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[1996年10月3日:公表]

小児の事故を防ぐために やけど事故を中心として

事故解析報告書(危害情報システムから)要約

 「危害情報システム」は、全国20の協力病院から商品等に関連して発生したと思われる受診情報(以下「病院情報」)を収集しているが、商品等に関連する身体被害が最も多いのは小児である。

 平成7年7月、待望の製造物責任(PL)法が施行され、消費者は、製品の欠陥に起因する(身体被害等の)拡大損害に対して損害賠償されやすくなった。しかし、我々の日常生活には、製品の欠陥の有無に関係なく多くの身体被害が発生している。被害の原因・責任はさておき、安全であるべき日常生活における身体被害は無くさなければならない。

 このたび、小児の商品事故防止の参考に資するため、国民生活センターと協力病院小児科医グループの共同作業により、病院情報のうち『小児(20歳未満)の商品事故(1)』と、なかでも件数が多く、かつ、重症になりやすい『やけど事故(2)』について分析・検討した。

※「小児」の明確な定義はないが、ここではWHOの統計資料にならって、20歳未満を「小児」とした。

小児の商品事故に関する検討

検討対象

 1992年8月〜1995年3月の病院情報のうち、小児の商品事故10,501例を分析した。

検討結果

  1. (1) 年齢層別件数では、0〜4歳が51%を占め、性別件数では、男性60%、女性40%で男性の方が多かった。10〜14歳では特に男性の事故発生頻度が高かった。
  2. (2) 小児の行動範囲が広がるに伴い事故の原因となった商品、傷害の内容に特徴があった。0歳〜1歳では乳幼児用商品や家庭内の身の回りの商品で事故が発生しており、年齢が高くなるに従い住宅設備や、遊具、スポーツの事故が目立った。第1位の商品は、生後0か月〜5か月 「ベッド・ベビーベッド」、6か月〜11か月「タバコ(誤飲)」、12か月〜3歳「階段」、4歳以上では「自転車」であった。さらに年齢層別の特徴をみると、0〜2か月では「テーブル」、0か月〜5か月では「ベビーカー」、0〜8か月では「ベッド・ベビーベッド」による事故が目立った。6か月〜17か月になると「タバコの誤飲」「茶碗の湯」による事故が目立ち、6か月〜11か月では「魔法瓶(含電気エアーポット)」「温風暖房機」「電気炊飯器」、12か月〜17か月では「電気アイロン」の事故が多かった。「滑り台・ブランコ・遊具」は18か月〜23か月と4歳〜9歳、「椅子」は0〜5か月と1歳〜3歳で多かった。2歳〜4歳頃は「自動車」が多いが、これは主に自動車のドアに指を挟む事故である。また、この年齢層は、住宅の「ドア」に指を挟む事故も多かった。「階段」と「自転車」は1歳から20歳未満まで上位商品であった。
  3. (3) けがの程度では、擦過傷・挫傷・打撲傷(自転車、階段による)が各年齢層を通して第1位だった。0〜4歳は異物の侵入による傷害(タバコ等の誤飲)、熱傷(茶碗の湯、電気アイロン等による)、5〜9歳は骨折(ブランコ、鉄棒、滑り台など遊具等による)、刺傷・切傷(自転車、階段等による)、10〜19歳は骨折、脱臼・捻挫(スポーツによる)が多かった。
  4. (4) 傷害の部位では、頭部、腕・手指、下肢・足の順に多かった。低年齢層ほど頭部の割合が多く、高年齢層では腕・手指、下肢・足の割合が多くなった。
  5. (5) 入院を要する事故は、熱傷が最も多く、次いで、骨折、擦過傷・挫傷・打撲傷、異物の侵入による傷害の順であった。原因は、「鍋、茶碗、魔法瓶、やかん等家庭内で身の回りにある 熱い物または熱湯」「階段、浴槽、窓等の住宅設備」「滑り台、ブランコ等の遊具」「自転車、オートバイ等の乗り物」「サッカー、スキー、バスケットボール等のスポー ツ」「タバコ、コイン、医薬品、防虫殺虫剤の誤飲」等に大別できた。
  6. (6) 発生場所別では、家庭内が最も多く、次いで学校、道路の順であった。家庭内事故の7割強は5歳未満で、学校、道路は5歳以上に多かった。家庭内事故の発生場所では、居間、台所、階段の順に多かった。
     低年齢層では居間の割合が多く、高年齢層では階段、浴槽、台所の割合が多かった。

