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[2019年4月17日:更新]
[2013年11月7日:公表]

自動車用緊急脱出ハンマーのガラス破砕性能

*詳細な内容につきましては、本ページの最後にある「報告書本文[PDF形式]」をご覧ください。

目的

 自動車用緊急脱出ハンマーは交通事故や水没事故などで車内に閉じ込められたときに、ウインドーガラスを割って車外に緊急脱出するために使用する商品です。カーショップ、カーディーラー、ホームセンター、インターネット通信販売などで入手できます。

 これまで、国民生活センターでは、本体のグリップ部を金づちのように握って使用するタイプ(本報告書では以下、「金づちタイプ」という。)の自動車用緊急脱出ハンマーについて、商品テストを実施して注意喚起を行ってきました。その後も市場調査を継続したところ、金づちタイプのほかにも、グリップ部をピックのように握って使用するタイプ(同、「ピックタイプ」という。)、ヘッド部をウインドーガラスに押し当てて使用するタイプ(同、「ポンチタイプ」という。)が販売されていることがわかりました。

 現在のところ、PIO-NETには自動車用緊急脱出ハンマーに関する事故事例は寄せられていませんが、自動車用緊急脱出ハンマーは交通事故や水没事故などの緊急時に車外に脱出するのに有効な商品であるため、現在入手可能な商品について、これまで商品テストを実施してきた金づちタイプのもの以外も含めて幅広く商品を入手(15社19銘柄)し、商品の使用目的として最も重要なウインドーガラス破砕性能に着眼したテストを行い、消費者に情報提供することとしました。

主なテスト結果等

アンケート調査結果

 自動車用緊急脱出ハンマーに関する国内での規格・基準作りの必要性について、製造または販売者13社中8社(約61.5%)と自動車メーカー8社中4社(50.0%)から、何らかの規格・基準作りが必要という趣旨の回答がありました。

基本性能

  1. ウインドーガラスを破砕できないものが5銘柄ありました。
  2. ヘッド先端部の硬さ(HV)は銘柄間で大きな差があり、259〜1,148でした。硬さが400以下の4銘柄と、硬さのバラツキが最も大きい1銘柄では、ウインドーガラスを破砕できませんでした。

車内に長期間保管時の本体の耐久性テスト

 本体に変形や破損などの不具合を生じたものが3銘柄ありました。

ハンマー固定用の専用ホルダーなどの付属品について

 ハンマー固定用の専用ホルダーなどが付属していないものが6銘柄ありました。

フロントガラス(合わせガラス)は破砕できない旨の表示などについて

 フロントガラスは破砕できない旨の表示がないものが7銘柄、表示に不適切な記載があるものが3銘柄ありました。

消費者へのアドバイス

  1. 市販品の中にはウインドーガラスを破砕できなかったものがありました。今回のテスト結果などを参考にして、確実に破砕できるものを購入しておきましょう。
  2. 運転手の手が確実に届くわかりやすい場所に設置しましょう。
  3. 取扱説明書を事前によく読んで使用方法などを理解しておきましょう。
  4. 車外に脱出する際はウインドーガラスの隅を破砕しましょう。

業界・事業者への要望

  1. GSマーク認証試験に準じたテストでウインドーガラスを破砕できなかった商品や、本体に不具合を生じた商品については、当該事業者において検証し、国土交通省に報告を行うとともに、自主回収などを行うことを要望します。
  2. ハンマー固定用の専用ホルダーなどを付属することを要望します。
  3. フロントガラス(合わせガラス)は破砕できず、車外には脱出できない旨の表示を記載するとともに、表示に不適切な記載があるものは是正を要望します。
  4. 自動車用緊急脱出ハンマーに関する業界自主基準作りを要望します。

行政への要望

 自動車用緊急脱出ハンマーを消費者が安心して購入できるよう、自動車用緊急脱出ハンマーに関する情報を周知するとともに、業界の自主基準作りに必要な協力を行うことを要望します。

要望先

  • 国土交通省 自動車局 審査・リコール課

情報提供先

  • 消費者庁 消費者安全課
  • 消費者委員会事務局
  • 一般社団法人日本自動車工業会
  • 一般社団法人自動車用品小売業協会
  • 一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会
  • テュフ ラインランド ジャパン株式会社

動画

関連情報

業界の意見 ※2013年12月2日 追加

「大橋産業株式会社」

「大橋産業株式会社」より

 当社製品の不具合をご指摘頂きありがとうございます。結果を真摯に受け止め、お客様に安全・安心な商品を今後も提供していく所存です。

 今回のテストについてですが、国内規格が無いということでGS規格で評価されたようですが、GS規格準拠をうたっていない商品について、それを根拠に問題がある商品だと発表されたことを遺憾に思っております。

 当社のブレイクハンマーは社内基準でテストをして性能を十分に満たしていることを確認し、販売しているもので2003年の初回出荷より累計13万台強出荷しており、今回のような不具合報告は一切受けておりません。

 −20℃から常温環境下に出して即試験、90℃から常温環境下に出して即試験と云うのは耐久性とは何ら関係無い熱衝撃試験(急激な温度変化への対応)の範疇に入るものであり、自然界では、このような現象(試験のような急激な温度変化)は起こりえないものです。この試験を持って、何年間の耐久性があると言えるのでしょうか?また何年間の耐久性があれば合格と云うのでしょうか?現時点では、その規格は無いはずです。

