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[1997年12月5日:公表]

「キャンドルタイプの耳ケア用品」で事故多発

苦情処理テストから No.4

 「輸入の耳ケア用品を使ったら1週間後に異常なかゆみが生じて耳の中から異物が出た」「説明書通り使ったら耳が聞こえにくくなった」「耳の中にろうが流れてしまい、鼓膜が破れてしまった」等と消費者からの苦情をもとにキャンドルタイプの耳ケア用品について、各地の消費生活センターからテストの依頼が寄せられた。

 キャンドルタイプの耳ケア用品は、「温熱効果とベンチュリ−効果(圧力差による吸引効果)を利用するというもので、ろうをしみ込ませた筒状の布の一方を耳に少し差し込み、反対側に火を付ける。3分の2程燃えたら火を消す(燃焼時には炎の遮断リングを筒の中間に入れて使用する)」。この燃焼時の過程や使用後(燃焼後)に使用者は爽快感を得たり耳の掃除ができる等とうたっているものであり、最近では、一部マスコミでも取り上げられ話題になっている商品である。

 テストを実施した結果、これらの耳ケア用品を使用した場合には、耳の中に燃えかすなどの異物が入りやすいことから事故が起こりやすいことがうかがわれ、安全性に問題のある商品と考えられる。

 また、国民生活センタ−の危害情報システムにも47件ほどの危害情報が寄せられている。

 主なものは、「耳が聞こえない」あるいは「聞こえにくい」「中耳炎や外耳炎などになった」「異物が耳のなかに入り込んだ」等、今回の苦情処理テストで受けた内容とほぼ似た内容のものであった。

 このように、キャンドルタイプの耳ケア用品による同種被害が多発していることから、今回実施した5件のテスト結果や危害情報等をまとめ、さらに専門家の意見も加えながら消費者に広く情報提供をし、被害の拡大防止に努めることとした。

事例

 今回テストの依頼があった事例は以下の5件であり、5件ともテストを実施した。

【事例1】
 輸入のイヤケア用品を26歳女性が使用したところ、使用して1週間後から異常なかゆみが生じ、ぽろぽろとした異物が出てきて医者に通院している。
(1997年 8月 東京都)
【事例2】
 38歳の男性が折り込み広告をみて耳の掃除効果をうたったキャンドルを購入し、夫婦で説明書通り使用したところ耳が聞こえにくくなった。医者にかかったところ、ろうが鼓膜まで流れ込んでいるといわれた。
(1997年 8月 大分県)
【事例3】
 28歳の女性が外国製のイヤケア用品を購入し、1回使用しただけで耳にかゆみが生じ聞こえにくくなった。医者にかかったところ、外耳道から鼓膜にかけてろう様の異物が付着しているといわれた。
(1997年 9月 石川県)
【事例4】
 28歳の女性が耳の掃除効果があるとうたった筒状の商品に火を付けて使用した。着火した後で耳の中にろうが流れてしまい、鼓膜が破れてしまった。
(1997年 9月 茨城県)
【事例5】
 インタ−ネットの通販で購入した耳垢がとれるという商品を27歳女性が9月に使用した。10月になり耳から液体が出てきたので医者にかかったところ、両急性中耳炎と診断され、鼓膜の表面にろう状物質と思われるものが認められた。
(1997年10月 愛知県)

テスト結果

テスト銘柄

テストは、苦情品に同種品を含めた以下の6銘柄である。

表1.テスト銘柄一覧
(銘柄名、製造国は包装箱等記載の表示による)
銘柄名製造国
ミミキャン(OTO ASPIR)イタリア
オトサン(OTOSAN)イタリア
ミミクリ−ン(耳爽 EARSON)不明
オッタマゲ−ション(OTTAMAGATION)台湾
MIMI・キャン(MIMI・キャン)米国
フリ−&クリ−ン(FREE&CLEAN)*イタリア

*:燃焼テストのみ行ったもの

テスト結果

テストは、燃焼テストを中心に実施し、そのテスト項目や結果等を以下に述べる。

燃焼テスト

耳ケア用品をその中央部分で固定して単独で燃焼させ、その状態を観察すると、着火1分後に筒の末端部(耳側)からクリ−ム色の煙が出た。その後1分程度で筒の末端部は耳ケア用品からの燃焼残留物(ろう成分)で塞がれ煙は途絶えた。

