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[2018年5月28日:掲載]

銀行窓口で契約した外貨建て生命保険のトラブル

銀行窓口で販売されている生命保険に関するトラブルについて、近年見受けられる外貨建て生命保険の相談事例を紹介する。

相談内容

 銀行の窓口で500万円を定期預金にしてほしいと伝えお金を渡した。その際に窓口の職員から「普通預金口座に入れておくので、来週もう一度来てほしい」と言われたので、次回定期預金の書類を渡してもらえると思っていた。

 翌週、銀行に出向いたら別室に案内され、銀行の職員などから何やら勧誘を受けた。定期預金の書類を受け取りに来ただけなのに、どうして勧誘をするのかと不思議に思ったが、差し出された書面に署名し押印した。

 帰宅後、資料を見た家族から「外貨建ての終身保険契約をしたことになっている」と言われて驚いた。また、クーリング・オフをすれば契約をやめることができると聞き、投資経験もなく投資性の強い生命保険の契約をするつもりはないので、すぐにクーリング・オフの手続きをした。しかし、クーリング・オフをした後、返金は支払った500万円ではなく外国通貨で行われるため、今その外国通貨を日本円に替えると外貨交換の手数料に加えて為替差損分の損失が出るという説明が保険会社からあった。納得できない。

(契約当事者:70歳代 男性 無職)

結果概要

 国民生活センター(以下、当センター)では、生命保険の勧誘や契約が適正に行われたかどうか確認するため、(1)本件契約は、契約当事者の投資経験や金融資産の状況から商品のリスク性が高く適合性の原則に反するのではないか、(2)本人の意向確認が適正に行われたか、フィデューシャリー・デューティー(*1)の観点から本当に今回の契約が契約当事者にとって適したものであったのか、などについて確認を行った。

 生命保険を販売した銀行は「本事案の経緯は保険会社に伝え、保険会社から『クーリング・オフ時の返金が外国通貨でされることは説明されているので問題ない』との見解を得ている」と話し、「この種の手続きは業界団体のADR(*2)でお願いしたい」と主張した。当センターからは「ADRの前に消費者の負担が少ない当センターのあっせんで話し合ってもらいたい」と依頼し、銀行に対してあっせんの意義を説明するとともに、合意点を見つけるための話し合いを続けた。

 しかし、銀行からの回答は「生命保険の勧誘・説明等に問題はなく、お客様の商品理解度、意向把握、説明義務、高齢者対応、適合性のいずれにも問題はない。当方の認識とお客様の申し出との内容が大きくかい離していることは遺憾である」という内容であった。

 当センターは銀行によるさらなる調査等を踏まえた話し合いが必要だと考えた。しかし、当センターから契約当事者に銀行からの回答内容を伝えたところ、「銀行の回答に納得はできないが、交渉が長引くのは望まない。今は日本円に替えると損失が大きいので、しばらく為替レートの状況をみて、日本円に交換する」という意向であったため、本件相談を終了とした。

  1. *1 金融商品の開発、販売、運用、管理について、真に顧客のために行動する金融機関の役割や責任全般を指す(例:投資経験の浅い顧客に投資信託を提案する際、金融機関が手数料の高い商品ばかり勧めずに顧客のニーズに合った商品の説明・提供をすること)。
  2. *2 裁判外紛争解決手続

問題点

生命保険の銀行窓販トラブルの特徴

 銀行窓口では、生命保険の販売が行われている。しかし、消費者はそのことを知らず「預金と思って契約した」「生命保険の契約とは知らなかった」とトラブルになる場合がみられる。また、最近は外貨建ての生命保険の販売が主流となっていることもあり、外貨建て生命保険に特有のトラブルも生じている(*3)。

本件における問題点の整理

消費者が契約内容を理解していない

 銀行が生命保険を販売する際には、消費者が生命保険の内容を理解しその適否を判断するための情報提供義務や、消費者のニーズを把握しそれに合った商品を提案する意向把握・意向確認義務など、保険業法上の規定を順守しなければならない。しかし、本件では契約当事者が家族に指摘されるまで生命保険の契約をしていることを認識していなかった。

クーリング・オフをしても元に戻らない

 外貨建て生命保険の場合、生命保険契約をクーリング・オフした場合でも、消費者の手元には外国通貨で返されるケースがある。本件でもクーリング・オフの後に契約当事者には外国通貨で返金されており、結果として契約当事者に為替差損が生じる状態となっている。

まとめ

 低金利の時代が続くなか、銀行での預貯金よりも有利な資産運用方法などとして、銀行から生命保険商品を勧められることがある。しかし、銀行で生命保険を勧められ関心を持ったとしても、その契約に当たっては、預貯金ではない商品であることを認識したうえで、少なくとも次の点に留意する必要がある。

契約内容の理解

 勧められてもすぐに契約はせず、生命保険の内容が本人や家族にとって本当に必要なものなのかを冷静に検討する機会を設けることが重要である。契約の内容がよく分からない場合は、署名、押印をしないことも選択肢として考慮することが必要である。なお、高齢者の場合は、家族などと一緒に説明を受けることでトラブルを避けられることもある。

契約に伴うリスクの確認

 生命保険の種類によっては、運用実績により、保険金などの受取金額が支払った保険料を下回る場合がある。また、外貨建ての生命保険の場合は、事例のように通貨交換の際の手数料の負担や、為替レートの状況によっては損失が生じる可能性もある。契約している生命保険にはどのようなリスクがあるか確認することが重要となる。

  1. *3 国民生活センター「保険商品の銀行窓口販売の全面解禁から10年を迎えて−新たに外貨建て保険のトラブルも−」(2017年12月21日)

ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。