美容医療サービスにみる包茎手術の問題点
*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。
PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)(注1)には美容医療サービス(注2)に関する相談が寄せられており、そのなかには施術によって危害(注3)を受けたという相談も寄せられています。2012年6月に国民生活センターでは消費者トラブルの未然防止のために注意喚起を行いましたが、件数は依然として多いままとなっています。
美容医療サービスには女性からの相談が多くみられますが、他方、過去5年度分の契約当事者男性の相談件数2,131件をみると、包茎手術(注4)に関する相談が1,092件と半数以上を占めており、大きな減少はみられません(2016年5月27日までの登録分)。危害事例には手術後の痛みがひどい、機能障害など後遺症が生じたという相談もみられるほか、学術雑誌には、包茎手術を受けた後、縫合不全で尿道欠損し、尿道再建した症例も紹介されています。
さらに高額な自由診療や、即日施術を強く迫られたケースのほか、不要と思われる手術を受けたケースや、保険診療だと思って受けたものもみられます。
また、国民生活センター紛争解決委員会が解決を図り、結果の概要を公表した包茎手術に関する紛争が15件あるほか(2009年4月〜2016年4月末)、東京地方裁判所で消費者契約法による契約の取消しを認めた判決(2009年6月)などがあります。
そこで、包茎手術に関する情報を提供し、消費者に注意をよびかけます。
- (注1)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのこと。
- (注2)PIO-NETに「医療サービス」として分類登録されているもののうち、「美容」に関連する医療サービスで、医療脱毛、脂肪吸引、二重まぶた手術、包茎手術、審美歯科、植毛などに関して相談があったものを美容医療サービスとした。
- (注3)PIO-NETにおける危害とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けた相談を指す。
- (注4)本報告において「包茎手術」とよぶ手術には、包茎手術の際に男性器増大もしくは長茎手術を併せて受けたものを含む。
PIO-NETにみる包茎手術に関する相談概要
- 契約当事者の年代別にみると20歳代が特に多く、包茎手術に関する相談1,092件のうち646件と全体の約6割を占めていました(図)。
- 危害については、痛み、腫れなどが多くみられましたが、施術部分が裂けた、出血が続く、大量に出血した、組織の壊死(えし)という症状のほか、勃起障害や、射精障害などの性機能障害、排尿障害などの機能的な問題を生じているケースもみられました。
- 病院に行く際に心づもりしていた費用額は、5万円超〜10万円以下が最も多く、実際の契約購入金額は50万円超〜100万円以下が最多でした。
図 男性の美容医療サービスに関する契約当事者年代別相談件数(n=2,055※無回答を除く)
10歳代の相談件数は102件でそのうち包茎手術に関する相談は63件、20歳代の相談件数は938件でそのうち包茎手術に関する相談は646件、30歳代の相談件数は545件でそのうち包茎手術に関する相談は240件、 40歳代の相談件数は224件でそのうち包茎手術に関する相談は59件、50歳代の相談件数は99件でそのうち包茎手術に関する相談は14件、60歳代の相談件数は86件でそのうち包茎手術に関する相談は24件、70歳以上の相談件数は61件でそのうち包茎手術に関する相談は18件です。
主な相談事例
- 【事例1】
- 広告では、7万円〜10万円とのことだった。クリニックで10万円くらいの手術を受けたい旨を伝えたところ、安い手術だと汚い仕上がりになると言われ、高い手術方法を勧められ総額約80万円の契約で、即日手術となった。2週間経つが術後の傷口がぱっくり割れてしまい、また、引きつれ感があり、陰茎部分が何も感じなくなってしまった。
- 【事例2】
- ネット広告を見て出向いた。医師とは思えない男性から説明を受け、手術台に上がらされ、医師から手術費用が65万円と言われた。また、「ヒアルロン酸を注射しないと包茎に戻る。15万円のものは一生残る」と言われ、約200万円の契約となった。痛みが引かず、泌尿器科を受診したら、一部が壊死していると言われた。
消費者に対するアンケート調査
- 手術を受けた理由は衛生上の問題を意識した人が多くいましたが、包茎の状態により違いがみられました。
- ネット上にある情報や雑誌の広告をきっかけに受けようと思った人が多くいました。
- 手術を受けた人の約4割が施術後に何らかの不安・不満、不具合を感じていました。
- 即日契約が多く、手術費用が100万円を超えるものもみられました。
国民生活センター紛争解決委員会における包茎手術に関する紛争について
国民生活センター紛争解決委員会が解決を図り、結果の概要を公表した包茎手術に関する紛争は15件あり、これらでは以下の論点があげられました。
- 事実と異なる説明があったために手術を受けたのではないのか
- ホームページの記載や勧誘方法について問題はなかったのか
- 説明を十分に受けた後に、施術を受けたのか
医師からのアドバイス
- 仮性包茎では、多くの場合、清潔にしていれば問題はありません。
- すぐに施術が必要なのは、カントン包茎で狭窄(きょうさく)部が戻らず疼痛(とうつう)や青く変色した場合以外ありません。
- 緊急性のない施術に対し、医療機関を受診したその日に施術を受けるのはやめ、医者の説明、内容、金額に納得できたかを検討しましょう。
- ヒアルロン酸など身体に吸収されるものの注入は、吸収されれば効果もなくなります。吸収されないものでは後遺症をもたらすリスクが高くなり、注入時に血管に入れば塞栓(そくせん)症を起こすことも考えられます。このようなトッピング治療は全く必要のないものです。
問題点
- 即日契約・即日施術の事例が多くみられます。
- 効果や必要性の説明を十分に受けていない施術が追加されていることがあります。
- 施術後に痛みが残る、化膿した、感覚障害が生じるようになったなどの事例がみられます。
- 医療機関ホームページガイドラインによりホームページに掲載すべきでない事項にあたると思われる表現がみられます。
消費者へのアドバイス
- 効果だけでなく、リスクについてもしっかり説明を受け、理解して納得できるまで契約しないようにしましょう。不要な施術は断り、即日施術は慎重に。
- ホームページや広告の情報を鵜呑み(うのみ)にせず、情報を集めましょう。
- トラブルにあった場合は、一人で悩まず、早めに消費生活センター(局番なしの188(いやや))へ。
事業者への要望
- インフォームド・コンセントの充実を要望します。
- 不安を駆り立てて契約を急がせたり、不要な施術の契約をさせたり、必要ない即日施術は慎むよう求めます。
- 広告やホームページへの掲載内容の適正化を要望します。
行政への要望
- 十分なインフォームド・コンセントがなされるよう医療機関への指導を要望します。
- 医療機関ホームページガイドラインの実効性が確保され、適正に情報提供がされるよう、指導を要望します。
要望先
- 厚生労働省 医政局 総務課(法人番号6000012070001)
- 公益社団法人日本美容医療協会(法人番号4010005016755)
- 一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)(法人番号1010005013078)
- 一般社団法人日本美容外科学会(JSAS)(法人番号7010005019920)
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課(法人番号5000012010024)
- 内閣府 消費者委員会事務局(法人番号2000012010019)
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
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