低運賃でも苦情は急増 LCCなどの格安航空に関するトラブル
*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。
従来の航空サービスに対し、機体数や機種の絞り込み、サービスの選択制・有料化を通し、低廉な運賃を前面に打ち出した、いわゆるLCCなどの格安航空(以降総称してLCC)が、本格的な運行を始めて1年が過ぎた。
LCCの運航路線や便数の拡大・増大に合わせるように、全国の消費生活センター等(PIO-NET)には、様々な相談が寄せられ、「消費者トラブルメール箱」にも多くの情報が寄せられている。業界側の準備不足や、消費者への説明不足によると考えられる相談も多い一方、従来の航空サービスとの違いや、新しいシステムに不慣れな、消費者の理解不足が一因とみられる相談も含まれている。
特に、LCCではウェブによる予約・購入が前提となっていることから「表示の分かりにくさ」「システムの動作」「トラブル時の対応」によって生じるトラブルのほか、省力化によるとみられる接客対応に関するトラブルが目立つ。今回は、寄せられた相談事例などから問題点を挙げ、消費者へのアドバイスを行う。
相談の概況
相談件数
航空サービス全体の相談件数が増加している中で、LCCに関する相談件数も、年を追うごとに増加している。
LCCの輸送人員実績が、全体の1割前後にも関わらず、昨年度から今年度にかけての苦情件数では、航空サービスに関する相談のうち約4割が、LCCに関するものとなっている。
契約当事者の年代について
LCCでは、20歳代と40歳代にかけての相談が多くなっており、特に20歳代での構成比の差が大きくなっている。
数値として少ないものの、20歳未満からの相談においても、LCCの利用による相談が多くなっている。
主な相談事例等(「消費者トラブルメール箱」に情報提供された事例を含む)
- (事例1)
- 最終確認画面がないので、搭乗者名や予約条件全般の確認ができなかった
- (事例2)
- 予約画面の初期設定によって、選択を誤りやすい
- (事例3)
- 利用できない組み合わせの便を、候補として提示された
- (事例4)
- 運賃以外に必要な費用もきちんと表示すべき
- (事例5)
- 航空会社事由の時刻変更によるキャンセルで、返金に約款にない条件を付けられた
問題点
ウェブサイトの表示・動作に関する問題点
- 「最終確認画面」が見当たらない
- システムの体制や準備について未成熟な点がみられる
- 広告表示の運賃だけでは利用できない
約款や利用案内に対する、対応全般における問題点
- 会社事情に伴う変更における対応が未熟
事業者への要望
- ウェブサイト上の予約・決済画面については、電子消費者契約法及び関連規則に示されているように、最終確認画面を設置し、消費者が申し込み内容全般を確認できる手順を整えること。
- ウェブサイトにおける表示や動作については、特に予約操作等で不具合が起こらないよう改善し、注意表示等が適切に示されるようにすること。用いられる用語は、分かりやすい表現に置き換え、消費者が誤認しないようにすること。
- 運賃以外に、義務的に必要になる費用(手数料・料金類)については、運賃額に併記または含み込んで示せるような手段を講じること。
- 運送約款は、解釈をめぐってトラブルが起こらないよう、消費者が、契約内容や運送条件を容易に理解できるよう整えること。また、消費者窓口等の体制整備を進めること。
消費者へのアドバイス
LCCに関するトラブルにおいては、従来の航空サービスとの違いによる、消費者側の戸惑いや、新しいシステムへの不慣れなどが一因とみられるものもある。それらを含めて、消費者として事前にトラブルを回避するため、次のようにアドバイスを行う。
予約に先立ち、約款や利用案内について、従来の航空会社との違いを確認する
- LCCは、機内サービスや手荷物預け入れのルールが、各社ごとに千差万別である。航空機の利用経験が多い人でも、初めて利用する事業者の場合、従来の航空会社に抱くイメージの延長線上にはない別モノとして認識し、不明な点について利用案内や約款を確認しておく必要がある。
- 運賃については、季節、曜日、時間帯、イベント等に伴う需給のほか、運行日に対する残席数や予約状況なども含めて、常に変動していることに留意する。
運賃以外に必要な費用を確認する
- 運賃以外に発生する義務的費用(決済手数料、予約手数料、空港施設利用料等)や、預け入れ手荷物料、機内食選択時の費用等を確認し、最終的に支払う費用を検討する。特に手数料類は定額であることが多いため、運賃額が安い場合ほど、実際の支払額との乖離(かいり)が生じることに注意する。
- 予約画面において、種々選択するサービス項目(座席指定等)についても、運賃とは別のオプション料金が課せられるものがあるので、操作中であっても画面に示される費用等の変化に注意する。
- 予約後に機内サービスや預け入れ手荷物などのオプションを別途追加したり、搭乗当日の空港チェックイン時に追加を行うと、予約時点より総じて高額であることから、荷物の個数や重量等も、あらかじめ見込んで計画的に予約購入する。
移動全体の面から、他の交通機関とも比較検討する
- 運賃が安い便は、公共交通機関による空港との往還が困難な発着時間になっていることもある。空港までのアクセス方法、所要時間、費用を含め、他の交通機関(高速バス、鉄道、従来の航空会社)による移動も選択肢に入れ、総合的に判断する。
- LCCは、最小限の機種と機体数、折り返し作業時分で運行しており、天候や機材故障、空港の発着混雑によってダイヤが乱れると、折り返しの便も遅れ、最終的に欠航する便が出るなど、定時性について従来の航空会社に比べて劣る傾向があることを想定に入れる。
時間に余裕を持って空港に向かう
- LCCが使用するターミナルや乗り場は、別棟やバス移動となることも多い上、カウンター業務については、従来の航空会社のような十分な人手では行われず、チェックインや預け入れ手荷物の受付時間についても、機械的かつ厳密であるなどから、十分な時間的余裕を見込むことが大切である。
トラブルが起きたら、消費生活センターへ相談する
- LCCを利用してトラブルになり、航空会社との話し合いが進まないなどの場合、消費生活センター等に相談すること。
情報提供先
- 消費者庁 消費者政策課
- 消費者委員会事務局
- 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課
- 国土交通省 航空局 航空ネットワーク部 航空事業課
本件連絡先 相談情報部
ご相談は、お住まいの自治体の消費生活センター等にお問い合わせください。
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