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[2019年12月27日:更新]
[2019年12月19日:公表]

除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!−使用部位を確認し、1回分を購入して肌に合うか試してから使いましょう−

*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。

 2014年度以降、PIO-NET(注1)には、除毛剤や脱毛剤(以下、「除毛剤等」とします。)を購入し、使用したところ、赤み、かゆみ、痛み、腫れ等が生じたという危害情報(注2)が738件(2019年10月31日までの登録分)寄せられています。「除毛剤等」に関する危害情報(注3)は、従来から女性の割合が高い状況ですが、特に、男性がヒゲを除去するために使用し、顔などに皮膚障害を負った等の事例が増加傾向にあります(図)。これらの「除毛剤等」の皮膚障害の事例の中には、総額数万円の定期購入契約のため、解約したいという相談内容となっているものが多数みられます。

 また、除毛剤の使用部位についての表示を調べると、商品本体等の表示と、発売元のウェブサイトでの表示とで、異なる記載がなされたものがありました。

 そこで、「除毛剤等」に関する危害情報を分析するとともに、除毛剤の商品の表示等を調べ、消費者トラブルの未然防止・拡大防止のため、消費者に情報提供するとともに、関係機関への要望及び情報提供を行うこととしました。

図.「除毛剤等」に関する危害情報の年度別件数
2014年度から2019年10月31日までの除毛剤等に関する年度別危害情報件数の推移のグラフ。グラフに続いてテキストによる詳細。

 2014年度の危害件数は男性は0件、女性は2件、2015年度の危害件数は男性は1件、女性は4件、2016年度の危害件数は男性は5件、女性は10件、2017年度の危害件数は男性は25件、女性は257件、2018年度の危害件数は男性は44件、女性は72件、2019年度の危害件数は男性は138件、女性は179件です。

  • (注1)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのことです。消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。
  • (注2)PIO-NETにおける危害とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けた相談を指します。
  • (注3)除毛剤や脱毛剤に関する危害情報のことです。本件の公表資料のために事例を特別に精査したところ、脱毛剤に関するものは少なく、除毛剤に関するものが大半を占めていました。

除毛剤とは

 除毛剤・脱毛剤とは、腕の毛、脚の毛やワキ毛などの除去を目的とする商品で、化学的作用によって除去する方法と物理的に毛髪を抜いて除去する方法とがあり、通例、前者は除毛剤、後者は脱毛剤とよばれています。除毛剤は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「医薬品医療機器等法」とします。)上、医薬部外品に分類されており、毛髪を構成する成分であるケラチンタンパク質の結合をチオグリコール酸カルシウムなどの還元剤により切断し、毛髪を軟化して除去します。還元剤の働きを効果的にするため、pHは11〜13程度のアルカリ性の商品が多く、商品としては、クリーム状、ペースト状、泡状のものがあります。いずれも化学的に毛髪や皮膚に作用するため、人によっては炎症を起こすことがあります。(注4)

  • (注4)参考:「化粧品辞典」(丸善株式会社2003年発行)

危害情報の概要

 PIO-NETには、「除毛剤等」に関する危害情報が2014年度以降(2019年10月31日までの登録分)738件寄せられています。そのうち、通信販売での「定期購入」に関する相談件数は548件で約74%で、特に2017年度以降多くの割合を占めています。

 「除毛剤等」に関する危害情報(738件)の内訳(不明、無回答等を除く)をみると、性別ごとの年代別では、男性は208件で20歳代が68件、女性は502件で40歳代が157件で、それぞれ最多となっています。危害内容は「皮膚障害」が約98%を占め、危害程度は「医者にかからず」が約89%を占めています。危害部位では、男性では、「顔面・頭部」が約41%、「脚」が約36%と多く、女性では、「腕・手」が約53%、「脚」が約32%と多くなっています。

主な事例

【事例】
顔に使用したところ、毛穴が赤くなり、かゆみも生じ、医師から薬を処方された。
【事例】
除毛剤を使用して顔がカサカサになった。「首から下」と「全身分」の表示があった。
【事例】
デリケート部分に発疹が出た。デリケート部分へ使用可能との広告があったと思う。
【事例】
脚の皮膚が赤くなり皮膚科を受診し解約したい旨伝えたが、解約できなかった。

調査

 インターネットショッピングモールで「除毛剤」が分類されるカテゴリにおいて、売れ筋ランキングの高い商品のうち、製造販売元や発売元のウェブサイトで定期購入や複数個まとめて購入すると割引特典があるものを考慮したうえで、ウェブサイトでの表示から主に男性用と思われる商品5銘柄、主に女性用と思われる商品5銘柄の10銘柄について、商品本体、パッケージ及び取扱説明書等の表示の調査をしました(調査期間:2019年9月17日〜11月29日)。

  • 10銘柄中、8銘柄はチューブタイプの除毛クリーム、2銘柄はスプレータイプの除毛クリームで、いずれも医薬部外品の有効成分がチオグリコール酸カルシウムのものでした。

