強力な磁石のマグネットボールで誤飲事故が発生−幼児の消化管に穴があき、開腹手術により摘出−
*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。
2018年1月、「医師からの事故情報受付窓口」(以下、「ドクターメール箱」という。)(注1)と医療機関ネットワーク(注2)に、幼児が複数のマグネットボールを誤飲し、消化管が穿孔(せんこう)(穴があくこと)し開腹手術等したとの事故情報が2件続けて寄せられました。いずれもネオジム磁石をうたう強力な磁力のマグネットボールを複数個誤飲したもので、磁石同士が引き合って消化管内に腸壁を挟んでとどまり、腸壁を穿孔していたものを開腹手術等により摘出したというものでした。
医療機関ネットワークには上記のマグネットボールの事例を含め、子どもが磁石を誤飲した、もしくは誤飲したと思われる事故情報が124件(2010年12月以降2018年3月末日までの伝送分)寄せられています(注3)。また、医学論文等でも数十件の症例が報告されており、国内において磁石の誤飲、特に複数の磁石(または磁石と金属)を誤飲した場合の危険性については、これまでに各所からも注意喚起がされているところですが、その後に今回の2件が発生しました。
そこで、マグネットボールについてテストや調査を行い、マグネットボールをはじめとした複数の磁石を誤飲した際の危険性について、あらためて注意を呼び掛けます。
写真 強力な磁石のマグネットボール
マグネットボール(例)
磁力が強いため手指を挟んでもとどまる
- (注1)消費者が商品・役務の利用等により事故に遭い医療機関を受診した情報を直接医師から得ることで、事故情報を早期に把握し、再発・拡大防止に役立てるため、2014年8月より「医師からの事故情報受付窓口」(愛称:「ドクターメール箱」)を開設している。
- (注2)消費者庁と国民生活センターとの共同事業で、消費生活において生命または身体に被害が生じた事故に遭い、参画医療機関を受診したことによる事故情報を収集するもので、2010年12月から運用を開始した。
- (注3)件数は本件のために事例を精査したもの。
国民生活センターに寄せられた事故事例
2018年1月にドクターメール箱と医療機関ネットワークに寄せられた事故情報2件については、医師及び医療機関の協力のもと、患児の保護者から聞き取りや現物確認などの詳細な調査を行いました。
- 【事例1】
- クリスマスプレゼントとしてインターネットで2種類の磁石商品を購入。マグネットボールを5個誤飲したところを保護者が気づいて受診。レントゲンで消化管内に5個連なっていることを確認し経過観察とした。翌日も磁石は移動しておらず、紹介先の病院で内視鏡検査を実施したが、胃内になく経過観察とした。その翌日もやはり移動がなく手術を実施した。磁石は2個が胃壁から、3個が空腸から壁を穿通(せんつう)していた。摘出し空腸穿孔部を縫合した。
- (事故発生年月 2017年12月 男児 3歳)
- 【事例2】
- 友人の幼児が遊んでいたのを見て患児が欲しがったため4カ月前に買い与えた。その後、患児が磁石を口の中に含んでいることがあったため、保護者は手の届かないところに保管していた。嘔吐(おうと)を繰り返したのでかかりつけ医を受診すると胃腸炎の疑いで薬を処方された。しかし、その翌日も嘔吐が続いたため、紹介状を書いてもらい他院を受診し、レントゲン検査で腸内に異物が見つかった。その後当院で開腹手術を行ったところ、小腸内の3カ所にあった磁石が磁力で引き合い、小腸を結着し、圧迫壊死(えし)を起こして穿通しており、直径3mmの磁石計37個を摘出した。
- (受診年月 2018年1月 女児 1歳9カ月)
販売サイト(32サイト)における表示の調査
多くのマグネットボールがインターネット通販サイトで扱われていることから、事故品と形状が類似していた商品及び、インターネット通信販売の大手ショッピングモールにおける検索で上位に表示されたもの(注4)を参考に、事故品を販売していたサイトを含めた合計32サイトの表示を調査しました。
- (注4)検索日は、2018年3月6日。
- 大半の販売サイトに玩具を連想させる表示がありました
- 32の販売サイト中30サイトには子どもの誤飲等に関する注意表示はありませんでした
テスト結果
表示の調査対象として選んだ販売サイトで販売されていたマグネットボールのうち、事故品と大きさや形状の類似していた7銘柄をテストしました。
- マグネットボールの個々の大きさは、複数個同時に誤飲する可能性もあるほど小さいものでした
- 2個を近付けたとき、マグネットボールは、参考品のフェライト磁石と比較して、距離が遠くても引き寄せられるものでした。また、マグネットボールが大きい場合や、複数個連なった場合は、距離が遠くても引き寄せられるため、誤飲した場合は腸壁を挟んでつながる危険性が高まるものと考えられました
- マグネットボールを引き離すのに必要な力は、参考品のフェライト磁石よりも大きく、また、マグネットボールが大きい場合や複数個連なった場合は引き離すのに必要な力は大きくなるため、誤飲した場合に腸壁を挟んでとどまる危険性が高まるものと考えられました
- 各銘柄の磁束指数はST基準より大きい値でした
- パッケージには製造者名はなく、誤飲などの警告表示も取扱説明書もありませんでした
消費者へのアドバイス
- 特に強力な磁力のマグネットボールの複数個を誤飲すると大変危険です。子どもに与えないようにしましょう
- 万が一誤飲した可能性がある場合には、医師の診断を受けましょう
事業者への要望
- 子どもが強力な磁力をもつマグネットボールを複数個誤飲し、開腹手術により摘出したという重篤な事故が発生しています。子ども向けの玩具として販売しないとともに、対象年齢や警告内容などを販売サイトや商品のパッケージ等に明確に記載するよう要望します
インターネットショッピングモール運営事業者への協力依頼
- 子どもが強力な磁力をもつマグネットボールを複数個誤飲し、開腹手術により摘出したという重篤な事故が発生しています。こうした商品が子ども向けの玩具として販売されないよう、出品者の指導及び適切な管理の協力を要請します
行政への要望
- 子どもが飲み込める大きさで一定以上の磁力をもつ磁石を有して玩具として使用されるおそれのある商品について、消費者に対する事故のリスク等の継続的な周知、及び事故の防止に向けた事業者に対する指導とともに事故情報を収集し、必要に応じてさらなる検討を実施するよう要望します
要望先
- 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
- 経済産業省 製造産業局 生活製品課(法人番号4000012090001)
- 経済産業省 商務情報政策局 産業保安グループ 製品安全課(法人番号4000012090001)
- 公益社団法人日本通信販売協会(法人番号9010005018680)
- 一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会(法人番号8010005004343)
- 日本チェーンストア協会(法人番号5700150005467)
協力依頼先
- アマゾンジャパン合同会社(法人番号3040001028447)
- ヤフー株式会社(法人番号4010401039979)
- 楽天株式会社(法人番号9010701020592)
情報提供先
- 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
- 内閣府 子ども・子育て本部(法人番号2000012010019)
- 文部科学省 初等中等教育局 幼児教育課(法人番号7000012060001)
- 厚生労働省 子ども家庭局 総務課 少子化総合対策室(法人番号6000012070001)
- 厚生労働省 子ども家庭局 母子保健課(法人番号6000012070001)
- 一般社団法人日本玩具協会(法人番号6010605000017)
- 一般社団法人全日本文具協会(法人番号4010505000060)
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
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