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[2017年12月20日:掲載]

キャンペーンの条件として高齢者に不必要な契約をさせた携帯電話会社

高齢者に高額なキャッシュバックの条件として通信契約を5回線契約させた事例について、スマートフォンの契約等に関するガイドラインも併せて紹介する。

相談内容

 数日前に70歳代の母がスマートフォンの契約先を変えようと思い、携帯電話会社の店舗に行ったところ、「2回線契約すると安くなる」と案内された。初めは断っていたが、店員に強く勧められ、1回線のみ契約する場合とあまり差がなかったので2回線を契約した。契約書にサインする際に、さらに「合計5回線契約するとキャッシュバックが増額されるキャンペーン中である。MNP(番号ポータビリティ)で乗り換える回線以外の4回線はSIMカードだけの契約でよい。契約期間の拘束はあるが、半年後に解約して違約金を払ってもキャッシュバックは残る」と言われた。2、3回断ったが、しつこく勧誘され、結局合計5回線を契約してしまった。キャッシュバックはインターネット上でしか使えない電子マネーで渡すと言われた。母はインターネット通販をしないので、実店舗で現金に換金できないと困ると伝えたところ、「クーポンに変えれば、実店舗で換金できる」と言われた。ところが、帰宅後にキャッシュバックのしくみを確認したところ、クーポンは実店舗で現金に換金できないと分かった。店員の説明は間違っているし、やはり5回線もの通信サービスの契約は必要ないので、4回線分の通信契約を解約したい。

(相談者:40歳代 女性 給与生活者/契約当事者:70歳代 女性 家事従事者)

結果概要

 相談を受け付けた国民生活センター(以下、当センター)は相談者である契約当時者の娘から詳細な経緯を聴き取り、契約内容等を確認した。今回、販売店は「キャッシュバック」として渡す電子マネーをクーポンにすれば現金に換金できると契約当時者に案内していたが、実際は現金への換金はできないものであった。

 そこで、当センターは、販売店に対して、高齢者である母親には不必要な回線数の契約であること、契約の動機となったキャッシュバックについて、現金に換金できると不実の内容を告げていることから、不要な4回線分について、費用負担なく解約してほしい旨を申し出るように相談者に助言した。

 相談者が販売店に申し出たところ、当初は4回線分の通常解約の違約金を請求されたが、「通常解約ではなく、販売店の問題のある勧誘により契約してしまったので、初めから契約がなかったことにしてほしい」と再度伝えて検討を依頼した結果、違約金を含め、費用負担なしで4回線分の解約になった。

 当センターは相談者に対し、本件について今後も請求が来たり、不審に思う点が出たりした場合には、速やかに当センターに連絡するように伝え、相談を終了した。

問題点

勧誘について

 携帯電話等の電気通信サービスは、電気通信事業法の対象である。同法の施行規則22条の2の3第4項および消費者保護ルールに関するガイドライン(*1)では、通信サービスを提供する携帯電話会社等の電気通信事業者等は、利用者(契約者)の知識および経験並びに契約締結の目的に照らして、利用者に理解されるために必要な方法および程度で提供条件の概要を説明しなければならないとされている(適合性の原則)。また、同法27条の2第2号では、利用者(契約者)が通信サービスを契約しない旨の意思、あるいは勧誘を引き続き受けることを希望しない意思を示した場合、その通信サービスについての勧誘を続けることを禁止している(勧誘継続行為の禁止)。本件は5回線の契約について複数回断っている70歳代の契約当時者に対して、実質不要と思われる回線数を案内して契約させている点について、契約当時者の利用実態や意思に即した契約であったとは考えにくい。

キャッシュバックについて

 また、本件では契約の動機づけとしてキャッシュバックを用いている。スマートフォンを契約する際に、販売店が現金でのキャッシュバックや、本件のように現金以外の商品券、ポイント等を消費者に還元するケースがある。スマートフォンの端末購入補助を目的としたキャッシュバック等については、ガイドライン(*2)において、携帯電話会社が通信料金や端末代金に対する割引や、実質的に端末代金の代価と考え得る金銭その他の物品等を契約者に提供する場合は、端末を購入しない利用者との間で著しい不公正を生じないように、端末の調達費用や関連する下取り価格等と照らして、契約者に合理的な額の負担を求めることが適当とされている。

 ただし、同ガイドラインは携帯電話端末と通信サービスをセットで契約する場合に対象とされ、本件のように端末購入をしない通信サービス契約単体の場合は同ガイドラインの対象ではない。しかし、本件の契約の動機となったキャッシュバックに関して、現金に換金できるという誤った説明がなされていたことは問題であった。

 このことを踏まえ、場合によっては当センターがあっせんに入ることも想定しつつ、相談者が自主交渉したところ、全額返金となった。

 本件のように当初希望していた契約に加え、オプションや追加の通信サービス契約等に関する相談がみられる。例えば、月額料金を少しでも安くしたいと思い、広告を見て来店した高齢者に対して、スマートフォンの契約に加え、タブレット端末の契約や、それぞれの端末に複数の不必要なオプションを契約させ、結果として月額料金が従来より大幅に上回ることになった事例においては、相談者の意に反した契約であったため全面解約および全額返金となった。最近では、利用明細をウェブサイト等で確認する方法が一般的になっており、特にインターネットに慣れていない高齢者にとっては、実際の月額料金がいくらになっているのか気づきにくい場合もある。契約する際には、キャッシュバックの有無にかかわらず、月額料金や、解約時の違約金等が発生するかどうかも十分確認して慎重に検討することが重要である。

 一方、随時実施されるキャンペーン等の複雑な料金割引のしくみや通信契約と同時に勧誘されるオプションの契約条件は消費者にとって大変分かりにくい。そのため、携帯電話事業者や販売店には、キャッシュバックの時期や方法、無料期間の終了時期等も含め契約内容に関して、電気通信事業法やガイドライン等の遵守(じゅんしゅ)に加え、よりいっそうの丁寧な説明を求めたい。

  1. *1 総務省 電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン(平成29年9月最終改定)
  2. *2 総務省 モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針(平成29年1月10日策定)内「Ⅱ スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」

ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。