「ホットヨガ」によるめまい、のぼせ、吐き気、頭痛に注意!−レッスン中だけではなく、レッスン後に体調不良となることも−
*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。
近年、健康維持・増進やダイエットなどの様々な理由でフィットネスクラブ、スポーツジム、スタジオなどが利用されており、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、2016年度から2018年度にかけてフィットネスクラブの利用者は増加しています。
国民生活センターでは、全国の20歳代〜70歳代の男女に対して、フィットネスクラブ、スポーツジム、スタジオなどの利用についてインターネットアンケート調査を実施し、主なプログラムごとの経験や、体調不良またはけがの経験の有無などについて質問しました。その結果、ホットヨガは他のプログラムと比べて「体調が悪くなった」、「けがをした」という経験をした人の割合が高い傾向にあることが分かりました。
PIO-NETには、フィットネスクラブ、スポーツジム、スポーツ教室、スタジオなどの運動施設(以下、「フィットネスクラブ等」とします)での危害に関する相談(危害情報)が寄せられています。ヨガ専門のスタジオやフィットネスクラブ等でのホットヨガについても、「体験中や体験後しばらくしてから体調が悪くなった」という危害情報が寄せられており、フィットネスクラブ等の危害情報のうちホットヨガが占める割合が高くなっていました。
そこで、PIO-NETに寄せられたホットヨガの危害情報を分析すると共に、インターネットアンケート調査を行い、ヨガ専門のスタジオやフィットネスクラブ等のプログラムの中で行われているホットヨガを利用する上での注意点について取りまとめ、消費者に注意喚起すると共に、事業者に要望することとしました。
ヨガ、ホットヨガとは
ヨガは、古代インドに発祥した3000年近い歴史を持つ修行法で、現代では心身の健康法として応用されています。ヨガのレッスンでは、座って行うポーズの他、立って行う、そらす、ねじるなどのポーズを取ります。
高温高湿環境下で行うヨガは、「ホットヨガ」と呼ばれています。厚生労働省が運営する「統合医療」情報発信サイトでは、米国の国立補完統合衛生センター(NCCIH)の情報を引用し、「ホットヨガでは、約40度もの高温多湿な環境で立ったり動いたりします。そのような設定では肉体的に大きな負荷がかかることがあるため、ホットヨガを行う人は、安全策を取らなくてはいけません。」などとしています。
PIO-NETより
フィットネスクラブ等を利用して「体調が悪くなった」「けがをした」などの危害情報は、2015年度以降に833件寄せられています。
これらを内容別にみると、ホットヨガに関する相談が占める割合は他の内容よりも高く、165件と全体の約2割を占めていました。
この165件の危害情報の内訳をみると、女性が99%を占め、年代では40歳代が最も多く48件(30%)でした。
危害程度は、「医者にかからず」が81件(64%)で最も多く、危害内容は「その他の傷病及び諸症状」が112件(70%)と最も多く、症状としてめまい、のぼせ、吐き気、頭痛などがみられました。
主な事例
- 【事例1】
- 体験中に気分が悪くなり嘔吐してしまった。
- 【事例2】
- 体験した日の夜に頭が痛くなり、40度の熱が出た。
- 【事例3】
- 体験後に入会したが、レッスンを受けると体調が悪くなり、頭痛もひどい。
- 【事例4】
- 希望していない上位のレッスン中に気分が悪くなったが、途中退出の説明はなく我慢した。終了後に嘔吐。
- 【事例5】
- 体験後、片頭痛の持病があることも伝えて契約したが、翌日片頭痛と嘔吐がひどくなった。
- 【事例6】
- 体験後から数日間、だるさがある。体験前に脱水症状の可能性などの説明はなかった。
ホットヨガのレッスン環境・時間について
ウェブサイトの表示
レッスン中の室温や湿度といった環境や、レッスン時間を調べるため、検索サイト(Google、Yahoo!JAPAN)にて、「ホットヨガ」等の検索ワードで検索して表示され、かつホットヨガを実施している店舗が2店舗以上あったフィットネスクラブ、スポーツジム、スタジオなどの21事業者のウェブサイトの表示を調査しました(調査期間:2020年6月)。
その結果、レッスン中の室温は38℃とうたっているところが最も多くみられ、湿度は65%とうたっているところが最も多くみられました。また、レッスン時間は60分のレッスンが最も多くみられました。
