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[2009年8月31日:公表]

契約をやめたいとき(3):特定商取引法による中途解約、合意による解除

『契約をやめたいとき』シリーズの3回目(最終回)は、特定商取引法によって途中で自由にやめることができる「特定継続的役務(契約期間が長期にわたる特定の6種類のサービス)」と「連鎖販売取引(マルチ取引)」、そして契約の原則に戻って、「やめるには相手の合意が必要な場合」を説明します。


ケース1:事情が変わったのでパソコン教室をやめたい−特定商取引法による特定継続的役務の中途解約

事例

 パソコン技能が向上すれば就職活動に有利と思い、パソコン教室に入学して1年分の授業料60万円を一括前払いした。しかし4カ月後に採用が決まった会社は、仕事でパソコンを使うことはないうえ、交代制勤務のため今後は教室に通えない。これまで4カ月間、教室に通ったが、やめた場合は未受講分の受講料は返してもらえるだろうか。

チェックポイント

 英会話を学ぶ、エステティックサロンで痩身コースを受けるなどの「サービス」は、事前に内容の善し悪しが判断できません。また、契約期間が長期間にわたる場合は、さまざまな理由から途中で続けられなくなることもありえます。

 特定商取引法は、継続的にサービスを受ける契約のうち特定の業種については、8日以内であれば店舗での契約であっても無条件で契約の解除(クーリング・オフ)ができるとし、また8日間を過ぎても中途解約をすることができると規定しています。中途解約ができる業種とは、エステティックサービス、外国語教室、パソコン教室、学習塾、家庭教師、結婚相手紹介サービスの6種類で、利用期間が2カ月(エステティックサービスは1カ月)以上かつ料金の総額が5万円以上の場合です。

 これらの6種類のサービスの契約で、利用期間や料金総額の条件を満たした場合、消費者の申し出によって一方的に中途解約が可能です。解約損料は、法律によってサービス利用前と利用後とでそれぞれ上限額が設けられています。サービスを受ける前に解約した場合は解約損料だけを、サービスが始まった後に解約した場合は、それまでに受けたサービスの料金にプラスして解約損料を支払うことになります(※を参照)。

 事業者は契約の前後に、契約内容を記載した書面を消費者に渡すことが義務づけられており、その書面で中途解約した際の清算方法を説明することになっています。

※ 特定継続的役務契約の解約損料の上限額
  • エステティックサービス
    サービス利用前:2万円
    サービス利用後:未使用サービス料金の1割か2万円のいずれか低い額
  • 外国語教室
    サービス利用前:1万5千円
    サービス利用後:未使用サービス料金の2割か5万円のいずれか低い額
  • パソコン教室
    サービス利用前:1万5千円
    サービス利用後:未使用サービス料金の2割か5万円のいずれか低い額
  • 学習塾
    サービス利用前:1万1千円
    サービス利用後:2万円か月謝相当額のいずれか低い額
  • 家庭教師
    サービス利用前:2万円
    サービス利用後:5万円か月謝相当額のいずれか低い額
  • 結婚相手紹介サービス
    サービス利用前:3万円
    サービス利用後:未使用サービス料金の2割か2万円のいずれか低い額

 事例の場合は、4カ月分の受講済み料金と解約損料を支払えば中途解約ができます。特定商取引法で定められたパソコン教室の解約損料の上限額は、契約金額から受講済み料金を引いた金額の2割あるいは5万円のどちらか低い金額です。返金額を計算してみましょう。

60万円[1年分の受講料(a)]−20万円[受講済み料金(b)]=40万円[未受講分の料金(c)]
40万円(c)×0.2=8万円[未受講料金の2割] > 5万円 ⇒ 解約損料は上限5万円(d)
60万円(a)−20万円(b)−上限5万円(d)=少なくとも35万円[返金額]

 上記のように、支払った1年分の受講料60万円から受講済み料金20万円と解約損料5万円を引いた35万円以上は返してもらえます。仮に、契約書の規定による解約損料が5万円を超えていたとしても、5万円を超える支払いは不要です。



