体の不自由な人が足代わりに使う車いすによる事故が、 国民生活センター危害情報システムに寄せられています。 多くは転倒事故ですが、車いすを利用している人は 危険を避けるのが難しいこともあり、事故にあった場合には 大きなけがにつながりかねません。
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コラム
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70歳以上が半数を占めている
1991年4月から2001年9月末までに、車いすでけがをしたという情報は72件ありました。このうち、電動車いすの情報は11件です。
けがをした人は、80歳代が19件、70歳代が11件、90歳以上が10件で、70歳以上が40件と半数を占めています。
頭部へのけがが多い
けがの内容は、「打ち身・すり傷」が46件で最も多く、次に「骨折」が14件でした。その次に「刺し傷・切り傷」が7件と続きます。
けがをした部位は、「頭や顔」が30件、次いで「足」15件、「手や腕」14件でした。
転倒したり転落してのけがが大部分
けがをしたきっかけは、72件中「転倒・転落」が55件で大部分を占め、このほか「切る・刺す」「挟む」が各5件と続きます。
けがをしたときの状況がわかるものについて分類すると、車いすから立ち上がったりベッドに移ったりするとき、または車いすに座ろうとするときなどに「バランスを崩す」が14件、次いで「車いすの不具合」が10件、「坂や段差での事故」が9件でした。
車いすの種類
車いすには、手動車いすと電動車いすとがあります。 また、車いすに乗る人(利用者)の身体や 機能に合わせて作るもの(オーダーメイド)と 標準型といわれる既製品にも分けられます。
車いすの規格・基準
車いすのうち、標準型については、性能や構造についての日本工業規格(JIS)が設けられて、さらに、電動車いすについては電磁波妨害による暴走等の事故についての対策のためのJISも設けられています。一方、手動車いすの中には、(財)製品安全協会が認定したSGマーク付きのものもあります。SGマークがついている商品が原因で人身事故が起きた場合、1人最高1億円が補償される制度があります。
事故情報と今回のアンケートでは、この規格や基準で触れられていない車いすの重量について、また車輪・ブレーキなどの部分について操作しやすくしてほしい、快適に使いたい、などのさまざまな声が寄せられていました。
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CASE1
手動車いす
利用者自身が操作
車いすに乗っていて、 少し高いところの物を取ろうとして立ったときに、 ブレーキをかけていなかったため前にのめり、 転んで家具に頭をぶつけ骨折した。
(1998年 70歳代男性)
CASE2
手動車いす
介助者が操作
トイレに立つ際、足置きを左右に上げて縦にし、 手すりを持って立ち上がった。 ふくらはぎの皮膚が足置きの段差にひっかかっており、 それを気づかず介護する人が車いすを引いたところ、 皮膚がひっぱられ縦に7〜8センチ切れた。足置きの裏のすべりが悪い。
(1999年 80歳代女性)
CASE3
手動車いす
環境が要因
車いすに乗っていて、 台所の段差で転倒して車いすから落ち、 足を折り入院した。
(2000年 80歳代女性)
CASE4
電動車いす
電動車いすで歩道の路肩に乗ろうとして、 後ろにひっくり返り頭蓋内損傷を負い、1ヵ月入院した。
(1998年 40歳代男性)
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車いすを選ぶとき
安定性のよい、利用者の疾病・障害に合った車いすを選ぶ
事故を避けるために、安定性がよく、利用者の疾病・障害に合った車いすを選ぶことが大切です。その際、各自治体の福祉機器(用具)展示場や高齢者総合相談センターなどの専門機関に、制度についても含めて相談したり、事業者に使い方や装置について説明を求めたり試乗するなどして情報を集めましょう。
車いすを利用するとき
転落事故に気をつけて
バランスを崩すことが転倒・転落に結びつくため、姿勢や車いすの位置など、バランスが悪い状態にならないよう気をつけましょう。また、利用者自身が操作するほうが、介助者が操作するときより事故が多いので、利用者が操作する場合は、特に転倒・転落事故を防ぐことができるような注意やくふうが必要です。
乗り降りするとき
車いすの乗り降り時に、バランスを崩したり、足置きに引っかかるなどして事故や危険にあっています。乗り降り時などには足置きがじゃまになることもあるので、足置きの位置などに注意しましょう。
坂や段差を通るとき
坂や段差は、平らな場所に比べバランスを崩しやすいので、このような場所を通るときには細心の注意をしましょう。
車いす利用者以外の人へ
車いす利用者は、自動車や歩行者などの行動でも危険な思いをしていることがわかったので、周囲の人は、利用者の安全性に十分に配慮した行動をとりましょう。
業界への要望
●使いやすく安全な車いすの構造を望みます。
●車いすを選ぶために、試乗体験や商品の説明などの情報を多く提供することを望みます。
行政への要望
●車いすの規格や基準について、見直しや検討をすることを望みます。
●道路や施設などの環境整備を望みます。
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手動車いすに乗っている人に安全性について聞きました
国民生活センターでは危害情報協力病院の協力を得て、日常的に車いすを利用している人を対象として車いすの安全性に関するアンケートを実施しました。155件の回答が寄せられ、このうち手動車いすを利用している人は142人でした。この手動車いす利用者から寄せられた安全性に関する意見をまとめました。
ほとんどの人が何らかの危害や危険を経験
手動車いす利用者142人中、車いすで何らかの危害や危険(※1)を経験していたのは124人に上っていました。(※1 危害:何らかのけがをしたもの、危険:危害には至っていないがそのおそれのあるもの) 「利用者が車いすから落ちたことがある」という回答は36人で、4人に1人が転落した経験がありました。介助者が操作する場合に比べ、利用者自身が操作するほうが転落の経験が多いようです。
半数は車いすに要因がある事故にあっている
「車いすに要因があると考えられる危害や危険を経験したことがある」と答えた人は72人で、そのうち多かったのは「足置き(フットレスト)に引っかかったり、つまずいたりしたことがある」という答えです。
また、「利用者の腕や服などが、車輪にすれたり、からまったりしたことがある」と答えた人は42人、「車いすの足置きやブレーキなどの部分で利用者の体を挟んだり、切ったり、刺したりしたことがある」と答えたのは15人でした。
道路など環境に要因があると考えられる事故にあった人は7割以上
(↓クリックで拡大表示)
「道路や施設・設備などの環境に要因があると考えられる危害や危険を経験したことがある」と答えた人は108人で7割を超えています。「坂・段差で危ないと思ったことがある」と答えたのは91人、「道路や床の溝・さんなどのすき間に車輪がはまったことがある」と答えたのは73人でした。
選ぶときの情報不足、周囲の人の配慮に対しても意見が
このほか、車いすについていろいろな意見を聞いたところ、たくさんの声が寄せられました。車いすの重さや構造についての不満や、道路や交通施設、公共施設などの生活環境に対する不満も多く、さらに車いすを選ぶときの情報が少ないという意見もあり、これらについての改善を急ぐとともに、車いす利用者に対して道をゆずるなど、周囲の人にもっと気を配ってほしいという声もありました。
2001年11月発行「くらしの危険No.251」より