熱中症予防指針とホットヨガのレッスン環境
日本生気象学会による「日常生活における熱中症予防指針」とウェブサイトの表示を比べたところ、最も多くうたわれた室温38℃、湿度65%の条件では「危険」に相当します。
アンケート調査
プログラムごとの経験者数及び体調不良・けがの経験者数
全国の20歳代〜70歳代の男女でフィットネスクラブ、スポーツジム、スタジオなどを利用したことがある約1万人(回答者数9,599人)に対し、主なプログラムごとの経験を質問しました。
- フィットネスクラブ、スポーツジム、スタジオなどを利用したことのある9,599人のうち、ホットヨガを経験していたのは1,603人(17%)でした。このうち、約2割の人は体調不良やけがの経験がありました。
ホットヨガでの体調不良・けがの実態
ホットヨガでの体調不良やけがの実態を調べるために、ホットヨガの経験があり、「体調が悪くなったことがある」、「けがをしたことがある」またはその両方あると回答した人(以下、「ホットヨガでの体調不良・けが経験者」とします)のうち200人に、その時の状況などを質問しました。
レッスンの体制や他のヨガの経験等について
- ホットヨガでの体調不良・けが経験者200人のうち、約7割がヨガ専門のスタジオでホットヨガをしていました。
- 約6割はホットヨガを始める以前に、ホットヨガ以外のヨガを経験していました。また、約6割はホットヨガ以外にも週に1回程度以上の運動をしていました。
レッスン前等の指示や説明について
- レッスン前に毎回体調確認があった、持病の有無や既往歴などを確認されていたのは約3割でした。
体調が悪くなった時、けがの詳細
- 体調が悪くなったことがある175人について、起こった症状は、「めまい、立ちくらみ」、「のぼせ、ほてり」、「吐き気、嘔吐」、「頭痛」などで、約5割の人が「体調が悪くなったことが原因で通うのをやめた」と回答しました。
- 体調が悪くなった時点は、約9割の人が「レッスン中」、「レッスンが終了してすぐ」でした。また、「レッスンを終えて数時間後」や「レッスンを行った日の翌日以降」との回答もありました。
- レッスン中に体調が悪くなった人のうち、約2割の人はレッスンを中断しませんでした。
- けがをしたことがある32人について、けがの内容は「首・腰の痛み」、「関節の痛み、脱臼、捻挫」が最多でした。
消費者へのアドバイス
- ホットヨガのレッスン環境は、日常生活における熱中症予防指針では「危険」に相当します。PIO-NETには、ホットヨガによってめまい、のぼせ、吐き気、頭痛などを訴える相談があります。ホットヨガを行う前にはレッスンの内容や時間を確認しましょう。特に持病や既往歴がある場合には、実施を慎重に検討しましょう。
- インターネットアンケート調査では、週1回以上運動している人でも、めまい、のぼせ、吐き気、頭痛などの症状が出ていました。ホットヨガのレッスン中には意識して水分補給をし、途中で涼しいところで休憩するなど体調に気を付けながら行いましょう。
- PIO-NET等には、レッスンを受けてしばらく経ってから体調が悪くなる事例がみられています。レッスン後も自分の体調に注意しましょう。
事業者への要望
- ホットヨガで体調が悪くなったという事例が寄せられています。持病の有無、既往歴の確認、毎回の体調確認などを行うと共に、参加者が安心して受講できるようにレッスン中も参加者一人一人の体調に常に配慮するなど、より一層の安全対策を要望します。
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
- 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
- 厚生労働省 健康局(法人番号6000012070001)
- 経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課(法人番号4000012090001)
- スポーツ庁 健康スポーツ課(法人番号5000012060003)
- 公益社団法人スポーツ健康産業団体連合会(法人番号5010005018742)
- 一般社団法人日本フィットネス産業協会(法人番号3010005017705)
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
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