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[2018年9月26日:掲載]

新しく上場するという仮想通貨のトラブル

近々上場する新しい仮想通貨を購入すれば、別の仮想通貨と交換することも上場後の値上がりも見込めると言われたが、実際は説明と異なっていた事例を紹介する。

相談内容

 知人から「新しい仮想通貨(Aコイン)が来月には上場*1されるので、今、購入しておけば将来値上がりして儲(もう)かる」という勧誘を受けた。説明では「スマートフォンに海外にある仮想通貨交換業者のアプリを入れ、自分のアカウントを取得してウォレット*2を持てば、そこにAコインが入る。もし、上場されなければ契約先となる事業者(以下、事業者)が買い取るのでリスクはない」ということだったので計500万円を支払った。

 その後、海外にある仮想通貨交換業者のアプリをスマートフォンに入れ、アカウントを作成した。アプリを開くとAコインがウォレットに入っているような表示が出る。しかし、Aコインは仮想通貨Bと交換できると言われていたのに、交換しようとしてもできない。

 Aコインが上場しているのかどうか分からないし、当初の話と違う。事業者に全額返金を求めているが「買い取ってくれる人を探している」などと言って引き延ばされている。

(40歳代 男性 給与生活者)

  1. *1 仮想通貨が交換所や取引所で売買・交換できるようになること
  2. *2 仮想通貨を保管する場所のこと

結果概要

 相談を受け付けた消費生活センター(以下、受付センター)が、事業者とやり取りをしたところ、相談者に一部金額が返金されたが、これ以上の話し合いは困難な状況になっているとのことであった。そこで、受付センターから、国民生活センター(以下、当センター)の経由相談窓口に相談があり、Aコインについて不明な点が多いことから、当センターではその点を事業者に確認するため、受付センターと本件について共同して処理することとした。

 当センターでは、受付センターが実施した契約内容やAコインの状況に関する聴き取りの結果を踏まえつつ「Aコインは仮想通貨なのか」「Aコインは仮想通貨Bと交換できるのか」「Aコインの上場予定」などについて確認を行った。

 事業者は、Aコインはあくまでも消費者からお金を借りた担保としてのトークン(証票)であって、資金決済に関する法律(以下、資金決済法)に規定されている仮想通貨ではないと主張し、上場予定についてはあいまいな回答であった。この回答に対し当センターより、Aコインが資金決済法上の仮想通貨に該当する可能性を指摘したところ、その可能性については認め、あくまでも借りた金銭を返済するという名目で残金を返すことに応じた。また返金処理に伴って事業者から付与されていたAコインを消費者から返還する処理も完了したため、相談終了とした。

問題点

Aコインについて

 事業者は、Aコインはトークンであり仮想通貨ではないと主張したが、トークンと称していたとしても仮想通貨に該当する場合がある。

 具体的には、本件において事業者は「Aコインは仮想通貨Bと交換できる」と標榜(ひょうぼう)していたが、仮にそれが事実であれば、Aコインは1号仮想通貨*3である仮想通貨Bと交換できる2号仮想通貨*4に該当する可能性があり、Aコインはトークンにすぎないと主張していたとしても、資金決済法における仮想通貨にAコインが該当する可能性が生じることとなる。

 なお、トークンが資金決済法における仮想通貨に該当する場合、当該トークン発行者が仮想通貨に該当するトークンの売買や他の仮想通貨との交換を業として行う場合には、仮想通貨交換業の登録を受ける必要があるが*5、本件において事業者が仮想通貨交換業の登録を受けている事実は確認できなかった。

海外の仮想通貨交換業者について

 金融庁の「事務ガイドライン*6」によると、海外の事業者の場合であっても、日本国内において仮想通貨交換業に係(かか)る取引を行う場合には、資金決済法に基づく仮想通貨交換業の登録が必要となる。また、海外の事業者が国外で仮想通貨交換業の登録と同種類の登録を受けている場合(資金決済法に規定する外国仮想通貨交換業者*7)であっても、原則として、外国仮想通貨交換業者は、国内において仮想通貨交換業の登録を受けずに仮想通貨の売買や交換等の勧誘を行ってはならないとされており*8、この勧誘行為にはウェブサイト上への広告掲載も原則として「勧誘」に該当するとされている。

トークンを利用した資金調達について

 一般に企業や団体がプロジェクトに係る資金を調達するために、仮想通貨や法定通貨と引き換えに電子的なトークンを分配する手法をICO(Initial Coin Offering)*9という。ICOにおいて発行されるトークンにはさまざまな性質のものがあるといわれ、トークン自体を売買することや、トークンと仮想通貨とを交換することが可能な場合が多いとされており、本事例も結果としてICOによる資金調達とみることも可能である。

まとめ

 本件においては、Aコインの法律上の仮想通貨該当性や事業者の仮想通貨交換業の登録の有無といった資金決済法に関連する問題点以外にも、実質的に事業者が投資を募っているとの見方もできることから、金融商品取引法上の集団投資スキームへの該当性についても検討する余地がある。また、勧誘時に「Aコインが上場しなければ買い取る」などと、あたかも元本保証のような説明をしていることなどから、出資法の観点からの検討も可能となる。それゆえ、本件のようなICO に関連する事例においては、資金決済法や同法関連のガイドラインだけではなく、金融商品取引法をはじめとする他の金融関係法規についても検討する余地がある。

  1. *3 資金決済法第2条第5項第1号に規定される仮想通貨。代価の弁済に使用できる仮想通貨
  2. *4 資金決済法第2条第5項第2号に規定される仮想通貨。1号仮想通貨と交換ができる仮想通貨
  3. *5 資金決済法第63条の2
  4. *6 金融庁 事務ガイドライン「第三分冊(金融会社関係)16.仮想通貨交換業者関係」[PDF形式]参照
  5. *7 資金決済法第2条第9項
  6. *8 資金決済法第63条の22
  7. *9 金融庁「ICOについて〜利用者及び事業者に対する注意喚起〜」[PDF形式](2017年10月27日)

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ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。