[2019年12月12日:公表]
ベビーカーの転倒による乳幼児の事故に注意−ベビーカーから転落し、頭部にけがを負い入院する事例も!−
*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。
現在販売されているベビーカーは、ハンドルの固定位置を変えて背面と対面を切り替えることができる商品、軽量・コンパクトな商品、3輪の商品、小回りが利いて押しやすい商品など多様化しています。
医療機関ネットワーク事業(注1)には、2014年度以降にベビーカーごと転倒あるいは乳幼児が転落してけがをした事例が288件寄せられています(注2)。
当センターにも、「ベビーカーが停止中に転倒した」というテスト依頼がありました。
そこで、インターネットアンケート調査を実施して、消費者の使用実態を明らかにすると共に、現在販売されているベビーカーについてベビーカーごと転倒あるいは乳幼児が転落する要因の調査を行い、使い方について注意喚起することとしました。
- (注1)消費者庁と国民生活センターとの共同事業で、消費生活において生命または身体に被害が生じた事故に遭い、参画医療機関を受診したことによる事故情報を収集するもので、2010年12月から運用を開始しました。【参考】医療機関からの事故情報収集
- (注2)2019年10月末日までの伝送分。件数は本公表のために特別に精査したものです。
消費者へのアンケート調査
- 約3割の人が、ベビーカーごと転倒あるいは子どもが転落したことがあると回答しました
- ベビーカーごと転倒あるいは子どもが転落した原因は、共に「ハンドルや後付けした荷提げフックの荷物」と回答した人が最も多くいました
- 7割を超える人が、ベビーカーにハンドルに荷物を掛けるためのフックを付けていました
- ハンドルに付ける荷提げフックには、取り出す機会が多くあるものや、外出先で購入した商品を掛ける傾向がみられました
- ハンドルに荷物を掛けている人の約9割は、ハンドルに荷物を掛けることでベビーカーがバランスを崩し、転倒のおそれがあると考えたことがありました
- 9割を超える人が、ベビーカーの座席下のカゴを使用していました
- 約3割の人が、座席下のカゴについて、使いづらいと感じていました
- 子どもにシートベルトを毎回装着させる人は7割未満でした
- 8割を超える人が、シートベルトを装着していないとベビーカーから子どもが転落するおそれがあると考えたことがありました
医療機関ネットワーク事業のハンドルに掛けた荷物による転倒事例
医療機関ネットワーク事業には、ハンドルに荷物を掛けたことでベビーカーが転倒あるいはバランスを崩し、乳幼児がけがをした事例が少なくとも24件寄せられています。これらの事例について調べたところ、受傷者の年齢は7カ月未満が約8割と最も多く、処置見込みは、入院や通院を要するものが約5割を占めており、受傷部位は頭部と顔面が9割以上を占めていました。
テスト結果
SG基準の安定性試験
- 全ての銘柄がSG基準の安定性を満たしていました
転倒に至る角度
- 登り坂では、ハンドルに荷物を掛けることで、転倒しやすくなりました
図 ハンドルに掛けた荷物による、登り方向で転倒に至る角度の違い
シートベルトの装着による影響
- ベビーカーが転倒した場合、シートベルトを装着していないと子どもが投げ出されることがありました
表示
- 全ての銘柄の取扱説明書などには、ハンドルに荷物を掛けた場合、転倒しやすくなる旨、シートベルトを装着していないと子どもが転落する旨の警告表示がみられました
座席下のカゴ
- 座席下のカゴの容積は9,000〜18,000cm3あり、取扱説明書には最大積載荷重が5kgまでとの記載がありました。また、銘柄によっては、荷物を出し入れする開口部を大きく設けるなど、荷物の出し入れがしやすい構造となっていました
- 座席下のカゴは、ベビーカーの状態によっては、立った状態では中身を確認しづらく、子どもを抱くなどしゃがむことが困難な状態では荷物を出し入れしづらいと考えられました
消費者へのアドバイス
- 今回テスト対象とした全銘柄で、ハンドルに荷物を掛けないよう警告表示がされていました。ハンドルに荷物を掛けると転倒しやすくなることを認識しましょう
- 子どもを乗せたら、その都度、必ずシートベルトを装着させましょう
事業者・業界への要望
- 消費者のニーズに合わせ、ハンドル周辺に荷物を掛けて使用することを想定したベビーカーも商品ラインナップに加えるなど、さらなる商品開発の検討を要望します
- シートベルトを装着していない場合、子どもが転落するおそれがある旨について、さらなる啓発を要望します
要望先
- 全国ベビー&シルバー用品協同組合(法人番号なし)
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
- 内閣府 子ども・子育て本部(法人番号2000012010019)
- 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
- 厚生労働省 子ども家庭局 総務課(法人番号6000012070001)
- 厚生労働省 子ども家庭局 母子保健課(法人番号6000012070001)
- 経済産業省 製造産業局 生活製品課(法人番号4000012090001)
- 経済産業省 商務情報政策局 産業保安グループ 製品安全課(法人番号4000012090001)
- 一般財団法人製品安全協会(法人番号1010505002118)
動画
業界の意見 ※2020年1月28日 追加
株式会社西松屋チェーンより
安定性について
SG基準による安定性評価が実施されておりましたが、条件は9kg、15kgのおもりを座面に載せ、12度傾斜にて判断されております。
一方、市場におけるハンドルに荷物を掛けた状態での転倒再現試験は3.9kgのダミー人形を乗せた状態でハンドルに荷物(3kg)の有無によるものとなっております。
荷物無しの場合、17〜27度の実力が、荷物ありの場合1〜12度になると書かれております。
荷物有無による影響で15度以上小さくなるとのことですが、何度以上あれば転倒しにくい(安定性がある)とお考えでしょうか?
仮に新たなベビーカーを開発し、対応傾斜角が向上しても、転倒しない商品は現実的には難しく、お客様訴求は非常に難しいと考えます。
商品テスト部の見解
今回のテストは、ハンドルに荷物に見立てた3kgのおもりを掛けた場合と掛けていない場合について、転倒に至る角度の差を調べるために実施したもので、何度以上であれば転倒しにくい(安定性がある)と判定しているものではございません。また、ハンドルに荷物を掛けた状態での転倒のしづらさについて定めた規格・基準が存在しない現時点で、当方が具体的数値を述べることは適切ではないと考えております。
一方で、多くの消費者がハンドルに荷物を掛けている実態、それにより事故が起きている実態がございます。
例えば、ホイールベースを伸ばす、重心を低くする、ハンドルの位置を変えるなどによって、荷物の有無による影響が既存のものよりも小さいベビーカーを開発し商品ラインナップに加えて頂くことなどで、ベビーカーの転倒による子どもの事故を減らすことができるのではないかと考えております。
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
※[PDF形式]で作成した文書を開くにはAdobe Readerが必要となります。PDF形式の閲覧方法について