[1997年9月5日:公表]



ソフトタイプのこんにゃく入りゼリーでも窒息事故 幼児には与えない方が無難


苦情処理テストから No.3 

 国民生活センターでは、一口サイズのこんにゃく入りゼリーについて乳幼児やお年寄りの窒息事故が相次いだことから、事故を回避するための警戒情報を出してきた。同時に関係業界に対して事故を防ぐための対策として以下の2点を96年8月に要望した。  当要望を踏まえ、また農林水産省の指導もあり業界でも表示を改善し、物性を柔らかくするなどの対策をとってきたと思われる。その結果、国民生活センター危害情報システムに寄せられる事故は減少している。
 しかし、今年度になってから一口サイズのこんにゃく入りゼリーで前回と同様の誤嚥事故に係るテストを2件扱った。テストの結果、従来のこんにゃく入りゼリーに比べ、硬さや弾力性を抑えた商品であるにもかかわらず、事故に至ったことが分かった。
 これまで調査したこんにゃく入りゼリーについては、物性値の特徴から便宜的に硬いグループ、中間的なグループ、柔かいグループの3グループに分類していた。この中で、口の中で自然に形がくずれるような柔かいグループについては事故の可能性は低いと考えられたが、中間的なグループの事故の可能性については必ずしも明確ではなかった。しかし、今回事故のあった「ソフトタイプ」の表示のあるものはこの中間グループに属するものであった。
 このような物性の商品が乳幼児に危険なものであるかについて専門家の意見をうかがった結果、乳幼児に与える場合、状況によっては事故につながる危険性があると考えられるものであった。
 以上のことから、弾力性や硬さを抑えた商品であっても、幼児に与える場合は注意が必要であり、表示では従来のこんにゃく入りゼリー同様に「幼児には与えてはいけない旨」の警告表示が必要と思われる。

1.事例  ●事例1)
 1歳10ヶ月の幼児が母親にスプーンで食べさせてもらっていて喉に詰まらせ、入院した。母親はこんにゃく入りゼリーの事故情報を知っていたが、「ソフトタイプ」の表示があるうえ、他商品にあるような注意表示もなかったため、乳幼児に食べさせても大丈夫と判断していた。   (97年4月 京都府)

●事例2)
 こんにゃく入りゼリーの表示のない商品(原材料表示にはグルコマンナンの表示があった)で2歳の幼児がひとりで食べていて誤嚥事故には至らなかったが、喉に詰まりそうになった。  (97年6月 千葉県)

2.硬さ・弾力性   上記2事例の商品は弾力性、硬さとも近似しており、こんにゃく入りゼリーの中ではかなり柔かくまた弾力性も小さい商品であった。しかし、こんにゃく粉を使用していない「普通のゼリー」と比較すると硬さ弾力性ともに数値は大きめであり、口に入れた時の感触でも「普通のゼリー」と違ってかまないでも自然に形が崩れていくようなものではなかった。

3.警告表示等について   事例1の商品には、「こんにゃく入りゼリー」「ソフトタイプ」の表示はあるが、「幼児には与えてはいけない」旨の警告表示はなかった。
 事例2の商品には、原材料表示で「グルコマンナン」の表示はあるが「こんにゃく入りゼリー」であることが明記されていなかった。包装裏面には「幼児には与えてはいけない」旨の表示があった。但し、注意を喚起するような記載方法ではなかった。
 なお、参考として「こんにゃく入りゼリー」の表示調査をしたところ、特にソフトをうたっていない商品では12銘柄中8銘柄に「幼児には与えてはいけない」旨の警告表示が見られたが、ソフトをうたっている商品では9銘柄中2銘柄しか警告表示がなく、かえって「ソフト」を強調しており、両者に警告表示に関して差が見られた。

4.まとめ   こんにゃく入りゼリーによる事故は、これまで死亡を含め多くの窒息事故が報告されているが、その65%が学齢前の子供である。事例1、2の場合についても従来のものに比べ硬さや弾力性を抑えたものではあったが幼児の事故であった。
 ソフトタイプのようなこんにゃく入りゼリーでも誤嚥事故につながる可能性があるかについて、乳幼児の咀嚼と嚥下の専門家である昭和大学歯学部口腔衛生学教室向井 美恵教授にうかがった。同教授によると、『従来の「こんにゃく入りゼリー」に比べ柔かくなったとはいえ、この事例の商品は、乳幼児にとっては弾力性と回復力が強い商品と言える。また、3歳未満の幼児は咀嚼から嚥下までの動作が未成熟で、こんにゃく入りゼリーのように口中に入った時に物性が変化しにくい商品は、与え方にも注意が必要である。できれば与えない方がよいだろう。誤嚥を避けるためには、乳幼児自らが「食べる」という意識を持てるように食べさせる必要がある。そのためにはスプーンで与える場合でも、幼児の口先にスプーンを当てて幼児自らがすくい取るように与えるとよい。』
 今回の事例は、乳幼児自身の「食物」の物性に対する認識の程度と苦情品の物性の特徴の両方が要因として考えられる。つまりこんにゃく入りゼリーが口中に入った時に、「つぶして食べる」という認識を十分持てず、その動作を行おうとする前に、表面が滑りやすく弾力があるため崩れたりせずに喉に到達し、その時点では喉頭蓋が閉じていなかったための事故と考えられる。
 当該2事例からは、従来の「こんにゃく入りゼリー」と比べ柔らかく弾力性も小さい商品であっても、かまないでも自然に形が崩れるようなもの以外は、乳幼児には与えない方が賢明であり、「乳幼児には与えてはいけない」旨の警告表示が必要であると考えられる。

