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[1996年10月24日:公表]

滑る、つまずく、高齢者の骨折事故<抜粋>

消費者被害注意情報(危害情報システムから)No5

 全国20の危害情報協力病院から「危害情報システム」に寄せられた事故情報(病院情報)のうち、65歳以上の高齢者に特徴的な疾病は「骨折」である。高齢者の骨折は、疾病が骨折に止まらず、行動の不自由さがもっと大きな事故を生んだり、寝たきり状態へのきっかけになることも多いという点で、もっとも避けなければならない事故の一つといえる。

 9月15日は、敬老の日である。体力の衰えや健康への不安が増し続ける高齢者が、少しでも安全で快適な暮らしを続けるために、高齢者の骨折事故を分析し、注意を呼びかけることとした。


事故の概要

 1992年8月〜96年7月の4年間に収集した病院情報33,834件のうち、骨折事故は10.8% (3,638件)であるが、これを65歳以上の事故3,734 件に限ってみると20.9% (780件) と約2倍になる。骨折は、高齢者に特徴的なけがといえる。事故は例年同程度起きており、増加または減少するといった傾向はみられない。高齢者の骨折事故780 件の概要は以下のとおり。

骨折事故は、女性に多い

 男性31.4% 、女性68.6% の割合で発生している。高齢者の場合、64歳以下の骨折の男女割合と比べて、女性の割合が29.1ポイントも高くなる。

 また、年代別に骨折事故の発生割合をみると、高齢になるほど高くなる傾向にある。

脚、胸、腕で、3分の2を占める

 骨折は身体のほとんどの部位に発生している。なかでは、大腿・下腿が24.4%で最も多く、以下、胸部23.6% 、上腕・肩・前腕17.6% と続き、この3部位で3分の2を占める。

重傷になるのは、脚の骨折

 高齢者の骨折事故全体では死亡・重症・中等症(以下、重傷)は51.8% であるが、大腿・下腿の骨折はこれが89.5% と非常に高くなる。重傷の割合が、高齢者の骨折事故全体における割合を上回っているのは、大腿・下腿の骨折だけである。

(注) 危害情報では程度をつぎのように分けている。
  軽症:入院を要さない状態。         
  中等症:生命に危険はないが入院を要する状態。
  重症:生命に危険が及ぶ可能性が高い状態。  

階段での骨折が最も多く、以下、道路、床が多い

 780件中、階段での骨折が121件(15.5% )、道路での骨折が89件(11.4%)、建物内の床での骨折が75件(9.6%)である。以下、自転車、風呂場、いすと続き、10位の自動車までで約7割を占める。

 780件中、家庭内で起きたことが分かっている事故は409件(家庭の内か外かが分かっている事故の57.3%)である。

重傷事故は、階段、床、ベッドなどでの骨折が多い

 重傷の割合が、高齢者の骨折事故全体における割合を上回るのは、階段の57.0%、床の54.7% 、ベッドの54.5% 、風呂場の53.5% である。

 家庭内で起きた事故も、家庭の外で起きた事故も、重傷の割合はほとんど違いがなかった。

原因は、圧倒的に「転倒」が多い

 骨折事故のきっかけは、「転倒」「転落」「ぶつかる」「挟む」などがあるが、年代別にみると高齢になるほど「転倒」が増え、70代で61.7% 、80代で73.2% になり、90代では95.7% とほとんどが転倒による骨折になる。



骨折の原因

医学的にみた「骨折」(専門医の見解)

 骨折とは「外部から力が加わって骨の連続性が絶たれること」であり、強い力が加わったときに起きることが多いが、骨の強度が落ちているために、あまり外力が強くなくても骨折になる場合がある。その1つが「病的骨折」で、骨にガンの転移があったり、骨粗鬆症で骨がもろくなっている場合の骨折である。その2は「疲労骨折」で、ハードなスポーツなどで繰り返し力がかかって骨がもろくなって起きるもので若い人に多い。

 高齢者の骨折は、ほとんどが骨粗鬆症によるもので、大腿骨頸部や脊椎によくみられる。強く打った覚えがないケースでは痛みや歩行困難などで受診し、骨折に気づく例が多い。大腿骨骨折の治療は手術になるが、高齢者は手術に伴うリスクも大きい。麻酔などの危険のほか、短期間の入院で痴呆が急激に進むこともある。また、骨折が引き金で歩かなくなると、寝たきりになりやすいなど影響が大きい。寝たきりは、床擦れや尿路感染症、肺炎などの合併症を起こしやすく、老人性痴呆も進みやすい。