 また、No.622エマージェンシーギアについてですが、本製品は緊急時のガラス破砕機能に加えて、普段はアクセサリーソケットに接続しライトやUSB接続口から携帯電話、スマートフォン等の充電が出来ると云う商品です。アクセサリーソケットに接続する商品ですから固定ホルダーを付属していないわけです。

 製品の仕様を何ら考慮せず、他の固定ホルダーの無い商品と同列に扱われたことには非常に憤りを感じております。

「大橋産業株式会社」への商品テスト部の見解

 自動車用緊急脱出ハンマーは交通事故や水没事故などの緊急時に車外に脱出するのに有効な商品ですが、ご指摘の通り、現在のところ国内には規格・基準はありません。そこで、ドイツのGSマーク認証試験に準じたテストを実施いたしました。その結果、市販品の中には、熟練した技術者であってもウインドーガラスを3回以内で破砕できるものとできないものがありました。本体の耐久性テストでは不具合が生じるものと生じないものがあることがわかりました。なお、耐久性テストはご指摘のような急激な温度変化ではなく、低温、高温で各々十分に馴染ませた状況でのテストです。

 自動車用緊急脱出ハンマーは、実際に使用するときに性能が発揮されないと生命にかかわる重要な商品です。あわせて、消費者が事前に自動車用緊急脱出ハンマーとしての性能を確認することが難しい商品でもあります。業界・事業者への要望にも記述しましたように、消費者が安心して購入できるよう、業界自主基準作りが早急に実現されることを望んでおります。

 また、No.622エマージェンシーギアについてですが、「充電する際は、車のエンジンキーを“ACC”の位置まで回してから本製品をアクセサリーソケットに差し込む」「USB端子を使用する際は、本製品をアクセサリーソケットに接続する」という趣旨の使用時に関する表示は見られましたが、車内保管時の明確な固定場所や方法に関する表示はありませんでした。加えて、使用上の注意事項として、「エンジンキーを抜いた状態でも、アクセサリーソケットに電源が供給されている車種があります。この場合、使用しないときは本製品をアクセサリーソケットから抜いてください。」との表示もありました。

 以上のことより、本商品の固定場所が常にアクセサリーソケットであるとは認識できませんでした。

「日本カーリット株式会社」より

  1. 弊社製品「ハイフレヤープラス+ピック」の「使用方法」には「側面のガラスに強くたたきつけてガラスを割って下さい」と記載し、側面のガラスに対して御使用いただくようご説明しておりましたが、「取り扱い注意」において、「フロントガラス、一部のリヤガラス、フィルムを貼ったガラスは割れない事があります」と記載し消費者にフロントガラスは割れると誤解を招くような表現で配慮が足りなかったと認識しております。
  2. 報告書本文P20資料1「自動車用緊急脱出ハンマーに関する専門家の見解」の中で「シートベルトカッターが付いているハンマーが良い」となっております。弊社製品は、カッターは一体化はされておりませんがガラス破壊具付き発炎筒とセット(単品もあり)でシートベルトカッターを販売しております(取扱いのない自動車メーカーもあります)。

業界の対応 ※2013年12月2日 追加

「大橋産業株式会社」より

 「業界の意見」に示した理由により弊社には何ら落ち度は無いと考えておりますが、こういう形で発表されてしまったため、対応せざるを得ない状況になっております。

 顧客の要望も考慮し、下記の方向性をもって対応します。

  1. 店頭在庫・流通在庫は回収した上で、当社ホームページ及び店頭告知にて自主回収の旨を伝えます。
  2. 販売済の商品につきましては、お客様の要望があれば、返金・交換致します。
  3. No.622エマージェンシーギアにつきましては何ら問題無い商品であることを啓蒙していきます。

「株式会社大創産業」より

 生命に危険を及ぼす商品ですので、万が一の事も考えまして自主回収を実施することに致しました。

 11月7日販売を中止すると共に、回収のため当社ホームページで告知をしています。また、全店舗の店頭等に回収のための掲示をして対応を致しております。

「コーナン商事株式会社」より

  1. 平成25年11月6日国土交通省へ自主改善の実施の報告と平成25年11月7日より自主回収を実施しました。また弊社ホームページ及び販売店舗の店頭告知、製品回収を行い返金致します。
  2. 今後は自動車用緊急脱出ハンマーを輸入販売する場合には、固定用の専用ホルダーを付属した製品を輸入する事とします。
  3. フロントガラス(合わせガラス)は破砕できず、車外には脱出できない旨の表示はしておりましたが、今後も適正に表示いたします。
  4. 当社は自動車関連の業界団体に入会しておりません。しかし今後業界の情報収集ならびに、製品の安全確保に努めます。

「日本カーリット株式会社」より

  1. ご指摘の表示箇所を「フロントガラス(合わせガラス)は、割れません」に変更します。
  2. 表示変更のお知らせを平成25年11月14日までに弊社ホームページに掲載します。
  3. 弊社販売先に対し表示内容変更の了承を頂いた後、変更を行います。
  4. 表示内容を変更した製品の販売は準備出来次第順次行います。

本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165

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