なくならない脱毛施術による危害
*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。
全国の消費生活センター等には、2012年度以降の約5年間に、脱毛施術により危害を受けたという相談が964件寄せられています(図)。件数は2013年度以降減少傾向にありましたが、昨年度は前年度同時期に比べて増加傾向がみられました。危害事例の内訳をみると、エステで受けた脱毛によるものが680件、医療機関で受けた脱毛によるものが284件でした。
また、当センターで実施したインターネットアンケート調査では、回答者の約4分の1が、過去3年間に脱毛を受けた後に、やけど、痛み、ヒリヒリ感などの身体症状が生じた経験があると回答しました。
そこで、脱毛を受けて危害が発生したという相談情報と、アンケート調査結果の分析を行い、消費者に情報提供するとともに、消費者トラブルの未然防止・拡大防止のため、関係機関への要望及び情報提供を行います。
図 危害件数の推移
2017年2月末日までの登録分
※カッコ内は前年度同時期件数(2016年2月末日までの登録分)
2012年度の危害件数は201件、うちエステで受けた脱毛によるものが147件、医療機関で受けた脱毛によるものが54件、2013年度の危害件数は210件、うちエステで受けた脱毛によるものが164件、医療機関で受けた脱毛によるものが46件、2014年度の危害件数は204件、うちエステで受けた脱毛によるものが143件、医療機関で受けた脱毛によるものが61件、2015年度の危害件数は170件、うちエステで受けた脱毛によるものが117件、医療機関で受けた脱毛によるものが53件、2016年度2月末日までの危害件数は179件(前年度同時期の件数は146件)、うちエステで受けた脱毛によるものが109件(前年度同時期の件数は100件)、医療機関で受けた脱毛によるものが70件(前年度同時期の件数は46件)です。
脱毛について
医療機関では、レーザー等により毛の発生源を破壊する等、高い効果が得られる脱毛を受けることができます。皮膚内部の組織を破壊する行為ですので、やけど等の皮膚トラブルが起きるおそれもありますが、トラブルが起きた際も直ちに医師の診察を受けることができます。
一方、エステでは、光を照射すること等による一時的な除毛・減毛など、医行為に該当しない範囲の施術しか行うことができません。
危害事例の概要
- 危害事例を施術の内容別に集計すると、エステは、「光脱毛」、「レーザー脱毛」、「電気脱毛」の順に多くみられました。医療機関は、「レーザー脱毛」が大部分を占めていました。
- 危害の内容別に集計すると、エステ、医療機関ともに、「皮膚障害」、「熱傷」が多くみられました。
- 危害の程度別に集計すると、エステは57.3%、医療機関は67.0%が、発生した危害について医療機関で治療を受けており、治療に長期間を要した事例もみられました。
主な危害事例
エステで受けた施術による事例
- 【事例】
- 毛穴に針を刺して毛根を熱で死滅させる永久脱毛の施術を受けたら赤く腫れあがった。
- 【事例】
- 肛門周りの光脱毛でやけどを負い、完治まで1年以上かかることもあると言われた。
医療機関で受けた施術による事例
- 【事例】
- 美容外科でひざ下のレーザー脱毛を受けたらやけどのように腫れ、色素沈着が残った。
- 【事例】
- レーザー脱毛を受けたら蕁麻疹(じんましん)が出て、完治に半年かかると言われた。
消費者に対するアンケート結果
- インターネット上の情報をきっかけに脱毛を受ける人が多いことが分かりました。
- 回答者の約4分の1は、脱毛を受けた後にやけど、痛み、ヒリヒリ感などの身体症状が生じた経験がありました。
- 脱毛を受けてやけど等の症状が生じた人のうち7割以上は、事前にリスクに関する説明を受けていませんでした。
広告等の調査
エステの広告、ホームページ
- 医師法に抵触するおそれのある施術をイメージさせる表現がみられました。
- 危害もなく、安全な施術であるとイメージさせる表現がみられ、消費者に誤認を与えるおそれがありました。
医療機関の広告、ホームページ
- 比較広告など、医療広告ガイドラインで禁止された広告がみられ、関係法令に抵触するおそれがありました。
- 「医療機関ホームページガイドライン」において、ホームページに掲載すべきでないとされた内容の記載がみられ、消費者に誤認を与えるおそれがありました。
問題点
エステにおける脱毛の問題点
