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[2020年4月6日:更新]
[2020年3月19日:公表]

手動車椅子の破損に注意−使用中にフレームや車輪などが破損する事故が発生−

*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。

 車椅子は、身体の機能障害などによって歩行に困難のある人の「移動」を補助する手段として利用される福祉用具です。車椅子には、手動車椅子と電動機が備わっている電動車椅子があり、手動車椅子の中にも介助者が人力で操作する介助用車椅子、使用者もしくは介助者が人力で操作する自走用車椅子があります。

 特に使用者のみでの手動車椅子の使用時にフレームや車輪などに破損が生じた場合は、とっさに対応することは難しく、転倒やけがを負う危険性が考えられます。

 PIO-NET(注1)には、2014年度以降の約5年10カ月の間に全国の消費生活センター等で受け付けた手動車椅子の破損に関する相談が95件ありました。その中で危害・危険の事例は30件あり、そのうち2件は転倒や壁への衝突によって重傷を負っていました(注2)。

 当センターにも直近3年間で2件、手動車椅子の使用時に起きた破損に関するテスト依頼が消費生活センターから寄せられています。

 そこで、現在販売されている比較的安価な自走用の手動車椅子の強度を調査し、消費者へ情報提供することとしました。

  • (注1)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースのことです。
  • (注2)2014年4月以降相談受け付け、2020年1月末日までの登録分。件数は本公表のために特別に精査したものです。

テスト結果

走行耐久性の調査

 同様の価格帯の商品であっても耐久性に差がありました

写真1.後輪付近のフレームが破断(JISに準じた走行耐久性試験中の破損例)
JISに準じた走行耐久性試験中に左後輪付近のフレームが破断した様子

写真2.スポークが頭付近で折損(JISに準じた走行耐久性試験中の破損例)
JISに準じた走行耐久性試験中に右後輪のスポークが4本破損した様子

写真3.前輪の3箇所が破損(JISに準じた走行耐久性試験中の破損例)
JISに準じた走行耐久性試験中に左前輪が3箇所破損した様子

使用前に実施する点検表示の調査

 全ての銘柄で使用前に点検を実施する旨の表示があり、中には点検項目ごとの表示やイラストを使用したものもありました

定期メンテナンス表示の調査

 全ての銘柄で定期的にメンテナンスを実施する旨の表示があり、消耗品や交換部品を表示したものもありました

消費者へのアドバイス

  • 手動車椅子をお持ちの方は、各部を詳細に点検し、破損や不具合がないか確認しましょう。破損や不具合が見つかった場合は使用を中止し、入手先や製造事業者等へ確認しましょう
  • 手動車椅子を入手する際には、今回のテスト結果を参考にするほか、JISマークやSGマーク等を取得している耐久性のある商品を選ぶとよいでしょう

業界・事業者への要望

  • JISやSG認定等の推進と破損や不具合が起きた場合の対応窓口の設置等、消費者への適切な対応を要望します
  • 消費者が実施できる使用前の点検方法や定期的なメンテナンスの作業方法について、取扱説明書にわかりやすく表示すること、併せて消費者が定期的なメンテナンスを依頼できる店舗や相談できる窓口等の体制整備を要望します

行政への要望

  • 事故の未然防止・再発防止のため、使用前の日常点検や定期的に詳細なメンテナンスを実施することなどについて消費者への注意喚起等を要望します
  • 手動車椅子を製造している事業者に対し、JISやSG認定等の推進について指導等を要望します

動画

動画イメージ写真 車椅子介助での走行中に前輪が破損し、転倒した様子
動画:手動車椅子の破損に注意

業界の意見 ※2020年4月6日 追加

「株式会社 カワムラサイクル」より

 弊社としましては今回のご指摘を真摯に受け止め安全性の向上に努めてまいります。

 KVシリーズはJISに基づいた性能評価を満足した上で製品化しており、また発売後にも定期的に性能確認しておりましたが、今回の試験結果については誠に遺憾に存じます。弊社としましては今回の結果を重く受け止め、改善に向け取り組んでまいります。

 まず走行耐久性試験についてですが、弊社製品KVシリーズは2013年1月から計30,000台以上販売しておりますが、市場でのスポーク破損によるご利用者様の事故は報告されておりません。また、今回実施された商品テストにあります「適切でないスポーク長によるリム変形事例」、「フレームの破損事例」に関しましても弊社で実施した性能評価では発生しておりません。また、市場からの報告も受けておりません。

 今回のテスト結果の一要因にスポークテンションのばらつきが考えられます。走行中スポークには繰り返し応力を生じますが、全体のテンションのバランスが悪いと一部に偏った負荷がかかり破損に繋がります。暫定措置としまして、2月27日出荷分から出荷検査時にスポークテンションの確認を全数実施する暫定対応を開始しております。是正措置として生産ラインのスポークテンションのばらつきを抑える指導ならびに教育を改めて実施し管理の強化に努めてまいります。

 また、貴センターからご指摘を頂いておりますメンテナンス作業方法についても、より充実した取扱説明書にしていくとともに、ホームページや販売店を通じ啓蒙活動をしていく所存です。

 以上により、本件の意見とさせていただきます。何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。


本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165

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