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[2016年3月8日:更新]
[2016年2月18日:公表]

自転車用レインウェアの運転への影響と安全性について

*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。

 2015年6月1日に施行された改正道路交通法により、自転車に乗りながら傘を差したり、携帯電話を操作したりする「ながら運転」をして交通事故を起こし、安全運転義務違反として検挙されるなど、自転車の運転に関する危険行為を3年以内に2回以上行い、検挙された人は「自転車運転者講習」(注1)を受けることが義務付けられました。このような背景から、レインウェアの一部を改良し、自転車で使用できることをうたったレインウェアなども販売されるようになっています。

 こうした状況を受け、雨の日に自転車を使用する2,000人(男女各1,000人)に対してインターネットアンケートを行ったところ、レインウェアを使用していて危険を感じた人が418人、実際にけがをした人が60人おり、その原因は、駆動部への巻き込みや、周りが見えないことであることが分かりました。

 また、医療機関ネットワーク(注2)や、PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)(注3)には、レインウェアを入れた袋が車輪に巻き込まれて転倒し骨折した事例や、レインウェアのフードで左右が見えず車にはねられた事例が見られました。

 そこで、アンケート調査結果や事故事例をもとに、自転車用レインウェアの運転への影響と安全性についてテストを行い、消費者に情報提供することとしました。

  • (注1)3時間の有料講習であり、受講命令に違反した場合は5万円以下の罰金が科されます。
  • (注2)医療機関ネットワークとは、2010年12月から運用が開始された消費者庁と国民生活センターとの共同事業で、消費生活において生命または、身体に被害が生じる事故に遭い医療機関を利用した被害者から、事故の情報を収集するものです。
  • (注3)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する情報を蓄積しているデータベースのことです。

アンケート結果

  • 全国で雨天時に自転車を使用することのある15歳〜79歳までの男女2,000人に、現在使用している雨具を聞いたところ、レインウェアが57.4%、雨傘が31.3%でした。
  • 自転車運転時にレインウェアを使用する1,147人に対して、過去5年以内で、自転車運転時にレインウェアが原因で危ないと思った人は36.4%(418人)で、けがをした人は5.2%(60人)でした。
  • 危ないと思った、けがをした原因は、「周りが見えなかった」、「雨具が巻き込まれた、または、巻き込まれそうになった」が多いことが分かりました。

テスト結果

駆動部への巻き込まれ

  • ポンチョやロングポンチョは前かごや荷台がない自転車では、裾が車輪と接触し巻き込まれる可能性があります。
  • ズボンの裾の締め付けにドローコードが使用されている銘柄で、チェーンにカバーが付いていない自転車に乗車すると、ドローコードがチェーンに巻き込まれることがあります。
  • 前かごに入れた収納袋のドローコードが垂れ下がると前輪に接触し、前輪ロックにつながる可能性があります。

レインウェアが原因となる視界遮断

  • 風が強い状況で、ロングポンチョを使用する場合、前かご用留め具を正しく使用しないと、裾が舞い上がり視界が遮られることがあります。
  • 周囲を確認する際に、フード調節機能を正しく使用しないと、首の動きにフードが付いてこないことがあり、左右の視界が遮られることがあります。

注意表示等の確認

  • 自転車用レインウェアの多くで、注意表示などの表示が不足していました。

写真1.ドローコードが前輪に巻き込まれ停止した例
前かごに入れた収納袋のドローコードが垂れ下がり、前輪に巻き込まれ、前輪が停止した状態の写真

写真2.強風によるロングポンチョの舞い上がり例
風が強い状況で、ロングポンチョを使用していて、裾が舞い上がり視界が遮られている写真

写真3.顔を動かした際のフードによる視界遮断の例
a)フード調整機能を使用した場合
フード調節機能を使用している場合に周囲を確認する様子を表した写真。横を向いても視界は遮られない。