ケース2:マルチ取引をやめたい−特定商取引法による連鎖販売取引の中途解約

事例

 久しぶりに会った高校時代のクラスメートから、健康食品や化粧品のネットワークビジネスをしないかと誘われた。20万円分の商品を購入して入会し、新たな会員を勧誘すれば報酬が得られる、一緒にがんばって夢をかなえようと勧められ、その気になって会員登録をした。早速活動を開始して友人・知人に声をかけたが、誰も興味を示してくれないばかりか、親友から「早くやめた方がよい」と忠告を受けた。健康食品等は3万円相当の商品を開封、使用した。契約してから2カ月になるが、解約して未使用の商品を返品したい。返金してもらえるか。

チェックポイント

 「人を誘えば収入が得られる」と言って商品等を購入させ、さらに次の販売員などを勧誘させるというかたちで販売組織を拡大していく商法は、人の組織(ネットワーク)を利用して商品を販売することから、ネットワークビジネスと呼ばれることもあります。簡単に儲かるものではないうえに人間関係を損なうこともあり、消費者被害を生みやすい商法であるため、特定商取引法で連鎖販売取引(マルチ取引)として厳しく規制されています。

 特定商取引法では、連鎖販売取引のクーリング・オフ期間を通常の8日間より長く20日間としており、その間であれば無条件で契約をやめることができます。クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合も、将来に向けていつでも契約をやめることができます。

 また、一定の条件を満たせば手元にある商品を返品することも可能です(「返品ルール」という)。その条件とは、新規契約から1年未満の解約であること、納品後90日未満で未使用の商品であることです。返品ルールにしたがって商品を返す場合、事業者は代金の1割を超える解約損料は請求できないとされています。

 事例の場合はいつでも中途解約することが可能で、新規契約から1年未満で、かつ商品は納品後90日未満での解約なので、上記の返品ルールの適用条件を満たします。したがって、購入した20万円分の商品から使用した3万円分を除く17万円分の商品を返品すれば、少なくとも17万円の9割を返してもらえます。

 返金額の詳しい計算方法は、入会時に受け取った契約書に記載してあるはずなので、まず契約書を確認してみましょう。契約書の記載内容がよくわからないとか、そもそも契約書をもらっていないなどの場合は、お住まいの自治体の消費生活センター等に問い合わせましょう。自分を誘ったクラスメートや販売会社に尋ねることは、解約を思いとどまるよう説得される恐れがあるためお勧めできません。



ケース3:店で買った商品をキャンセルしたい−民法の合意解除

事例

 A家電量販店で16万円の薄型テレビを購入し、納品日時を打ち合わせた。代金は納品時に支払うことにして店を出たが、帰宅途上にあったB家電店に立ち寄ったところ、店頭で同じ商品がセール中で1万円安く販売されていた。A店との契約をキャンセルして、B店で購入したいと思うが、可能だろうか。

チェックポイント

 ケース1とケース2では、一方的に消費者が契約をやめられる場合を紹介しましたが、これらは特定商取引法の規定によって中途解約が認められる特別な場合です。本来、契約とは、「申込」と「承諾」の2つの意思表示が合致することで成立し、いったん成立したら一方的にやめることはできないのが大原則です。このシリーズの2回目(債務不履行、クーリング・オフ、請負契約の中途解約)で解説した請負契約のように、契約の性質によって例外的に解約が可能な場合もありますが、ほとんどの契約は当事者双方がそれぞれ約束した内容をきちんと実行することが前提とされています。

 したがって、いったん成立した契約をやめるためには、相手が約束を守ってくれないなど、このシリーズの1回目(契約の不成立、無効、取消し)でお伝えしたような理由が必要です。理由がない場合は、契約の相手方が同意した場合に限られます。
 つまり、相手が「うん」と言ってくれない場合はやめることはできないのです。

 事例の場合、A店がキャンセルを認めるかどうかはA店の判断にゆだねられています。A店がキャンセルに応じない場合は、契約をやめることはできません。A店と消費者はそれぞれ契約に基づく義務を果たす、すなわちA店は消費者に商品を届け、消費者はA店に代金を支払うことになります。

 一方、A店が一定の解約損料の支払いを条件にキャンセルに応じる場合もあります。その場合、消費者とA店が損料の金額について合意すれば、合意解除が成立します。たとえば、A店が「5千円の損料でキャンセルを受ける」と言った場合、消費者はA店に5千円を支払ってもB店で1万円安くテレビが買えるので、両者は合意するでしょう。このように、契約当事者の合意によって契約が解除されることを合意解除と言います。



参考法令

特定商取引法48から49条、40条から40条の2、民法1条2項



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