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[2002年10月7日:公表]

自走用手動車いすの安全性を考える

実施の理由

 車いすの生産台数は、平成12年が約30万台、平成13年が約26万台となっている。

 一方、危害情報システムに寄せられた車いすでけがをしたという情報は、車いすから立ち上がったりベッドに移ったりするときなどに「バランスを崩す」という内容が多く、次いで「車いすの不具合」、「坂や段差での事故」であった。そこで、手動車いすの中でも生産台数が多く主流となっている「自走用手動車いす(使用者もしくは介助者の人力で操作)」について、走行耐久性および乗降時や移動時の安全性などに関するテストを行った。



結果・現状

  1. (1)JIS規格に基づいて走行耐久性試験を行ったところ、試験を実施したすべての銘柄(5銘柄)で、フレームや留めビスにき裂や破損が発生した。
  2. (2)駐車ブレーキは、メーカー指定の空気圧では全銘柄に問題がないものの、空気圧が半分に減ると静止力が不十分になり、JIS規格の傾斜角度以下でも動き出す銘柄があった。
  3. (3)アームレスト(ひじ掛け)やレッグサポート(足を支える部分)が固定されているタイプでは、乗降時にこれらが支障となるのに対し、アームレストが跳ね上げられる、あるいはレッグサポートが開閉できるタイプは、乗降時に支障とならないので有効であった。しかし、操作時に指を挟みやすかったり、仕上げや形状が悪いものがあった。
  4. (4)段差の乗り越えや踏切の溝などを通過する場合、前輪のキャスタが段差へ引っ掛かったり溝へ落ち込むなど危険な状況が発生した。
  5. (5)「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」で基本レベルとされている78cm幅の廊下を曲がる場合、足やフットレスト(足を乗せるところ)、ハンドリム(使用者が車いすを操作するときに握る部分)を壁に接触するなど、ほとんどの車いすは曲がることが困難であった。推奨レベルとされている85cm幅の廊下では、ほぼ支障なく曲がることができた。
  6. (6)取扱説明書は複数車種の説明が併記されているため、わかりにくいものが多く、乗降の方法の説明が不十分などの問題点が見られた。


問題点

  1. (1)業界は、耐久性のある商品作りと品質管理に努めることが必要である。
  2. (2)日常的に見られる段差や溝にキャスタが引っ掛かったり落ち込んだりと、車いす使用者に危険な状況が発生した。キャスタの幅や直径を大きくするなど、日常使用が予想される環境下で使用しても危険が減少する商品作りが必要である。
  3. (3)乗降時での転倒・転落事故が多いにもかかわらず、取扱説明書の乗降の方法の記載が不十分であった。乗降の方法や注意点をわかりやすく記載し事故防止に努める必要がある。


今後の予定

 車いすにはJIS規格があってもJISマーク品はない。消費者が安心して車いすを選択できるよう、JIS規格を満足する商品作りとJISマークの制度を整備するよう、業界、行政に要望する。



業界の意見 −たしかな目 2003年1月号より−

「カワムラサイクル」

「カワムラサイクル」より

(1)走行耐久性試験について
 私どもは、今回のテスト結果については車いすの安全性(耐久性)に対する警鐘として謙虚に受け止め、真剣に対処してまいりたいと思います。
 弊社はかねてから安全性を最も重視してまいりました。弊社では、JIS規格に基づいた検査装置および検査方法で同様の試験をすべての製品に実施し、社内試験に合格した製品を公的試験機関にあらためて安全性のテストを依頼しております。今回のテスト結果につきましては極めて残念に思っております。しかしながら、結果は結果として重く受け止め、一層の安全性の向上に努め、しっかりとした製品づくりに励みたいと思います。
 また、今回の対象製品はアルミ製ですが、私どもはアルミ材料に7000番系(超々ジュラルミン)という強い材質を使用しており、使用パイプの直径、肉厚も一定以上の規定を設けております。今後は製品ごとに使用材質や熱処理の方法についても表示する方向で検討したいと思います。
 この度のような試験は製品の品質、安全性の向上および維持に大変有効であると考えます。今後ともこのような安全性試験を定期的に実施していただきたいと思います。
 今回のテストで不合格となった製品に不具合が生じた場合にはお申し出いただけたら弊社の責任範囲で速やかにお取り替えさせていただきます。
 今後はこのテスト結果に鑑みて、より安心してお使いいただける車いすの製造に全社一丸となって努力いたす所存です。
(2)バリの件について
ご指摘のあったバリの問題につきましては、現在出荷中のものはすでに改良を施しております。またこの機会にすべての製品を総点検し、改良すべき点があれば早急に対処したいと思います。
(3)車いすの展示場について
 車いすの展示場作りに積極的に取り組むことは大変有意義なことであると思います。しかし中小企業、零細企業の多い車いす業界では、全国規模の展示場へ製品を無償提供することは困難です。福祉用具の発展のためには、各展示場が良い製品を選別、購入していただきたいと思います。作る側の励みにもなり、産業育成にもつながるのではないかと考えます。

