[本文へ] 消費生活・消費者問題に関する事例や対処方法を紹介しています。

現在の位置 : トップページ > 注目情報 > 発表情報 > 小児の頭部外傷の実態とその予防対策

[1997年9月24日:公表]

小児の頭部外傷の実態とその予防対策

事故解析報告書(危害情報システムから)要約

 国民生活センター「危害情報システム」は、全国20の協力病院から商品等に関連して発生したと思われる受診情報(以下、病院情報)を収集しているが、病院情報で最も多いのは小児の事故である。この報告書は、さまざまな小児の事故の中から、生命への危険や重篤な後遺症の恐れがある「小児の頭部外傷事故」に関する病院情報を協力病院の小児科医グループが分析し、事故の実態と専門家としての予防対策をまとめたものである。

※「小児」の明確な定義はないが、ここではWHOの統計資料にならって、20歳未満を「小児」とした。


小児の頭部外傷に関する統計的検討

1992年8月〜96年7月までの4年間の病院情報のうち、小児の頭部外傷事故3,931件を分析した。
検討結果は以下のとおり。

被害者の傾向

1. 年齢階層別

5歳ごとの年齢階層別でみると、0〜4歳が58.4% と過半数を超えていた。
内訳は、0歳10.0% 、1歳17.1% 、2歳13.7% 、3歳10.2% 、4歳9.0%で1歳が最も多い。以降、5〜9歳24.8% 、10〜14歳10.5% 、15歳〜19歳6.3%と年齢が大きくなるにしたがって発生数は少なくなった。

2.性別

男62.7% 、女37.3% で、男女比は女1.00に対し男1.68であった。これを年齢階層別にみると、0〜4歳が1.46(0〜5ヵ月は1.05で男女差はほとんどないが、6〜11ヵ月は1.15、12〜17ヵ月は1.24、18〜23ヵ月は1.43と徐々に男が女に比べて多くなる)、5〜9歳では2.02、10〜14歳が 2.34と最大値を示し、15〜19歳では1.79と再び減少していた。つまり小学校高学年から中学校にかけて最も男女差が顕著になる。

表  頭部外傷年齢別性別件数
年齢(歳) 0〜4 (0〜4歳の内訳) 5〜9 10〜14 15〜19
0 1 2 3 4
件数(合計) 2296 394 670 540 401 291 976 411 248
(男) 1364 208 383 334 251 188 653 288 159
(女) 932 186 287 206 150 103 323 123 89

事故発生時期

1. 事故発生月

 3月頃から増加し始め、6月をピークとして夏場に多く、9月以降なだらかに減少した。年齢階層、事故発生場所との関連でみると、0〜5ヵ月児の事故、15〜19歳の事故、屋内事故は季節差が小さい。

2. 事故発生曜日

 土曜日と日曜日に事故が多い。男女により大きな差はない。年齢階層別にみると9歳までは土曜日と日曜日に多く、10〜14歳は月曜日、15〜19歳は日曜日に多い。

3. 事故発生時刻

 朝と夜に少なく午後2時から6時をピークとする山を形成し、1歳前後の乳幼児は午後0時にもピークがあった。子どもが活動している時間帯か、乳幼児では母親が家事に追われている時間帯に件数が多かった。

事故発生場所

  1. 0〜9歳では家庭内が、10〜14歳では学校が、15〜19歳では道路が最も多かった。年齢が進み活動範囲が広がるとともに、事故発生場所も変化する。
  2. 発生場所を屋内と屋外とに分けると、男は女に比べて屋外での事故割合が高い。また、年齢があがるにつれて屋外事故の割合が高くなる。
  3. 家庭内での事故は居間に最も多いが、15〜19歳では階段の方が多い。ベランダでの事故は0〜4歳に多く、10歳以後ではみられない。

事故のきっかけ

「転落がきっかけで」41.6% 、「転倒がきっかけで」34.0% 、「ぶつかったのがきっかけで」22.2%で、この三つで97.8%を占めた。年齢の小さい子どもは転落が、年齢が大きくなるに従って転倒が多くなる。

