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[1997年2月4日:公表]

服が燃えて大やけど! 知られざる危険「着衣着火」

消費者被害注意情報(危害情報システムから)No.8

 料理を作っていたら、衣服のそで口に火がつき、たちまちのうちに燃え上がりやけどした……、何らかの原因で人が着ている衣服に火がつく「着衣着火」の事故情報が、国民生活センター危害情報システムに多数寄せられている。これらの多くが通院や入院を要する重症事故で、なかには全身大やけどを負い死亡したという痛ましい例もある。

 「着衣着火」は、すべての消費者に起こりうる危険であるにもかかわらず、危険の大きさを知っている消費者は少ないと思われる。そこで、着衣着火の事故を分析し、消費者に事故防止のための注意を呼びかけることにした。


事故の概要

事故件数等

 着衣着火による事故情報は、1993年4月〜96年12月までに130 件(協力病院から危害情報82件、消費生活センターから危害情報8件、危険情報40件)報告されている(注1)。

注1:危害情報…商品やサービス・施設等により人身に危害が及んだ事故情報、
  危険情報…危害には至っていないが、人身事故のおそれのある情報

 年度別にみると、93年度:22件、94年度:32件、95年度:43件、今年度も12月までの9か月間で33件ある。

1.30歳代が多い
 年齢別に見ると、30歳代が22件と最も多く、次いで、40歳代が19件、50歳代が17件、10歳未満(0〜5歳:7件、6〜9歳:10件)と20歳他 男女別にみると、20歳代と80歳代が男性のほうが女性より約2倍多いほかは、男女による差はあまりない。
2.高齢者の重症事例が多い(病院情報82件の内訳)
 死亡2件を除く80件のうち、40件(50%)が、入院を必要とする重症事故であった。なかでも、60歳以上の高齢者の場合は、19件中死亡が2件、重症と重篤症が合わせて7件もある。
 やけどした部位は、腕(21件、25.6%)、足(17件、20.7%)、全身(13件、15.9%)の順である。「全身」の61.5%は60歳以上の高齢者である。
3.炊事中の事故と喫煙による事故が各々3割を占める
 事故が起きたのは(やけどに至らないケースも含めて)、「炊事をしているとき」が最も多く、次いで「たばこを吸っているとき」あるいは「喫煙直後」が多く、それぞれ全体の約3割を占める。
 また、明らかに「表面フラッシュ現象(注2)」と考えられるケースが19件あった。
注2:
「表面フラッシュ現象」とは、一般的には生地の表面の毛羽に火が着き、瞬間的に火が走る現象をいう。
表面に綿・レーヨンなどの毛羽のあるものに発生しやすい。
また、洗濯することによっていっそう毛羽立ちが発生し、表面フラッシュを起こしやすくなることがある。
やけどに至らなくても驚いて持っていたなべややかんを落としてやけどするなどの2次被害の危険性がある。
 着衣着火の元となった商品は、「ガスコンロ」など調理器具が多く、「ライター」「花火」「ローソク」と続く。
4.着衣の種類はいろいろ、素材は綿が多い
 着火した着衣の種類がわかっているものは、130 件中66件あり、「ワイシャツ」8件、「シャツ」7件、また同数で「カーディガン」「トレーナー」(6件)の順である。衣服の素材までわかるものは少ないが、わかっているものの中では「綿」が比較的多い。
 「ワイシャツ」は喫煙直後にライターをポケットなどに入れて燃えたというものが多く、「カーディガン」「トレーナー」は炊事中に着火した例が多い。

事故事例(略)



テスト結果から(防炎の衣類は、そうでない衣類に比べてはるかに安全)

跡形もなくなった防炎でない普通のパジャマ(国民生活センターの比較テスト)

 商品テスト部で91年に防炎製品(パジャマ、和式ねまき、寝具類など)の比較テストを行ったが、その際、参考品として防炎ではない普通の衣類や寝具類のテストも行った。その主な結果は次のとおりである。

  • 衣服類をマネキンに着せて、ひざのあたりにバーナーで約10cmの炎を6秒くらい接したところ、
    • 普通のパジャマや和式ねまき(どちらも綿100 %)は、炎を上げて約5分間燃え続け、ほとんどの部分が跡形もなくなった。なお、火がついてから5秒〜3分間くらいでマネキンの表面温度は500℃にもなった。
    • 防炎製品のパジャマ(難燃アクリル95.5%、ポリエステル4.5 %)と和式ねまき(綿100 %、難燃加工)は、炎の接した部分が溶けたり炭化したが、炎を遠ざけるとすぐに火が消えて燃え広がらなかった。
  • ガステーブルのコンロの火の上に衣服類のそで口を3秒間かざしてみたところ、
    • 普通の衣服類は、炎を上げて燃えてしまった。
    • 防炎製品のほうは、炎に接した部分が溶けて縮んだり、焦げただけでコンロの炎から離すとすぐに火が消え、燃え広がらなかった。

腕カバーに火がつくと、最短では20秒でやけど(東京消防庁生活安全課の実験)

 96年に防炎の腕カバーと非防炎の腕カバーの燃焼性状をガスコンロを使って実験した。

 人間の皮膚は70℃くらいの熱を1秒でも受けると皮膚組織が破壊を起こす。すなわちやけどすることになるので腕にみたてた垂木に腕カバーを付けて火をつけてから垂木の表面が70℃になった時点でガスを消したところ、

  • 普通の腕カバーは火をつけてから約30秒後で燃えはじめ、ガスコンロの火を消してもそのまま燃え続け、2分間でほとんど燃えつきてしまった。最短では約20秒で腕がやけどする。
  • 防炎の腕カバーは、ガスを消せば炎が接した部分が炭化するだけで燃え広がることはなかった。

