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[2024年6月18日:更新]
[2020年8月20日:公表]

自動車用緊急脱出ハンマーによるガラスの破砕−万が一の水没事故に備えましょう−

*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。

 近年、豪雨により道路が冠水したり、川が氾濫する等して水没した車内に乗員が閉じ込められてしまったという報道を目にする機会が増えています。

 自動車が一定の深さまで水没してしまうとドアに水圧が加わり、ドアを開けることが困難になります。さらに浸水が進むと電気系統が故障してパワーウインドーが動かなくなるおそれがあります。このほか、交通事故の際にもドアが歪んで開かなくなるおそれもあります。さらに、こうした状況の中で自動車が転覆や転倒した場合には、シートベルトに乗員の体重が加わり、シートベルトがロックして外すことが困難となります。

 車内に閉じ込められてしまった際に、シートベルトを切断し、ドアガラス(運転席ドアや助手席ドア、後席ドアのガラス)やサイドガラス(スライドドアのガラス)を破砕して車外へ脱出するためには自動車用緊急脱出ハンマー(以降、緊急脱出ハンマー)が有効な商品です。国民生活センターでは2012年から2013年にかけて、シートベルトを切断するのに時間を要する商品、ドアガラス等を破砕することができない商品について、注意喚起を行ってきました。

 また、近年では静粛性向上を目的にドアガラスに合わせガラスを採用した車種も増えています。こうした車種の場合、ドアガラスを緊急脱出ハンマーで破砕することができません。

 そこで、緊急脱出ハンマーの普及状況や自動車用ガラスの種類の実態をアンケート調査するとともに、ドアガラス破砕や、緊急脱出ハンマーに付属していることの多いシートベルトカッターのシートベルト切断等についてテストを行い、適切な脱出方法について、情報提供することとしました。

動画【YouTube】

「災害の備え」自動車用緊急脱出ハンマーで窓ガラスを破砕

緊急脱出ハンマーについて

 緊急脱出ハンマーには、本体のグリップ部を金槌のように握って使用するタイプ(金槌タイプ)、グリップ部をピックのように握って使用するタイプ(ピックタイプ)、先端をドアガラス等に押し当てて使用するタイプ(ポンチタイプ)があります。シートベルトカッターがついたものが多いです。

自動車ガラスについて

強化ガラス

 熱処理等によって強度が増したガラスで、破損したときには細かい粒状になるため、鋭利な破片はできにくくなっています。緊急脱出ハンマーで破砕することができます。主にドアガラス、サイドガラス及びリアガラスに用いられます。JISマークの付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に“T”または“TP”の表記があります。

写真1.強化ガラスを示すマークの例
JISマーク右横にTの表記がある

合わせガラス

 2枚以上の板ガラスに柔軟な樹脂を中間膜として接着したもので、ガラスが割れても中間膜によって破片の大部分が飛び散らず、容易に貫通されません。緊急脱出ハンマーで破砕することはできません。いずれの車種でもフロントガラスには必ず用いられますが、ドアガラス、サイドガラス、リアガラスにも用いられている車種もあります。JISマークの付いた自動車用ガラスでは、JISマーク付近に“L”または“LP”の表記があります。

写真2.合わせガラスを示すマークの例
JISマーク右横にLの表記がある

アンケート調査結果

消費者アンケート(5,000人)

緊急脱出ハンマーの認知度や積載率など

  • 緊急脱出ハンマーを知っている人のうち、緊急脱出ハンマーを自動車に積載している人は約2割でした

設置場所

  • トランク等、車内に閉じ込められたときに緊急脱出ハンマーを手に取ることができない場所に積載している人もいました

ガラスの種類

  • 所有する自動車のドアガラスの種類を知らない人が7割いました。また、緊急脱出ハンマーを積載している人の4割が緊急脱出ハンマーで破砕できないガラスがあることを知りませんでした

緊急脱出ハンマーの使用経験

  • 緊急脱出ハンマーを知っている人のうち、緊急脱出ハンマーを実際に使ったことのある人は188人でした。このうち89人が何らかの理由で、ガラスを破砕できませんでした