その際一部の検体にろう状の物質が筒の内部より滴下したものも見られた(このような場合は火傷の原因ともなりえる)。着火後は3〜4分ぐらいで筒の約3分の2の部分まで燃えることがわかった。

頭部モデルを用いた燃焼テスト

次に、人間の耳内部を模した頭部人体模型(医学実習用模型)を使用し、燃焼テストを行った。

その結果、いずれの検体も耳ケア用品の筒の先端部に着火後30秒から1分程度で耳と筒が当たる付近からクリ−ム色の煙が大量に噴出しはじめ約30秒以上続いた。耳ケア用品の3分の2が燃えるのに、一部の検体を除きほぼ4分程度を要した(この時間は前述の単独での燃焼テストの燃焼時間とほぼ同じである)。

燃焼テスト後に燃焼テスト前との頭部モデルの重量差を測定し、鼓膜などへの耳ケア用品からの付着物の重量を調べた。その結果、約50mgであった。この耳ケア用品の燃焼による付着物は、外耳の棚部で最も多く、形状は直径約2mmの固形状となっていた。また、鼓膜部分にも薄くではあるが同じ付着物が付いているのが確認された(鼓膜に付着した重量は0.3〜0.5mgであった)。

また、燃焼終了後の筒内の付着残留物を観察したところ、カラメル状のろう成分の塊があり、その色や形状は耳垢に類似していた。

付着物の成分分析

鼓膜に付いた耳ケア用品からの付着物の成分分析を赤外分光光度計で行った。その結果、全検体とも主成分は耳ケア用品に含まれるろう成分と同様の固形炭化水素であった。なお、検体によってはアルコ−ルやエステルが含まれているものもあった。

燃焼により発生するガス

この耳ケア用品は、使用時には鼻や目などの近くで燃焼させる。そのために燃焼中に発生する有害物質を吸い込む恐れがあることから、ホルムアルデヒドについて濃度を調べた。測定の結果、燃焼時にクリーム色の煙が出ている状態での耳元付近のホルムアルデヒドの濃度は、瞬間的には10ppm以上になるものがあった。

火傷の可能性

今回のキャンドルタイプの耳ケア用品は耳に差し込み使用するので火傷の発生も考えられることから、着火してから通常使用する燃焼範囲である筒の3分の2の位置まで燃焼している最中の温度を測定した。その結果、20℃の室内で測定したが耳内部や耳の縁での温度上昇は認められなかった。しかし、燃焼を3分の2の位置で止めるのではなく、放置した場合(消さない場合)には、熱遮断リングまで燃焼が進むとそこで消える場合が多かったが、一度鎮火した火が再びリングの下側から発火したり、火がリングに移るものもあった。なお、燃焼中にろう成分が滴下したものがあった。このものは、検体数が少ないために温度測定はしていないがろう成分が滴下した時点では熱で融けている状態にあるので皮膚にあたると火傷の原因になると考えられる。

保持状態による影響

通常このタイプの耳ケア用品を使用する場合、自分一人で自分の耳に当てて使うことは困難であると考えられる。必ずパ−トナ−が使用者の耳付近でこの商品が動かないように押さえることが必要になる。

ところが、子供など動きやすい状態での使用では耳ケア用品も同時に振れたりするということを考慮して、燃焼中にキャンドルの筒根元部分を強く圧迫したり振動を与えることを1分ごとに計3回ほど繰り返して、その時のろう成分の落下状態を調べたところ、振ることにより、耳の外耳道や棚部に落下しやすくなることが分かった。

テスト結果等のまとめ

 今回テストしたタイプの耳ケア用品は、モデル実験ではあるが燃焼によって煙中に含まれるろう成分が耳の鼓膜にまで付着することが認められた。また、一部の検体ではあるが融解したろうが直接滴下するものも認められた。これらの残留物は、やや湿り気をおびた粉末状の物質となり、耳内の皮膚に付着したり、小さい塊となって外耳道に残されることになる。特に鼓膜などに付着した場合には、一般の使用者はこれを自分で取り去ることは困難であり、非常に危険である。

