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[2017年7月27日:掲載]

熊本地震で転倒し、壊れてしまった自然冷媒ヒートポンプ給湯器

熊本地震によって転倒した自然冷媒ヒートポンプ給湯器について、業者の施工不良により貯湯タンクが転倒したのではないかと疑われた事例を紹介する。

相談内容

 2012年10月、自然冷媒ヒートポンプ給湯器(以下、給湯器)を購入した。10年間のローンを組んで設置し、現在もローンの残高がある。

 2016年4月14日に発生した熊本地震の前震で、室外に置いてあった給湯器の貯湯タンクが傾いた。給湯器の販売業者が現場を見に来たが、転倒防止措置などの対応をせずに帰った。2日後に本震が発生し、給湯器の貯湯タンクは完全に横向きに倒れてしまった。地震発生による混乱もあって、ようやく約1週間後に販売業者の点検を受けたところ、「給湯器は修理不能だ。新しい機器の設置費用は自己負担になる」と言われた。新しい給湯器の見積もりをもらったが高額だったので地震で壊れた給湯器のローンの支払いについて減額等を希望したが、できないと言われた。販売業者が前震発生直後に何らかの措置をしていたら本震で倒れることはなかったのではないか。ローンについての配慮もなく納得できない。

(70歳代 男性 無職)

結果概要

 相談者は、既に新しい給湯器を購入し設置済みであったが、もし古い給湯器の設置に問題があることが分かれば、古い給湯器のローン残金について減額し返金してほしいと希望した。

 そこで、国民生活センター(以下、当センター)は、給湯器の施工不良の可能性について検討するため、給湯器メーカーが作成した設置説明書の内容を確認した。給湯器の貯湯タンクについては、(1)アンカーボルトを打設する(2)本体の脚部に開いている穴を通す(3)角ワッシャー(金具)を挟む(4)ナットで締め付ける、という順番で固定することと記載されていた。

 次に、相談者から送付された現場の写真を見ると、打設されていたアンカーボルト3本のうち、[1]1本はアンカーボルトのみが残っている[2]1本はアンカーボルト、ナットと、角ワッシャー3枚が残っている[3]1本は角ワッシャーがなくアンカーボルトとナットのみが残っている、という状態だった。[1]についてはなぜ角ワッシャーとナットがないのか、[2]についてはなぜ角ワッシャーが3枚も挟まれているのか、[3]については設置説明書の順番どおりに施工されていれば角ワッシャーだけがなくなるというのは考えにくいのではないか、という点で不自然さが感じられた。

 当センターが一級建築士に尋ねたところ、「アンカーボルトにナット等が残ったまま倒壊したとすれば、アンカーボルト部分に本体の脚部がくっついて残るか、脚部のボルト穴が損傷しない限り、アンカーボルト等が残ったままで本体が倒壊することはない。現場の写真を見ると、脚部のボルト穴の損傷はなく正常なままなので、施工時当初から設置説明書の指示に従った固定がなされておらず、そのために倒壊したものと推察される」との見解を得た。

 そこで、貯湯タンクの設置状況について販売業者に確認した。販売業者は、「脚部の状態については確かに不可解な点があるが、社内で調査し回答する」と述べた。販売業者は、「もし施工不良であれば前震の時点で転倒していたはずだ。現場に残っていたナット等は、転倒後に誰かが再度取り付けたものと思われる」などと主張した。

 当センターが再び建築士に意見を求めると、「仮に、適正に設置されたにもかかわらずナットが取れ、再び取り付けたとすると、転倒時には大きな力が加わったであろうから、アンカーボルトのねじ山やねじ溝が破壊されてなくなっているはずだ。しかし、写真ではきれいなねじ山が残っている。このことから、転倒時にナットが取れ再び取り付けられたとは考えられない。当初からナット等が適正に施工されておらず、本体がただ置かれたままの状態だったと推察するほうが妥当ではないか」との見解を得た。

 これを基に販売業者には、現場の状況から考えると給湯器の貯湯ユニットが設置説明書どおりに施工されていたかどうか大いに疑問であり、設置説明書どおりに施工したというのであれば、納得できるような説明をしてほしいと伝えた。そのうえで、古い給湯器のローン残金について減額し返金してほしい、という相談者の希望に沿うような対応を求めた。

 販売業者は「施工不良を実証できない」と言い非を認めなかったが、「被災者である相談者を支援する立場から、ローン残債相当額の返金に応じたい」と当センターに提案し、相談者もこの提案に合意するとのことだった。その後、販売業者から相談者に約40万円が返金されたことを確認し、相談を終了した。

問題点

 本件は、当センターが開設した「熊本地震消費者トラブル110番」に寄せられた相談である。

 給湯器の貯湯タンクの転倒トラブルは、2011年3月の東日本大震災においても多発した。このため、当センターでは、消費者への注意喚起および業界団体への要望、関係省庁への情報提供を行った*1。これを受け、国土交通省は、給湯設備の設置に関する部分の告示(2000年建設省告示第1388号)を改正した。それにもかかわらず、熊本地震においても同様の相談が多数寄せられたため、再び、消費者への注意喚起および事業者団体への要望、関係省庁への情報提供を行った*2。

 もし給湯器が転倒すると、周囲に人的・物的な被害が生じる危険性があるうえ、被災後の日常生活にも大きな影響を及ぼす。自宅の給湯器の設置時期(改正告示の施行前か後か)やメーカーの設置説明書どおりに施工されているかを確認することが、トラブルの未然防止のためには重要である。


ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。