入院を要した主な重症事例

  • 近所の子(小学3年)の運転する自転車の後ろに乗せてもらい遊んでいたところ、急ブレーキをかけたとき後に乗っていた子供が転落し後頭部をコンクリートの地面に打撲し、頭蓋骨骨折  (94年6月、6歳女)
  • 一年前に購入した折り畳み式のサマーベッドの角度を変えるストッパーがはずれ、右手人差し指を切断  (94年9月、9歳男)
  • 自転車の前に取り付けてある自転車用幼児用座席に子供を座らせたまま、親が買い物のため自転車から離れている間に自転車が倒れ、子供が右側頭部を打撲。
    その後、嘔吐があり病院でCTにて調べたところ頭蓋内出血が認められ手術 (94年6月、2歳男)
  • 低いベビー椅子に座らせて離乳食を食べさせたとき、スプーンをくわえたまま椅子から前方に倒れて椅子から落ちたため、スプーンが刺さり右頬粘膜裂傷により3針縫合 (93年8月、0歳7月男)
  • 保育園の滑り台で転倒し頭部を強打 (93年5月、3歳男)
  • ホテルロビーの階段の手摺で遊んでいたところ転落して左後頭部骨折。脳内血腫もみられ手術 (94年7月、3歳男)
  • 夕食前、引き出しからぬり箸を取り出したところ、絨毯に引っ掛かって転倒して、持っていた箸が眼に刺さり頭蓋内損傷 (94年12月、5歳男)
  • ジャングルジムから転落。頭部を打ち急性硬膜外出血 (94年4月、8歳女)
  • テレビのリモコンをなめていて、中のボタン電池を飲み込む (93年10月、3歳女)
  • 母親と2歳と4歳の子供が一緒に入浴中、母親が髪を洗っている間に4歳の子供が溺水 (94年3月、4歳男)
  • 浴室で転倒し、割れたガラスが左胸部に刺さり、肺動脈を損傷。出血多量で間もなく死亡 (94年1月、15歳男)

小児のやけどに関する検討

検討対象

 1992年8月から1995年3月の病院情報のうち、小児のやけど1,551例について検討した。なお、火事、陽焼け等によるやけどは含まれていない。

検討結果

  1. (1) 年齢層別件数では、0〜4歳で全体の70% を占めた。生後6カ月から17カ月の1年間は特に発生頻度が高かった。性別件数では、どの年齢層でも男女数に差はみられなかった。
  2. (2) 発生時期では、0〜9歳までは熱源を使用する頻度の高い冬に発生することが多く、10〜19歳では花火による事故が多発する夏に多かった。
  3. (3) 発生時刻では、昼食時と17〜21時の夕食時に多発していた。
  4. (4) 発生場所は、家庭内が約9割を占めるが、年齢が長ずるに従って、家庭内に代わって店舗、公園、道路等でのやけどの頻度が高くなる。家庭内では、居間、台所が多かった。低年齢層では、居間が多く、年齢が長ずると浴槽、風呂場が多かった。
  5. (5) 受傷部位は、四肢が全体の72%を占め、そのうち上肢が約2/3、下肢が1/3であった。各年齢層別にはっきりした差がみられ、0〜4歳では上肢のやけどが70%以上を占め、5〜19歳では下肢のやけどが半数以上を占めていた。頭部(全体の15% )では顔面がほぼ2/3を占め、体幹(全体の13%)では胸部がほぼ半数を占めていた。
  6. (6) 3度のやけどが多かった上位5品目は、鍋、電気アイロン、やかん、花火、茶碗であるが、この5品目はやけどの原因商品になる機会が多く、この5品目で全体の36%を占めていた。各年齢層においてやけどの原因となった商品をみると、乳幼児では茶碗が最も多く、電気アイロンによるやけども多かった。学童以降はやけどの発生数が減少するが、花火によるやけどが多くなり、15歳以上では、食用油、オートバイなどによるやけどが多かった。
  7. (7) やけどの原因は、低年齢層では湯や蒸気に触れたり、熱いものに触れた事故が多く、年齢が高くなるにしたがって火炎・爆発(花火、ライター等)によるやけどが増加した。
  8. (8) どの年齢層でもほぼ9割が、通院が必要であったり、入院を要した事故であった。また、15歳以上では入院する率が高かった。
  9. (9) 入院が必要であった原因商品は、やけどの原因となった商品とやや異なった順位となっていた。鍋、浴槽など熱源の量が多いものによるやけどの場合、入院する例が多かった。

小児のやけどの防止に関する提言(協力病院小児科医グループの提言)

  1. (1) 小児のやけどは、発生頻度、重症度から考えて積極的に防止対策を講ずる必要がある。
  2. (2) やけどの防止活動の対象は乳幼児をもつ保護者であり、指導の時期としては3〜4カ月健診からはじめる必要がある。
  3. (3) 小児科医は、乳幼児の月齢に沿ってやけどの防止活動を積極的に展開し、生後6カ月を過ぎたら反復して具体的に指導する必要がある。
  4. (4) 今後、新しい商品によるやけど、今まで知られていない原因によるやけどが発生する可能性があり、継続的にやけどの情報を収集していく必要がある。
  5. (5) やけどに対し、有効な防止策を立てるためには、重症度、頻度、後遺症の率が高いやけどを取り上げ、発生の細かいメカニズムを検討する必要がある。

入院を要した主な重症事例

  • ストーブの横で遊んでいて、立とうとして後ろ向きに倒れてやかんの熱湯を浴びて大腿下腿部の7%に3度のやけど (94年4月、0歳9月男)
  • テーブルの上の味噌汁の入った器をひっくり返して、顔面の10%に2度のやけど  (94年12月、0歳10月男)
  • バケツにはいっていた温水器の湯をかぶり、胸部の15% に3度のやけど (94年5月、2歳女)
  • 沸騰している湯が入った鍋を手で引っ張って全身の30% に2度のやけど (93年10月、3歳女)
  • 風呂釜のガスを止めようとして浴槽の蓋の上に足をかけたところ、転落して全身の20%に3度のやけど (94年1月、9歳女)
  • 風呂の火を止めようとして誤って浴槽に転落、全身の40%に2度のやけど (93年11月、8歳女)
  • 手持ち用の連発花火が暴発して手に3度のやけど  (94年8月、18歳女)

本件連絡先
情報管理部危害情報担当
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