(日本防炎協会発行「防炎ニュース」No.128から)



法規制などについて

 着衣着火の危険から身を守るための法規制は、今のところない。しかし、消防庁の指導で、「防炎製品」を認定する制度がある。また、PL法施行を受けて、業界にも「表面フラッシュ現象」などへの対策(注意表示など)がされるようになってきた。

  • 「防炎性能」の基準を定め、それに合格し、さらに毒性の審査を経たものに「防炎製品ラベル」を交付しているのが財日本防炎協会である。防炎製品は、一般家庭用として、パジャマ、ゆかたをはじめ寝具、エプロン、かっぽう着、腕カバーなどが販売されている。しかし、数的にはまだまだ少ないのが現状である。
  • 紡績メーカーの業界団体である日本紡績協会では、PL法対応のガイドラインの中で「繊維製品におけるPL関係の紛争として最も懸念されるのが燃焼事故である。このため、易燃性製品については消費者に注意を喚起する目的で適切な注意表示が必要」としている。
  • アパレルメーカーなどの業界団体である社日本アパレル産業協会では、フラッシュ現象への事故防止策として警告表示のあり方をまとめ、会員企業に提案している(特に成人・子ども・幼児等の軽衣料や部屋着、寝衣などの綿、レーヨンなどのセルローズ系繊維使用のパイル、起毛品を対象として、シンボルマークとともに、「ガスレンジやストーブの炎に近づくと、表面の毛羽に着火することがあります。ご注意下さい。」などの文言を表示するよう呼びかけている)。


事業者への要望

  • 防炎製品が出回ってきたとはいえ、まだデザインなどの種類が限られていて一般的とはいえない。より多くの衣料メーカーが、いろいろな種類の防炎製品を製造・販売し、消費者が自分のあるいは家族の事情や考えにあわせて選べるようにしてほしい。
  • 素材やデザインなどフラッシュ現象を起こしやすい衣服には、その旨の表示の徹底をしてほしい。


消費者へのアドバイス

  • 一般的な注意点
    1. 衣服に火が燃え移ると、重度のやけどや死亡事故にもつながるということを知っておくこと。
    2. 身体機能が衰えている高齢者や注意力に欠ける子どもに対しては周りの人が十分気をつける。
    3. 外で何かを燃やすときは、特に注意すること。風のある日や燃えやすくするために灯油などをかけた場合、いったん着衣に着火するとひどいやけどになりやすい。
  • 具体的な注意点
    1. 例えば、電気ストーブなどは直火でないだけに安心しがちであるが、近寄りすぎて重症なやけどを負った例もある。直接炎が見えないからといって油断しないこと。
    2. そでやすそが広がっている衣服に火がついても気づきにくいので、火気の近くに寄りすぎないようにする。また、パジャマやネグリジェなどの寝衣は体にルーズであるなどのため燃えやすいものが多いので、調理のときは着用しないこと。
    3. 最近は、火口が3〜4か所ついているガスレンジも珍しくないが、手前の火口に火がついていて、さらに遠いほうの火口にもなべなどをかけようとするときは、不精しないで手前の火口の火をいったん止めてから、次の動作に移る。
    4. 喫煙直後にライターを衣服のポケットに入れて火がつくケースも多いので、火が消えたことを確認ししばらくしてからしまうようにする。マッチをポケットに入れるとこすれて発火する危険性があるので気をつける。また、マッチやライターは子どもの目や手の届かない所に置くこと。
  • より安全な商品を選ぶ・くふうする
    1. 高齢者や子どもには防炎製品の衣服(特にパジャマなど)の着用を考える。
    2. そで口に火が付くケースが多いので、特に調理する場合は、防炎製品の腕カバーを付けるのも一つの方法である。古くなったウールセーターのそで部分のみ切り落として腕カバーとして使ってもよい。ウールは燃えにくく、くすぶると独特のにおいがするので、気づきやすく対応が早くできる。
    3. 新しく調理器具を購入するときは、例えば、電気調理器などを選ぶのもよい。
  • もし衣服に火がついてしまったら、走りまわらないで、火のついたところにすぐに水をかけて消す。水道水でも花瓶の水でもジュースでも、とにかく手近の水をかけて消すこと。しっかり水をかけて消したら、やけどしたところを冷やし続け、落ち着いて燃えた着衣を取り去り、タオルなどで覆って冷やし続けながら人を呼ぶ。
    水が手近にない屋外などでは、火をたたき消し、地面を転げ回って火を消す。


参考資料

繊維の燃焼性

分類燃焼の状態繊維の種類
易燃性炎をあげて速やかに燃え上がり、わずかに灰を残すキュプラ、レーヨン、綿
溶融しながら炎を出して速やかに燃え、黒い塊状の灰を残すアセテート、トリアセテート、ベンゾエート、アクリル、プロミックス、ビニロン
可燃性炎の広がりはゆるやかで徐々に燃焼する溶融しながら燃焼ポリエステル、ナイロン
縮れながら燃焼絹、毛
難燃性 炎に触れている間は燃えるか焦げるが、炎を遠ざけるとすぐ消える改質ポリエステル、アクリル系・フェノール系繊維、ポリ塩化ビニル、ポリク

(財)日本衣料管理協会「繊維製品の苦情処理ガイド」から

衣服のデザイン等について

 同じ素材でも厚みと重さがあるほど燃えにくくなる。

 また、デザインでは体にルーズな衣服は燃えやすく、フイットしたものは燃えにくいといわれる。そのため、ゆかたやワンピース型よりツーピース型のほうが防災面からは効果的である。




本件連絡先 情報管理部
ご相談は、お住まいの自治体の消費生活センター等にお問い合わせください。


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