法人日本美容外科学会(JSAS)(法人番号7010005019920)
  • 公益社団法人日本広告審査機構(法人番号3010005016566)

本件連絡先 相談情報部
ご相談は、お住まいの自治体の消費生活センター等にお問い合わせください。

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<お知らせ>

 報告書本文内の一部のグラフの体裁を修正いたしました。(2016年9月30日)