(株)カワムラサイクル 生産・品質管理本部 本部長 内田 桂冶

「日進医療器(株)」

「日進医療器(株)」より

(1)ブレーキ性能について
 このブレーキの構造は、簡易性・利便性・操作性(軽い力で操作できる)等を考慮しています。ご指摘のブレーキの効き具合に関しては取扱説明書にタイヤ空気圧を適正に保つよう再三注意を呼びかける記述をしていますので、傾斜があるところで使用されるお客様は日常点検をしっかりしていただきたいと思います(確実に制動できるブレーキも準備しております)。
(2)側溝および踏切の通行について
 6輪車は室内専用で、小回り性能をよくするために小径キャスタを使用していますので、ご指摘のような使用状況は6輪車では考慮しておりません。)。
(3)走行耐久性について
 弊社でもJIS規格に基づいた走行耐久性試験は行っており、今回の試験品と同構造の介護型手動車いすではJIS規格を満足しておりますが、今回の試験結果で不具合のあった商品について要因分析をし、改良・改善していくつもりです。ただ、お客様の要求が軽量化・用途別専用化の傾向にあり、従来の堅牢な一般車いすを想定したJIS規格そのものが現状の流れにそぐわない部分も出てきております。)。
(4)取扱説明書について
 車いすの基本構造は特殊なものを除いては同じです。お客様の細かいニーズに対応するため、前座高、後座高等により機種が分かれています。このため、大半の機種が1つの取扱説明書で対応できるので、機種別には準備しておりません。ただし、基本構造が特殊なものは専用取扱説明書をつけています。)。

日進医療器(株) 品質保証課 課長 田中 均

商品テスト部の見解

側溝および踏切の通行について
 6輪車には「家屋内専用」という表記があるものの、購入時のカタログでは「屋外での操作性を向上させました」と記載されており、取扱説明書に踏切などの溝を越える時の注意について記載されていたので、屋外での試験も実施しました。

取扱説明書について
 貴社の取扱説明書では、基本タイプだけでなく、6輪車、スポーツタイプ、携帯用など構造の異なる車いすの説明も併記されています。関係ない説明が記載されているとわかりにくいだけでなく、読みまちがう可能性もありますので、個別またはタイプ別の取扱説明書を検討して欲しいと思います。

「松永製作所」

「松永製作所」より

 弊社としまして今回ご指摘いただきました点については、早急に対処させていただきます。

1.走行耐久性試験について
 走行耐久性試験で問題があった個所については対策を講じ、公的試験機関にて試験を行いJIS規格に対応しえるよう改善します。
2.駐車ブレーキについて
 指定の半分のタイヤ空気圧では、ブレーキ力が不十分という結果ですが、弊社の取扱説明書では、空気圧を適正に保つよう記載しております。今後はイラスト等を入れ、わかりやすい説明に改善します。
3.乗降時の安全性について
 利用者の身体状況によりひじ掛け固定式の車いすを望まれる場合もありますので、ひじ掛け固定式の車いすにおける移乗方法について取扱説明書を整備します。
4.移動時の安全性について
 (1)後退時に急停止をすると後方転倒するという件ですが、取扱説明書では全く触れていないために、新規に追加したいと思っています。また利用者に転倒防止金具をお勧めするよう努めたいと思います。
 (2)車いすキャスタと踏切でのレールの進入角度に関する件ですが、直角に進入すると、落ち込む場合があり、角度をつけて進入した場合の方が落ち込むことが少なかったとのことで意外でした。弊社としても調査のうえ、取扱説明書を変更します。また、踏切、側溝の格子状のふたに落ち込まないような、幅の広いキャスタを開発中ですので、利用者のご希望に合わせて選択できるよう販売店と共に対処します。
5.姿勢保持について
 調節可能タイプに関しては、車いすのご利用者に調整いただく部分と販売店にて調整する部分とを取扱説明書にて明記します。
6.取扱説明書について
 弊社としましても、より充実した取扱説明書にしていくとともに、販売店やホームページを通じて取扱説明等もしていく所存です。

(株)松永製作所 卸営業部 取締役卸営業部長 加藤 好己

商品テスト部の見解

移動時の安全性について

踏切での移動について
 斜めに進入した場合、シートに深く腰掛け、バックレストに背中が付くような姿勢ですと、ほとんどの場合落ち込むことなくレールを通過することができました。一方、浅く腰掛けたり、キャスタを見るために身を乗り出したりして重心が前寄りになると、落ち込む場合がありました。斜めに進入すると、キャスタが落ち込む可能性は減りますが、落ち込んでしまった場合は直角に進入した場合よりも深く落ち込んでしまうので危険性が増します。必ずしも使用者の重心が後寄りにあるとは限りませんので、斜めに進入すれば安全であるとはいえません。業界には、溝に落ち込まないキャスタの開発に積極的に取り組んでほしいと思います。

「車いす姿勢保持協会」

「車いす姿勢保持協会」より

(1)走行耐久性について
 車いすには、移動機能のほか、座位保持機能(座位姿勢がとれない方などを支援する機能)や移乗機能(乗降や乗移りのしやすさ)が求められますが、移動機能の基本となる走行耐久性について、テストされた全機種がJIS基準に満たなかったという今回の結果を、重く受け止めております。協会として、当該メーカーの責任者を集め、それぞれ早急に改善策を講じるよう指導いたしました。協会としては、より安全・安心な車いすを供給できるよう、当該メーカーだけではなく、他のメーカーにも周知徹底を図りたいと思います。
(2)取扱説明書について
 具体的な乗降方法など車いすの基本的な使い方や注意点などを、統一した形で会員各メーカーの取扱説明書に掲載することを検討します。このための委員会を協会内に組織し、今年度中に着手します。
(3)車いすの展示場作りについて
 各種車いすの展示場作りについては、業界だけでは難しい部分があります。業界が行う展示は期間を定めて開催される福祉機器展などの展示会に製品を出展するのが一般的です。恒常的な展示場が各地につくられるためには、行政の指導が不可欠です。行政の予算を重点的に展示場作りに配分していただき、当該製品を購入・展示するという形を取っていただくことを働きかけたいと思います。

車いす姿勢保持協会 会長 光野 有次


※今回、意見を掲載する際、誌面の都合上、一部を割愛、あるいは、同様の趣旨の意見については、まとめさせていただきました。




本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165

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