危害内容

「擦過傷、挫傷、打撲傷」が86.2%と最も多いが、骨折(1.3%)、頭蓋内損傷(0.9%)もある。

危害の程度

 死亡1名のほかは、重症0.6%、中等症4.0%で、残りは軽症である。また、通院が必要な事故は43.2%、入院が必要な事故は3.0%である。入院が必要な事故の割合は、年齢階層では0〜5ヵ月と15〜19歳に、事故発生場所では店舗等、学校・保育所・幼稚園での事故に、また家庭内の事故ではベランダでの事故に、各々高かった。また、屋内の事故に比べ屋外の事故は要入院、要通院が多い。

事故の原因となった商品・設備

  1. 最も多いのは階段586件で、以下、自転車351件、椅子194件、床164件、風呂場160件と続く。
  2. 原因となった上位7品目では男女差はなかったが、上位25位までみると男はスポーツに関連した事故が多く、品目数も多かった。
  3. 年齢階層別にみると0〜5ヵ月ではベッド・ベビーベッドが、6か月〜4歳は階段が、5歳からは自転車が第1位である。2位以下をみると、5〜9歳はブランコ、鉄棒、滑り台、ジャングルジムなどの遊具が上位をしめ、15歳以上ではスポーツに関連した事故が多くなる。
  4. 症状の重い中等症、重症になる割合が高いのは、ベビーベッドや窓からの転落であった。
  5. 入院を必要としたのは、年齢の小さい子どもでは階段、歩行器、窓、ベランダなどからの転落、年長児ではジャングルジム、橋の上からの転落や自転車の転倒、オートバイからの転落などであった。


死亡及び重症事故事例

死亡例

[事例]5歳 男:

納屋の階段(約4段位)から転落した様子で泣いているのを母が発見した。硬膜下血腫と言われて脳外科に入院したが7日後に死亡した。

重症例

[事例1]6ヵ月 男 :

部屋の中で歩行器で遊んでいたところ、母親が外にいるのに気付き、少し開いていた戸の間から部屋の外に出ようとしてコンクリートの上に転落した。

[事例2]10ヵ月 男:

椅子の上から転落して外傷性クモ膜下出血を起こした。

[事例3]10ヵ月 女:

自宅でテレビが倒れてきてその下じきとなり、頭蓋骨陥没骨折、頭蓋底骨折、脳挫傷を起こした。

[事例4]10ヵ月 女:

歩行器ごと約40センチの高さから転落し、下のコンクリートに前額部をぶつけた。

[事例5]12ヵ月 女:

自転車の前に乗せていて、自転車ごとコンクリート上に転落した。

[事例6]18ヵ月 男:

二階の窓から転落した。

[事例7]18ヵ月 女:

食事中に竹の割り箸をもって遊んでいたところ転倒し、右眼から箸が頭蓋内へ刺さり、頭蓋底骨折、脳内出血を起こした。

[事例8]23ヵ月 男:

自宅の階段の10段位から転落した。床はコンクリートで、すぐ泣いたが嘔吐したため入院した。

[事例9]2歳 女:

2階のベランダから転落して、右側頭部を骨折した。

[事例10]2歳 男:

父親の自転車前部に取り付けた子供用座席に座っていたが、父親が買物をしている間に自転車が倒れ、右側頭部を打撲した。CT検査で頭蓋内出血が分かり入院し手術した。

[事例11]3歳 男:

保育園の滑り台で転倒し、頭部を強く打った。

[事例12]3歳 男:

ホテルの階段(3m位の高さ)から転落し、頭部を打撲した。

[事例13]3歳 女:

子供をショッピングカートに乗せて買い物中、子どもが手摺りをもっていないのに気付かず動かしたところ、後方に転落し、頭蓋骨を骨折した。

[事例14]4歳 男:

軽トラックの上で兄と遊んでいたところ、後ろ向きに転落し、コンクリートで後頭部を打撲した。22時間後より嘔吐などの症状が出始めたため,病院で受診、急性硬膜外血腫、頭蓋骨骨折であった。

[事例15]5歳 女:

どんぐりを取ろうとして1.5mのフェンスに登ったところバランスを崩して転落した。

[事例16]6歳 女:

自転車の後部座席に載せて走っていたところ転落し後頭部を打撲した。

[事例17]6歳 男:

