高齢になると骨、筋肉、内臓などが老化して衰えるため、転んで骨を折ったり食べ物をのどに詰まらせたり、 といったさまざまな事故にあいやすくなる傾向があります。 階段や脚立からの転落、敷居や浴室、床での転倒、浴室の湯や衣服に火がついてのやけど、 また、入浴中の溺死や食べ物をのどに詰まらせる窒息事故も高齢者に多い事故です。
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高齢になると重い症状に
高齢者の家庭内事故4,176件のうち、軽症は76.8%、中等症19.7%、重症・重篤症2.4%、死亡1.1%でした。20歳以上65歳未満では、軽症88.3%、中等症10.7%、重症・重篤症0.8%、死亡0.1%で、これと比べると中等症以上の重い症状の割合が高いことがわかります。また、高齢者のうち前期高齢者(65歳以上75歳未満)より後期高齢者(75歳以上)のほうが重い症状の割合が高くなります(図)。
※1997年度〜2002年度(2003年3月31日まで)に国民生活センター危害情報システムへ全国20の病院から寄せられた情報の集計結果です。
高齢者ほど骨折する割合が高い
打ち身が1,620件でいちばん多く、次いで骨折793件、刺し傷・切り傷713件、やけど530件の順で並びます。20歳以上65歳未満と比べると、骨折の割合が高くなり、また、高齢者のなかでは、後期高齢者のほうが高くなります。
軽症では打ち身、刺し傷・切り傷の順になりますが、中等症や重症・重篤症では骨折、次いでやけどが上位に、死亡の場合はやけど、次いで溺死が上位になりました。
死亡事故の特徴
死亡事故は、20歳以上65歳未満が12件だったのに対し、高齢者は46件でした。
高齢者の死亡事故のなかでいちばん多いのはやけど15件で、その内訳はろうそくやタバコなどの火が衣類に燃え移ったことによるやけど11件でした。残り4件は風呂の湯によるやけどです。
この他、浴室での溺死13件、もちなどをのどに詰まらせた窒息事故9件などがありました。
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住宅を構成する設備での事故
身の回りの生活用品での事故
CASE1
入浴中、水面に顔をつけて倒れていた。家族が発見し救急車で病院に運んだが、その約40分後に死亡。
(後期高齢者 男性)
CASE1
老夫婦でもちを食べていて、夫がもちを詰まらせ窒息し突然転倒。救急車で病院へ運んだが死亡。
(後期高齢者 男性)
CASE2
腰痛があり、足もとが少々不自由であった。入浴しようとしたところ、タイル床の風呂場ですべって転び、後頭部を打ち脳挫傷。
(前期高齢者 男性)
CASE2
袋戸棚にある家庭用品を整理するため、座敷用のアルミ製はしごに乗ったところ、バランスを失ってすべり落ち、足を大きく切った。
(前期高齢者 女性)
CASE3
自宅の2階より階段を降りようとして転落。1時間後家族に発見されて救急車で病院へ。大腿骨骨折、頭部打撲。
(後期高齢者 女性)
CASE3
パジャマの上にセーターを着て台所でお湯を沸かしていたところ、衣服に火が移ったのに気づかず、右半身に2度のやけどを負った。股関節が不自由なため脱衣に時間がかかり、そのためにやけどが広がったのではないかと思われる。
(後期高齢者 女性)
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コラム
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住宅を構成する設備での事故防止
(1)転倒・転落事故を防止する
「段差」をなくしましょう。玄関では、段差を小さくするための式台を置くとよいでしょう。
階段、廊下、玄関、浴室などに「手すり」を設けましょう。
階段、廊下、玄関などに「明るい照明」をつけましょう。
床や階段などにつまずきそうな物を置かないようにしましょう。
すべりやすい靴下やスリッパは履かないようにしましょう。
(2)浴室での溺死、やけど事故を防止する
心臓などに負担をかけないために家族が入浴した後やシャワーで給湯して浴室を暖めてから入浴し、 また冬場は脱衣場を暖房して脱衣場と浴室の温度差を減らしましょう。
給湯やシャワーの湯温が熱くなりすぎないようにしましょう。
身の回りの生活用品での事故防止
(1)衣類に着火する事故を防止する
生地のそでやすそが広がった衣類は、火がついても気づきにくいので注意を。火がついても燃え広がりにくい防炎性のパジャマ、エプロンなどを使うとよいでしょう。
(2)窒息事故を防止する
食事の際は、お茶や水を飲んでのどを湿らせてから少しずつ、ゆっくりよくかんで食べましょう。もちなど粘りのある食品を食べる場合は小さく切りましょう。また、食べているときに話しかけるなどしてあわてて飲み込まないように気をつけましょう。
(3)もの選びの工夫
高齢者向けの安全性の高いもの、使いやすく工夫されたユニバーサルデザインのものを選びましょう。
健康管理での事故防止
関節は動かさないでいるとこわばってかたまってしまうので、日ごろから体を動かすことを心がけ、自分で動かせない場合は、周囲の人が手首、ひじ、膝、肩、股関節などを動かしてあげるとよいでしょう。また、保健所や市町村保健センターなどで行われる運動指導や機能訓練などに参加して積極的に健康増進をはかるのもよいでしょう。
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専門医の見解
1 高齢者の身体機能の特徴
程度の差はありますが、高齢になると骨、筋肉、内臓、感覚器などさまざまな部分が老化して衰えていきます。転倒したときに手をついて手首を骨折、または大腿骨の付け根を骨折、尻もちをついたときなどの背骨の圧迫骨折などが高齢者の骨折の主なものです。この他、皮膚や皮下脂肪が薄くなり、血管ももろくなるためやけどや打ち身を負った場合に重い症状になる傾向があります。またかむ力、飲み込む力が低下するために、窒息事故が起きたり、脳や心臓の老化から、急な温度変化などにより脳いっ血、心筋梗塞などの発作が起きて浴槽での溺死に至ることもあります。
2 事故にあうと回復しにくいことも
入院したり手術したりすると体を動かすことが制約されます。この後、高齢者はそれ以前に比べて日常の生活や動作が不自由になることが多く、若い人に比べると回復しにくいといえます。他の病気などが原因で手術ができない場合、治るまでにより長い時間がかかるため合併症を併発し死に至ることもあります。
2003年7月発行「くらしの危険No.263」より