使用部位について

  • 「顔」に使用できる銘柄はありませんでした。「デリケート部分」については、使用できるものが4銘柄、使用できないものが4銘柄、記載のないものが2銘柄ありました。
  • 商品本体等の表示と、発売元または製造販売元のウェブサイトでの表示との相違を調べたところ、「デリケート部分」について記載が異なるものが2銘柄ありました。
  • インターネットショッピングモールでの表示を調べると、商品本体等の表示と「デリケート部分」等について記載が異なるものもありました。

使用方法について

  • 塗布後の放置する時間については、銘柄ごとに放置する時間が決まっており、「5〜10分程度」という表示が9銘柄、「10分程度」という表示が1銘柄ありました。使用部位ごとに放置する時間の目安を定めている銘柄はありませんでした。
  • 「使用前テスト」については、10銘柄全てに記載されていました。
  • 使用中や使用後に、腫れ、かゆみ、赤みなどの異常が生じた場合は、使用を中止し、皮膚科専門医等に相談することを勧める旨については、10銘柄全てに記載されていました。

チオグリコール酸カルシウム量及びpHの測定

  • 除毛剤の有効成分の濃度に差があるかどうか調べるため、チオグリコール酸カルシウムの量を調べるとともに、アルカリの強さを調べるため、1%水溶液のpHを測定しました。その結果、チオグリコール酸カルシウム量は10銘柄すべて7.0%以下と、大幅に高濃度の銘柄はみられず、1%水溶液のpHは11〜12と、10銘柄に大きな差はありませんでした。
  • 主に男性用のものと、主に女性用のものを比較しても、大きな差はみられませんでした。

相談事例と調査からみる問題点

  • 顔に皮膚障害を負ったという危害情報が多く寄せられています。
  • 商品本体等と発売元のウェブサイト等とで使用部位の表示が異なっていることがあります。
  • 医療機関で、除毛剤を使用しないよう診断されても解約できない場合があります。

消費者へのアドバイス

  • 医薬部外品は、医薬品医療機器等法に基づき、定められた用法・用量で承認されていますので、商品等に記載された「用法・用量」や「使用上の注意」で使用部位を確認して正しく使用するようにしましょう。
  • 人によっては炎症を起こすことがあるため、まず1回分を購入し、「使用前テスト」で肌に合うか確認したうえで、使用するようにしましょう。
  • 肌に赤み、かゆみ、痛み、腫れなど異常が生じた場合は、ただちに使用を中止して、症状の程度によっては皮膚科医を受診しましょう。

業界・事業者への要望

 除毛剤の危害情報や定期購入について多くの相談が寄せられているため、使用部位を正確に表示するとともに安心な取引ができるよう業界として対応することを要望します。

インターネットショッピングモール運営事業者への協力依頼

 インターネットショッピングモールにおいて、一部の除毛剤の使用部位の表示が、商品本体等の表示と異なっていましたので、出品者の指導及び適切な管理の協力を依頼します。

要望先

  • 日本化粧品工業連合会(法人番号1700150005132)

協力依頼先

  • アマゾンジャパン合同会社(法人番号3040001028447)
  • ヤフー株式会社(法人番号4010401039979)
  • 楽天株式会社(法人番号9010701020592)

情報提供先

  • 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
  • 消費者庁 取引対策課(法人番号5000012010024)
  • 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
  • 厚生労働省 医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課(法人番号6000012070001)
  • 厚生労働省 医薬・生活衛生局 医薬安全対策課(法人番号6000012070001)
  • 厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課(法人番号6000012070001)
  • 公益社団法人日本通信販売協会(法人番号9010005018680)
  • 一般社団法人SSCI-Net(皮膚安全性症例情報ネット)(法人番号8180005016710)
  • 日本チェーンドラッグストア協会(法人番号なし)

関連情報

本公表を受けて、厚生労働省が以下の対応をしております。

業界の対応 ※2019年12月27日 追加

「日本化粧品工業連合会」より

 独立行政法人国民生活センターより令和元年12月19日付「『除毛剤の使用による顔などの皮膚障害に注意!−使用部位を確認し、1回分を購入して肌に合うか試してから使いましょう−』について(要望)」でご連絡いただいた件につきましては、令和元年12月19日付文書「除毛剤の安全性確保への対応について」のとおり対応いたしましたことをご連絡申し上げます。

 なお、内容としましては、日本化粧品工業連合会傘下会員各位へ、厚生労働省の令和元年12月19日付「除毛剤の使用上の注意等について」の通知を順守いただくとともに、承認された用法・用量の範囲内で表示及び広告を行い、また両者の記載に齟齬がないようにするとともに、使用部位あるいは使用してはいけない部位をできるだけ明確に表示すること、また、承認書に注意表示の記載を求められる製品特性を踏まえ、定期購入により製品を販売する際はこの点を考慮した販売方法とする等、消費者の安全に十分ご配慮くださるようお願いする旨のものです。


本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165

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