 転倒事故には避けられないものも多いが、普段からよく歩く人は筋力も鍛えられて骨折しにくいともいえよう。

※骨粗鬆症
 骨がもろく折れやすくなる症状。骨量(骨の中のカルシウムなど)が減って、骨梁(こつりょう・個々の骨の中で縦にかかる力を支えている梁)が弱 くなるために起きる。「鉄骨のないビル」のようなもので、本来折れない力でも折れてしまう。高齢になって背中や腰が曲がったり、痛んだりするのもこのためである。骨量の減少は、加齢によるほか、閉経に伴う女性ホルモンの不足も大きく影響するので、女性は50歳前後から骨粗鬆症が増加し、60代では半数以上、80代では大半が骨粗鬆症である。男性と比べても圧倒的に女性が多く、骨粗鬆症による骨折の約8割は女性である。
(大森赤十字病院 整形外科 中村秀紀医師よりヒヤリング)

骨折のきっかけとなる「滑り」「つまずき」の原因

 骨折は、「滑る」「つまずく」「落下する」などをきっかけに、転倒することで起きることが多い。

当センターでは、93年度に家庭内での日常生活の実態に合わせた「滑り」の実験を行った。その結果、滑りやすいのは次のようなケースであると推定された。

  • 畳の上に放置された新聞紙の上を歩いた場合
  • フローリングの床でワックスや油がついている場合。また、何もついていなくても、フローリングの床でストッキングや木綿のソックス、布底のスリッパを履いて歩いた場合
  • カーペットの上に、ナイロン袋が放置されている場合
  • ビニタイルの表面に油が付着している場合


骨折しないための注意

 高齢者の骨折は治りにくいため、寝たきりや老人性痴呆の原因となることから、高齢社会においては社会問題につながる病気であるといわれている。若いうちから規則正しい生活を心がけ、環境整備に気配りする必要がある。

生活環境の整備

 骨折しないためには、まず、骨折のきっかけになる「滑る」「つまずく」「落下する」などに気をつけることが重要である。そのために、以下のことに注意しよう。

  • 階段には手すりをつける(後づけの場合、壁の強度が十分か確認すること)。薄いカーペット敷きにすると滑りにくく、もし転んでも衝撃が少ない。滑り止めは、逆につまずきの原因になることもあるので注意が必要。
  • 浴室は、入り口から浴槽まで手すりをつける。すのこやマットなどの敷物は、滑り止めのついたものを使うか、場所いっぱいに敷きつめるのがよい。
  • 住居内の照明は明るくし、影ができにくいようにする(青年期と同じ視力を得るためには、60歳では約2倍、70歳では2.6 倍の照明が必要といわれる)。
    トイレ、廊下などは夜間も暗闇にせず、小さくてもよいから明かりをつけておく。
  • ベッドは転落に備えて、幅はゆとりのあるもの、高さは腰かけて足裏が床につくくらいを目安に選ぶ。ふとんカバーは足をとられないよう全体を包むタイプのものにする。
  • そのほか、住居内の整理整頓を心がける、床は磨きすぎない・濡らしっぱなしにしない、カーペットの縁はしっかり止めたるみやめくれを作らない、などにも注意する。
  • 住宅の設計段階であれば、
    • 階段は勾配をゆるくし、途中に踊り場を設ける。
    • 2階にもトイレを設ける。
    • 浴室の床材は滑りにくいものにする。
    • 住居内の段差をなくす。
    などの配慮をする。

高齢者自身の注意点

  • 衣類は裾を踏まない長さで、裾のからまない動きやすい服にする。
  • スリッパ、サンダルなどは履かないようにする。靴は、ヒールが低く、底の滑りにくい、足に合ったひも靴、運動靴を選び、きちんと履くこと。
  • 物をまたいだり、不安定な物につかまったりしない。
  • そのほか、天気の悪いときや人混みへの外出を避ける、重いものを持たないなどを心がける。
  • 骨粗鬆症の予防のために、適度な運動や日光浴、カルシウムやビタミンDを重視した食生活を心がける。専門医のいる病院できちんとした検査、診断を受けることも大切である。



本件連絡先 情報管理部
ご相談は、お住まいの自治体の消費生活センター等にお問い合わせください。


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