階段から転落し、硬膜下出血を起こした。

[事例18]8歳 男:

小学校の階段の10段目で遊んでいて転落した。

[事例19]8歳 女:

ジャングルジムから転落し、急性硬膜外血腫を起こした。

[事例20]11歳 女:

橋の上から川に転落し(約2mの高さ)、急性硬膜外血腫を起こした。

[事例21]15歳 男:

体育の授業中、走り高飛びの支柱が頭に落ちて、頭蓋骨陥没骨折を起こした。

[事例22]16歳 女:

自転車に乗っていて転倒し、全身を打撲、急性硬膜下血腫を起こした。

[事例23]17歳 男:

バイクの後部座席にヘルメットをかぶらずに乗っていて、飛ばされ、転落し、頭部を打撲し急性硬膜外血腫を起こした。



小児の頭部外傷の特徴

 小児が事故を起こしやすい理由として、運動能力を身につける発達段階にあること、躯幹に比し頭部が大きく重心が上方にあるため転倒しやすいこと、身長が低いため目の位置が低くなり、相対的に視野が狭くなっていること、興味の対象に関心が集中してしまって全体をみたり、とっさの状況判断力や危険を予知する能力が乏しいこと、空間における自分の位置感覚や物体との距離や速度との関係を把握する能力が未熟なこと、自分の体重を支えるだけの腕力がないこと、結果として危険からの回避動作が遅れがちになること、などがあげられる。 また、小児の性格による差も大きく影響し、元気で活発で積極的な小児ほど事故を起こしやすく、おとなしくて憶病な小児ほど事故が少なくなる。このため、男に事故が多くなる。

小児における頭部外傷の特異性

頭部外傷に関して小児では解剖学的に以下のような特徴がある。

  1. 頭部の軟部組織は薄く、剥がれやすいので腱膜下血腫や骨膜下血腫を作りやすい。
  2. 頭蓋骨が薄く、弾力性があるので割れにくいが陥没骨折や穿通外傷を起こしやすい。
  3. 大泉門、小泉門があり骨縫合の離開が容易なので頭蓋内圧亢進が起こりにくい。
  4. 頭蓋骨は軟らかく、骨と脳との間隔が少ないので直撃損傷を受けやすい。
  5. 脳は軟らかく変形しやすいので衝撃が緩衝されるため脳損傷の程度が軽くなる。
  6. 架橋静脈が細く弱いので脳実質の変形により損傷されやすく、硬膜下血腫を起こしやすい。
  7. 脳の発達が未熟なので不可逆的損傷を受けやすいが、その反面、障害部の機能は他の脳組織によって代償されやすい。
  8. 脳の局所症状が出にくく、脳浮腫が起こりやすい。

 以上のことから、頭部外傷が軽微な受傷機転でも思わぬ重篤な病状になったりすることもあれば、逆に、衝撃の程度が強くても障害の程度が軽くすんだり、また、意識障害など重篤な症状がみられても予期せぬ以上の回復を示すことがある。

頭部外傷の種類と病態

 頭部外傷にはたんこぶなどの頭蓋軟部損傷、頭蓋骨骨折、頭蓋内損傷として脳挫傷、頭蓋内出血、髄液瘻などがあり、これらが単独であるいは複合して起こりいろいろな症状をもたらす。脳損傷の程度が強かったり、頭蓋内血腫があると脳浮腫がおこり、頭蓋内圧を亢進させる。頭蓋内圧が亢進すると脳血管の循環が悪くなり、脳循環が悪くなると脳浮腫を増強し、それがまた頭蓋内圧を亢進させるという悪循環が起こる。進行すると最後には脳ヘルニア、脳幹部の障害が起こって死にいたる。

頭部外傷の対処の仕方

 小児が外傷を起こした場合、基本的にはケースバイケースで対処すべきであるが、以下の点を参考にするとよい。

1.すぐに泣いたか否か:

すぐに泣けば意識障害はなかったと考えられる。嘔吐やけいれんなど他の症状がなければ、そのまま様子をみる。しかし、泣かずに意識障害がある場合は救急車を呼び病院に行く。救急車が来るまでは呼吸状態を観察し、頭部を動かさず、頭部をやや高くして静かに寝かせて待つ。いびきをかいていたり顎をひくような呼吸をしていたら、下顎かおとがい部を少し持ち上げて、首をまっすぐ伸ばし舌根が落ちこまないようにする。意識が数分間で回復しても、念のため病院で検査を受けたほうがよい。

2.外傷の有無は:

出血していたら、とりあえず清潔な布かタオルで圧迫し、止血するまで待つ。圧迫しても止まらない場合は病院に行く。たんこぶができていたら濡らしたタオルで冷やす。傷口があれば消毒しておく。

3.嘔吐した場合:

1〜2回の嘔吐だけで意識障害、けいれんなど他に症状がなければそれほど心配することはない。しかし、嘔吐後、気分がすぐれないようであれば他に症状がなくても病院に行く。意識障害があって嘔吐した場合は、吐物が気道内を閉塞して窒息するおそれがあるので、首を横に向けて吐物を口腔外へ導き出す。

4.鼻漏、耳漏をみた場合:

すぐに病院に行く。

5.呼吸をしていない場合:

救急車が来るまで口対口(mouth to mouth)による人工呼吸だけでなく心臓部を圧迫する心マッサージを同時に行う。

6.頭部外傷後いつまで心配したらよいか:

外傷後しばらく意識もあり元気にしていても数時間たってから意識障害などの病状が出る例がある。また、外傷後数分から数日後症状がでたり、数ヵ月たってから症状がでることもあるので、外傷後どのくらい時間がたてば安心できるかという期間は決められない。心配してもきりがないので、一般に、外傷の程度にもよるが48〜72時間以上たって症状がなければ後遺症を残すこともなくほぼ安心してよいと考えておく。



頭部外傷事故を防止するために

生まれてから5ヵ月頃まで

出産までに子どもの生活環境(階段や風呂場など)の点検と見直しを行い、危険な箇所は修理したり、鍵をつけたり、柵を作っておく。乳児を床よりも高い位置に寝かせたり置いたりする場合は、常に転落事故を起こさないよう留意する。乳児の移動は親が両手で抱えて行う。椅子や体全体を篭にいれられないベビーカーは用いるべきではない。育児用品は常に発育を考慮して利用する。

6ヵ月から1歳頃まで

お座りができ歩き始める頃なので、階段、床から庭、玄関への転落事故が多くなり、歩き始めのため床の段差や敷居につまずいて転倒する。転倒しても外傷の程度が少なくすむように環境を整える。テレビなどは隅っこに置き、床には物を置かない。床もマットを敷くなど衝撃を少なくする。自宅に階段があれば出入り口に柵を設け手すりをつける。柵を設置するスペースがなければすべり止めを置いたり、壁にラバーをつける。ベビーカーも首のすわり、腰の安定など発育を考慮して選ぶ。

1歳から4歳頃まで

一人歩きができるようになり行動半径がぐっと広くなる時期なので階段の上り下りには必ず親が同伴し、手をつなぐか下側から見守る。特に、コンクリートの階段は注意する。風呂場での事故が多くなるので、すのこなどを置いて滑りにくくする。溺水事故の原因ともなるので、風呂場の出入口に鍵をかけ一人で入れないようにするとともに、浴槽の水は排水しておく。
公園の遊具による事故が多くなるので、幼児の年齢に応じた遊具を選ぶ。地面の硬さや附属する階段の幅や間隔など遊具そのものに問題がないか、あらかじめ危険性を確認しておく。この年齢層の幼児は自己中心的になりやすいので、ルールを守ることの大切さを学ばせる。
この年齢層での自転車事故は、乗り始めによる運転技術の未熟さと大人との二人乗りによる転倒事故がある。足台のある補助座席を使用し、自転車を止める場合は必ず幼児を先に降ろす。

5歳以後

幼稚園、保育園、学校での事故やスポーツ事故が増加する。安全教育や施設面での安全対策を施しておくとともに本人の危険に対する自覚を促していくことが肝要である。




本件連絡先 消費者情報部 危害情報担当
ご相談は、お住まいの自治体の消費生活センター等にお問い合わせください。


発表情報トップページへ

ページトップへ