b)フード調整機能を使用しない場合
フード調節機能を使用していない場合に周囲を確認する様子を表した写真。首の動きにフードが付いてこず、左右の視界が遮られている。

消費者へのアドバイス

  • 自転車との組み合わせによってはポンチョやロングポンチョの裾や、レインスーツのドローコードが駆動部に接触し巻き込まれることがあります。使用する前に、レインウェアと駆動部が接触していないか確認しましょう。
  • 前かごまで覆うよう前丈が長く作られているロングポンチョは、風にあおられ舞い上がった際に視界が遮られることがあります。風の強い日は使用しないようにしましょう。
  • フードの調整装備を正しく使用しないと、首を左右に動かした際に、フードが首の動きに付いてこないことがあるため、左右の視界が遮られることがあります。
  • レインウェアの収納袋を前かごに入れて運転する場合、垂れ下がったドローコードが前輪に接触し転倒する可能性があります。

事業者への要望

  • より安全に使用できる商品の開発を要望します。
  • 駆動部への巻き込まれ、レインウェアが原因となる視界遮断についての注意表示、使用できる自転車の種類、レインウェアの着方やいろいろな機能の使用方法についての表示の改善を要望します。

情報提供先

  • 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
  • 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
  • 警察庁 交通局 交通企画課(法人番号8000012130001)
  • 経済産業省 商務情報政策局 製品安全課(法人番号4000012090001)
  • 公益社団法人日本通信販売協会(法人番号9010005018680)
  • 一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会(法人番号8010005004343)
  • 日本チェーンストア協会(法人番号なし)
  • 日本百貨店協会(法人番号なし)

動画

業界の意見 ※2016年3月8日 追加

「有限会社大久保製作所」より

 最近、インターネット・ホームセンター・自転車店で販売されている「自転車に使用できる」と表示されたレインウエアーの中に、自転車専用レインウエアーとして不具合な製品がございます。特に昨年、6月1日以降の傘さし運転への取り締まり強化を受け、安全性を無視ないしは、軽視した製品が自転車専用として販売されています。

 当社の「自転車屋さんのポンチョ」は開発当初から安全性を一番に考慮し開発に取り組んで参りました。開発のポイントとして(1)前は長く、雨を防ぐ範囲を広げ、前カゴメクレ防止クリップ(報告書中「前かご用留め具」)を使用する事により強い風でもポンチョのメクレ上り、視界を妨げる事が無い様に工夫しています。(2)後身ごろは短い構造にして、車輪に巻き込まれ難くい設計にしております。

「駆動部への巻き込まれ」について

 ポンチョ・ロングポンチョの全てで、前かご、荷台、チェーンカバーのない自転車(自転車2)において、後輪又は前輪に接触し、巻き込まれる可能性があるとの報告がなされていますが、弊社の「自転車屋さんのポンチョ」は、車輪に巻き込まれにくい構造である為、前かご、荷台、チェーンカバーのある自転車(自転車1)では接触しない事がこの実験で証明されております。適応車種の表示でも、前カゴが無い自転車には使用出来ない事を明瞭にしております。

「レインウエアーが原因となる視界遮断」について

 強風によるロングポンチョの舞い上がり例として、前カゴ用留め具が無い場合と、留め具を使用しない場合は、裾が舞い上がり頭部に覆いかぶさり視界が遮られる状態となることが報告されています。一方、前カゴ用留めを使用した場合は、頭部に覆いかぶさる事なく、視界が遮られることがなかったと報告されています。このことから、弊社のメクレ防止機能を目的としたクリップが強風にも耐えて機能した事が証明され評価されたと推測出来ます。

 昨年の6月1日の道交法改正以降、弊社の「自転車屋さんのポンチョ」の類似製品が多く市場に出回っており、今回の国民生活センターの「自転車用レインウエアーの運転への影響と安全性について」の報告結果をふまえ、危険な製品が排除され自転車運転の際に安全に使用出来る商品が市場に増える事を弊社としましては願う処であります。

有限会社 大久保製作所 代表取締役 大久保富彦


本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165

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