【幼児の咀嚼と嚥下のしくみ】
 食べ物が口中に入ってから嚥下までの動作は、舌や口蓋の前方部に食物が接触すると、食物の大きさ、硬さなどの物性を自動的に感知し、「つぶす」「かむ」などの動きが自発的に行われ、嚥下に至る。嚥下は口を閉じた状態で行われる。通常、意識して嚥下する際には喉頭蓋が閉じて、気道が閉ざされるため、気管にものが詰まることはない。ところが乳幼児は、物性を感知し、咀嚼し、嚥下するという一連の動作の獲得が不十分で、支障なく行えるようになるのは3才程度とされる。
 3歳以下の乳幼児に食べものを与える時には、口先にスプーンを当てて幼児自らがスプーンからすくいとるようにすると、物性を感知しやすいため事故は起こりにくい。逆に、感知しにくい物性のものや、不用意に食物が口の中に入り(口を開いた状態では通常気道は開放されている)、物性などを確認する間もなく、気管が開いた状態のままで喉に食物が到達した場合等に、喉を詰まらせる危険性がある。

5.消費者へのアドバイス 

  1. 「ソフトタイプ」の表示あるものでも幼児には与えない方がよい。
  2. 「こんにゃく入りゼリー」の表示がないものでも、こんにゃく入りゼリーと同じくらいの硬さや弾力性を持ったゼリーがある。与える場合は保護者が必ず物性を確認すること(口の中で自然に形が崩れる程度の硬さのものなら心配ないと考えられる)。
6.事業者への要望 
  1. ソフトタイプのこんにゃく入りゼリーでも、誤嚥事故があったことから、「幼児には与えてはいけない」旨の表示を見やすい場所に、注意を喚起するように表示してほしい。
  2. 原材料にグルコマンナンやこんにゃく粉の表示があるものでも「こんにゃく入りゼリー」の表示がなく「こんにゃく入りゼリー」相当品であるとの認識が持てない商品があった。こんにゃく由来のグルコマンナンやこんにゃく粉を使用したものであれば「こんにゃく入りゼリー」の表示をするよう要望する。
  3. 原料にこんにゃくを使用していないものでも、口中で自然に形がくずれないような商品は「幼児には与えない旨」の警告表示をしてほしい。また、普通のゼリー(柔かいグループのゼリー)と容易に見分けられるような表示方法の検討を要望する。
  4. 特にソフトをうたっていない一口サイズのこんにゃく入りゼリーでも、警告表示や与える場合の注意表示がない銘柄があったことから、表示の徹底を要望する。また、一口サイズでないものにも警告表示等が見られなかった。過去にスプーンで与えていても事故があったことから、一口サイズでない商品にも「幼児には与えてはいけない」旨の表示を徹底してほしい。
7.行政への要望 
  1. 事業者に対して上記1、2、3、4の要望事項に関する指導を要望する。
  2. さまざまな性質のゲル化剤が使用されるようになってきており、こんにゃく入りゼリー以外にも幼児には不向きな物性を持った商品があると考えられる。このような商品グループを表示上で消費者が容易に識別できるように検討を要望する。
参考資料:こんにゃく入りゼリーによる窒息事故一覧表 
被害程度
発生年月
性別
事故時の年齢
発生地域
死亡
95年 7月
95年 8月
9512
96年 3月
96 3
96 3
96 6
96 6
1歳6ヶ月
6歳
82
87
68
1歳10ヶ月
2歳1ヶ月
6
新潟
大阪
茨城
鳥取
静岡
長野
埼玉
茨城
入院
95 5
95 8
95 9
95 9
9511
97 4
10ヶ月
110ヶ月
9
9ヶ月
110ヶ月
110ヶ月
長崎
埼玉
京都
福井
香川
京都
結果として事なきを得たもの
94 6
9411
95 3
95 5
95 8
95 8
9589月頃
95 9月
9510
9510
96 1
96 3月頃
96 3
96 5
96 5
965
96年 6月
96年 6月
96 7月頃
976
不明
不明
2
9
85
18ヶ月
2歳2ヶ月
28ヶ月
14ヶ月
7
3歳4ヶ月
50
2
6
5
5
17ヶ月
10歳 
94歳 
83歳 
10歳 
2
山梨
兵庫
京都
東京
新潟
神奈川
広島
広島
神奈川
埼玉
鳥取
山梨
大阪
兵庫
宮城
東京
福井
山口
大阪
千葉
19978月20日現在 危害情報システムより)


本件連絡先 商品テスト部
電話 0427-58-3165