スチーム式加湿器で乳幼児が重いやけど

 ストーブの上で煮えたぎり白い蒸気を噴き出すやかんは、だれもがやけどの危険を感じて注意するでしょう。でも、プラスチックのスマートな加湿器は、白い蒸気を噴き出していてもあまり注意しない人が多いようです。
 エアコンなど電気暖房の増加に伴って、乾燥しがちな室内を快適湿度に保ち、インフルエンザ対策にも効果があるといわれて、加湿器は急速に普及してきました。しかし、噴き出す蒸気に手を当てたり、倒して熱湯がかかったりしてやけどをした事故が起きており、子どものいる家庭では特に注意が必要です。


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特徴
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深いやけどが多く、
皮膚移植する例も
 スチーム式加湿器(スチームファン式を含む)によるやけどは、国民生活センターに1990年4月から2000年12月までに32件寄せられています。 そのうち30件が就学前の子どもで、なかでも0歳から3歳までの子どもが28件とほとんどを占めます。
 やけどの程度(深さ)は、一般に1度から3度*までに分けられますが、加湿器によるやけどは2度が多く、 最も重い3度もあります。入院を要した事例の中には皮膚移植をした重症例が数件含まれています。 やけどの部位は手が半数、ほかは足、腕、顔などです。

*やけどの深さ
1度: 皮膚が赤くなりひりひりする。2〜3日で治り、あとも残らない。
2度: 皮膚の下の真皮まで傷つき、水疱ができ激しい痛みがある。浅い2度なら2週間くらいで治るが、深い2度は治るまでに1ヶ月くらいかかり、あとになることが多い。
3度: 皮下組織や筋肉まで傷ついており、茶褐色の皮状に見える。痛いというよりしびれる感じで、ひどいあとが残り、植皮手術をすることもある。

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実例
蒸気によるやけど

 加湿器の蒸気噴き出し口に手を乗せたり指を入れた、蒸気が顔や足に当たってしまったなどで、0歳児に多く起きています。
1歳前後は、いろいろなものに興味を持ち、危険の認識がないので、蒸気を触ろうとするのもよくあることです。
CASE1
10ヶ月の男児

加湿器に指で触り、人差し指、中指、薬指の3本に重いやけどを負った。 1ヶ月間治療し、さらに皮膚移植が必要で1年後に手術する予定である。 噴き出し口付近は湯沸しポットのように熱く、注意表示はあるものの危険すぎると思う。
(2000年1月)
CASE2
11ヶ月の女児

加湿器の蒸気噴き出し口に左手を突っ込んでやけどをした。指が白く変色して治療に1ヶ月近くかかった。
(2000年1月)
熱湯によるやけど

 ぶつかったりコードを引っかけたりして加湿器を倒し、器内の熱湯がかかったもので、 乳児よりは行動が活発になってきた1歳以上の割合が多くなっています。
CASE1
8ヶ月の男児

ハイハイして加湿器に近づき、左手で倒したため、湯がこぼれて手にかかり、2度のやけどを負った。
(1997年2月)
CASE2
3歳の女児

蒸気でやけどをしないよう加湿器を1mほどの高さの電話台に乗せていた。 子どもが遊んでいてコードを引っかけたため、加湿器が倒れてふたがはずれ、顔から全身に熱湯をかぶった。 重症で背中などに皮膚移植を受けた。
(1998年1月)


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対策
その1
重いやけど事故が、
乳幼児に多く起きています
 乳幼児は、皮膚の厚さが大人の半分以下と大変薄いので、同じ熱量でも大人の倍以上の深いやけどになります。
 スチーム式加湿器を使用している家庭では十分注意し、乳幼児のいる家庭では、安全を優先して使わないようにしましょう。
 最近は、いわゆるハイブリッド式といわれる新型も出ていますが、中には、加湿器内に熱湯があるものもあります。注意が必要です。


その2
電気炊飯器や電気ポットにも気をつけて
 蒸気による乳幼児のやけど事故が多い家電製品には、ほかに電気炊飯器、電気ポットがあります。加湿器同様、注意が必要です。


事業者への要望
 スチーム式加湿器で、乳幼児に重いやけど事故が起きているので、 消費者に、より具体的に危険性を知らせるとともに、安全な商品の開発に努めてください。



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コラム
蒸気温度や水温をテストしました
 乳幼児がやけどを負ったスチーム式加湿器4台の、噴き出し蒸気温度と加湿器内の湯温を調べました。
 蒸気温度は、4台の差はあるものの高いものでは、噴き出し口直近で100℃近く、3cm離れた位置でも90℃近くありました。
 また、加湿器を倒した場合、ふたがはずれ10秒間で加湿器内のほとんどの水が流れ出ました。加湿器内部は水槽部分と蒸発皿部分があり、水槽部分の水温は問題ありませんが、蒸発皿部分は沸騰状態でした。 加湿器が倒れた方向によっては、熱湯が先に流れ出すおそれがあります。
 テスト結果から、蒸気でも倒したときの熱湯でもやけどをするおそれがあるといえます。
 
加湿器の蒸気によるやけどについて(専門医の見解)
 これまでに、スチーム式加湿器の蒸気によるやけどを6例治療しました。7ヶ月から1歳7ヶ月の乳幼児で、すべて手指のやけど、3例は瘢痕拘縮はんこんこうしゅくで植皮手術を行いました。瘢痕拘縮とは指がくっついてしまい、伸ばせなくなる状態です。
 加湿器の蒸気によるやけどは深いやけどになる例が多く、植皮手術により指は伸ばせるようにできますが、皮膚の色や状態はもとどおりにはなりません。
 保護者は皆「まさか加湿器でやけどをするとは思わなかった」と、乳幼児の手の届く範囲に加湿器を置いており、蒸気に触ってやけどをしたものです。中には、祖母の目の前で蒸気に触って、皮膚移植を要する深いやけどを負った例もあります。祖母は加湿器から出る蒸気を、超音波式の冷たいものだと思っていたそうです。
 スチーム式加湿器でのやけどの危険性は、あまり知られていません。噴き出し蒸気の温度を低くしたとされるスチームファン式が、最近は多いようですが、それでも蒸気は60℃前後からもっと高温のものもあるといわれ、やけどの危険があります。

指が伸びない状態(瘢痕拘縮)

●10ヵ月女児の症例で、手術により指は伸びるようになりましたが、鼠径部(そけいぶ 太もも付け根の内側)の皮膚を移植したため色調の違いがあります。
(札幌医科大学形成外科医 本間賢一先生より提供)

2001年2月発行「くらしの危険No.244」より