 自分一人で使用することは困難であり、また特に、小さな子供などに対して使う場合には、より動きやすく不安定になることも考えられる。その結果、耳の中に付着するろう成分は多くなるため、より危険になりやすいことが予想される。

 また、燃焼ガスからホルムアルデヒドが検出されていることについて、燃焼時間が1本当たり4分程度と短時間なので身体への影響は少ないと考えられるものの、使用時には部屋の換気を心掛けた方がよい。

 なお、取扱説明書は日本語で書かれたものが無かったり、あっても分かりやすい図がない等から、安全に使用することは徹底されにくいものと考えられる。

 以上のようなことから、今回テストした耳ケア用品は、通常に使用しても、燃焼に伴いろう成分が煙と同時に耳内部に入ったり、直接ろう成分が耳内部に流れ込み鼓膜などに付着する可能性が考えられる。このようなことから、安全性を考えた場合、現状では問題の多い商品と考えられる。

 次に、このような使い方をする耳ケア用品について専門家の意見を聞いた。

 過去、平成4年以来この商品についての症例を集め、その結果を「日本耳鼻咽喉科学会」等で発表するなど継続的に研究されている医療法人大島耳鼻咽喉科理事長の大島一郎氏によれば、「大阪府下の耳鼻咽喉科の医師に実施したアンケ−ト結果では、耳ケア用品によるものが約450症例もある。ろうによる外耳道のアレルギ−反応や付着したろうが異物となり鼓膜や外耳に付着することが原因となって人によっては聞こえが悪くなったり、痛みやかゆみを伴う炎症の外耳道炎や鼓膜炎を引き起こす。また、ろうが融けて液体状になって直接耳内に入って、鼓膜のやけどや穿孔を起こして難聴になった例もある」とのことであった。

コメント

現在の商品状況では使用を控えたほうがよい

 テスト結果などから、今回取り上げたようなキャンドルタイプの耳ケア用品は、直接に本体を耳に差し込んだ状態で燃焼させ、その燃焼に伴って煙とともにろう成分が耳内に入ることになるために、耳の内部にろう成分が付着する。そのために、人によっては外耳道炎や鼓膜炎を引き起こす可能性がある。今回は6銘柄でのテストであったが何れも基本的な構造は同じであり、その結果も殆ど同じであった。

 このような構造(耳に差し込み燃焼煙が直接耳内部に入るもの)のキャンドルタイプの耳ケア用品はこの6銘柄に限らず耳内部でろう等の燃焼物が入ったり付着する事が考えられるために、危害事故が生じやすいと考えられる。加えて今回のように取扱説明書やその内容が不十分な状態にあっては、消費者は安全に使いにくいことが考えられる。従って、現在のような商品状況ではキャンドルタイプの耳ケア用品は使用を控えたほうがよい。

行政から消費者や関係業者に適切な指導を

 テスト結果や、多くの危害情報の内容から、今後もこのキャンドルタイプの耳ケア用品による危害が発生する可能性が考えられる。ところが最近、一部のマスコミにもこのキャンドルタイプの耳ケア用品が取り上げられており、その結果、より消費者の興味も高まり、多くの消費者に使われる事が予想されるので、関係行政機関から消費者や関係業者(輸入・販売業者等)等関係者それぞれに対し、消費者被害の未然防止、拡大防止の観点から適切な対応・指導をすることを望みたい。

関係業者は安全の観点から早急な対応を

 関係業者は、この種のキャンドルタイプの用品は燃焼した状態で人間の耳に挿入して使うことを考えれば、安全性の観点から十分に検討して事故のないように研究検討することが大切である。

 ところが、モデル実験ではあるものの、今回のテスト結果や専門家の意見、危害情報の内容から、今後も耳への危害の発生が考えられるだけでなく、慣れない人が顔の近くで火を使用する構造であるので、顔などにも火傷などの危険が伴うと考えられる。また、取扱説明書が、外国語で書かれていたり、取扱説明書がない状態ではとても一般消費者等が安全に使えるとは言い切れない。これらのため、安全の観点から早急な対応を要望する。


本件連絡先 商品テスト部
電話 0427-58-3165