- PIO-NETには、エステで脱毛を受けて危害が発生したという相談が約5年間で680件寄せられており、中には、医師法等に抵触するおそれがある施術を受けたという相談もみられました。
- 施術前のリスクの説明が不十分と思われるケースがあります。
- 医師法に抵触するおそれのある施術をイメージさせる表現や、安全面で消費者に誤認を与えるおそれのある広告・ホームページがみられました。
医療機関における脱毛の問題点
- 施術前のリスクの説明が不十分と思われるケースがあります。
- 危害を受けた場合の対応が不十分・不適切と感じている消費者がいます。
- 医療法等の関係法令に抵触するおそれのある医療機関の広告がみられました。また、消費者に誤認を与えるおそれのあるホームページがみられました。
消費者へのアドバイス
- エステで受けることのできる脱毛と医療機関で受けることのできる脱毛の違いをよく理解しましょう。
- 脱毛を受ける場合は、ホームページや広告の情報をうのみにせず、自ら十分な情報収集を行うとともに、施術前にリスク等に関する説明を十分に求めましょう。
- 脱毛により危害を受けた場合は、速やかに医療機関を受診するとともに、消費生活センター等に相談しましょう。
関係機関への要望
- エステで脱毛を受けて危害が発生したという相談が寄せられています。医師法等の関係法令を遵守するとともに、一定以上の安全性を担保するためのガイドラインを業界全体に周知するよう要望します。
- エステの広告について、安全面で消費者に誤認を与えることのないよう、改善を要望します。
- 脱毛を行う医療機関は、施術前のインフォームド・コンセントを充実させるとともに、やけど等のトラブルが発生した際は適切な対応を講じるよう要望します。
- 法律に抵触するおそれのある医療機関の広告について、改善を要望します。また、消費者に誤認を与えるおそれのある医療機関のホームページについて、改善を要望します。
行政への要望
- エステの脱毛施術により危害が発生したという相談が寄せられています。消費者が施術内容やリスク等を認識し、安全に施術を受けられるよう、消費者への周知、啓発等適切な対応を要望します。
- エステの脱毛施術による危害が発生したという相談が寄せられています。エステ事業者等に対し、施術内容やリスク等について事前説明を十分行った上で安全な施術を心掛けるよう、関係業界団体への周知を要望します。
- エステで医師法に抵触する施術が行われている場合は、適切な対応を講じるよう要望します。
- 脱毛を行う医療機関において十分なインフォームド・コンセントがなされるよう、指導を要望します。
- 法律に抵触するおそれのある医療機関の広告について、指導を徹底するよう要望します。また、消費者に誤認を与えるおそれのある医療機関のホームページについて、指導を行うよう要望します。
要望先
- 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
- 厚生労働省 医政局 総務課(法人番号6000012070001)
- 厚生労働省 医政局 医事課(法人番号6000012070001)
- 経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課(法人番号4000012090001)
- 公益財団法人日本エステティック研究財団(法人番号2010405000889)
- 一般社団法人日本エステティック振興協議会(法人番号9010505002440)
- 公益社団法人日本美容医療協会(法人番号4010005016755)
- 一般社団法人日本美容皮膚科学会(法人番号1011105007093)
- 一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)(法人番号1010005013078)
- 一般社団法人日本美容外科学会(JSAS)(法人番号7010005019920)
情報提供先
- 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
- 警察庁 生活安全局 生活経済対策管理官(法人番号8000012130001)
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
[報告書本文] なくならない脱毛施術による危害[PDF形式](654KB)
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