テスト対象銘柄とした製造または販売事業者11社へのアンケート

緊急脱出ハンマーの性能の確認

  • 3社はJIS D 5716に厳密に従った試験方法で性能を確認していました

緊急脱出ハンマーのJISの認証の取得について

  • 2社はJIS D 5716の認証を取得済みとの回答でした

自動車製造事業者8社へのアンケート

ドアガラス等への合わせガラスの採用車種数について

  • 静粛性のため、約2割の車種のドアガラスが合わせガラスでした

緊急時の脱出手段

  • 冠水路に進入してしまっても落ち着いて行動するように案内されていました

緊急脱出ハンマーの性能の確認

  • JIS規格のほか実車試験等で緊急脱出ハンマーの性能を確認していました

テスト結果

シートベルト切断、ドアガラス破砕

  • 全ての銘柄でシートベルトを切ることと、強化ガラスでできた運転席ドアガラスを破砕することができました

写真3.ドアガラス(強化ガラス)の破砕(一例)
強化ガラスでできた運転席ドアガラスが緊急脱出ハンマーにより割れ細かく砕かれている様子

ガラス破砕突起部の硬さ試験

  • ガラス破砕突起部の硬さは760HV未満の銘柄もありましたが、全ての銘柄でドアガラスの破砕ができました

耐寒性及び耐熱性試験

  • 耐熱性試験では4銘柄で柄の部分に変形や割れが見られました

表示

緊急脱出ハンマー本体や付属ホルダの表示

  • 使用方法に関する本体表示は3銘柄にありました

パッケージや取扱説明書の表示

  • 全ての銘柄で使用方法や設置場所に関する表示がありました

消費者へのアドバイス

  • 急激に水かさが増したり冠水した道路には進入しないようにしましょう注1
  • 自動車が水没してしまっても、まずは落ち着いて「シートベルトを外す」、「ドアを開ける」、「窓を開ける」ことができるかを試みましょう。窓を開けたりドアガラスを破砕したりすることができないときは車内外の水圧差がなくなるまで浸水するのを待ち、ドアを開けて脱出しましょう注2
  • フロントガラスや一部車種のドアガラスに用いられている合わせガラスは緊急脱出ハンマーで破砕することはできません。自分の自動車のどの箇所のガラスが緊急脱出ハンマーで破砕することのできる強化ガラスなのかを予め確認しておきましょう。自分の自動車で使用可能であれば、緊急脱出ハンマーを備え付けましょう
  • 緊急脱出ハンマーはJIS規格等のマークが付いている信頼できる商品を選びましょう
  • シートベルトカッターがついている緊急脱出ハンマーを選ぶか、ついていない場合はシートベルトカッターを別途用意しましょう
  • 運転者がシートベルトに拘束されて身動きが取れなくなっても、手の届くところに安全に固定されるように設置して常備しましょう

事業者・業界への要望

緊急脱出ハンマーの製造または販売事業者

  • 業界団体を設立し、JISの改正に取り組むよう要望します
  • JISマークの取得を要望します

自動車製造事業者

  • ドアガラスに合わせガラスを採用している場合は消費者が認識できるよう、また、緊急時に車内から脱出できるよう取扱説明書等の拡充や脱出手段の周知徹底を要望します

行政への要望

経済産業省 産業技術環境局 国際標準課

  • JISの改正についての推進を要望します
  • JISマーク表示に係る認証についての推進を要望します

国土交通省 自動車局 審査・リコール課

  • 緊急時に車内から脱出できる手段を確保するよう自動車製造事業者に働きかけることを要望します
  • 消費者が自動車の購入前や使用時にガラスの種類を容易に把握して認識できるような対策を取るよう、自動車製造事業者への働きかけを要望します

要望先

  • 国土交通省 自動車局 審査・リコール課(法人番号2000012100001)
  • 経済産業省 産業技術環境局 国際標準課(法人番号4000012090001)
  • 一般社団法人日本自動車工業会(法人番号7010405008746)

情報提供先

  • 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
  • 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
  • 経済産業省 商務情報政策局 産業保安グループ 製品安全課(法人番号4000012090001)
  • 経済産業省 製造産業局 自動車課(法人番号4000012090001)
  • 経済産業省 製造産業局 生活製品課(法人番号4000012090001)
  • 全国自動車用品工業会(法人番号7700150000986)
  • 一般社団法人自動車用品小売業協会(法人番号8010405007887)
  • 一般社団法人日本DIY・ホームセンター協会(法人番号8010005004343)
  • 公益社団法人日本通信販売協会(法人番号9010005018680)
  • アマゾンジャパン合同会社(法人番号3040001028447)
  • ヤフー株式会社(法人番号3010001200818)
  • 楽天株式会社(法人番号9010701020592)

業界の対応 ※2020年10月12日 追加

「一般社団法人日本自動車工業会」より

 当会では、交通事故の発生防止・被害軽減対策を最優先課題のひとつに位置づけ、関係省庁・団体と協力し、製品安全の理解促進に向けて、自動車運転者の安全に配慮した様々な取り組みを行って参りました。

 この度の貴センターのアンケート結果とご要望を受け、会員乗用車メーカー全8社においては、緊急対応時の脱出手順・方法・注意事項についての消費者への周知活動を強化するとともに、販売会社に対しても機会を捉えて消費者にわかりやすく説明することを促進いたします。

 現在、当会ホームページの動画「安全運転講座」においては、トラブル対処の中で『水中脱出の心得』として、緊急対応時の脱出方法・手順・注意事項等の情報提供を行っております。

 更に、当会が発行する冊子「安全すてきなカーライフPASSPORT」(自動車販売店をはじめ高速道路のSAや教習所等へ約115万部配布)の中でも、同様の内容を記載しております。

 今後とも、引き続き消費者へのわかりやすい説明や情報提供を行っていく所存です。


本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165

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