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[2017年3月28日:掲載]

修復歴があるとして「再査定」した自動車買取業者

自動車買取業者に引き渡した車に、後日「ルーフに修復箇所があった」として契約の解除を求められたという事例を紹介する。

相談内容

 3年前に新車で購入した車を乗り換えるため、車検の前に売却することにした。インターネットで見つけた複数の買取業者に連絡して、店舗に出向き、車を見せた。一番高い価格を提示した買取業者(以下、事業者)と4日後に価格交渉し、220万円に決まり、売ることにした。また、別途、売却価格の変更がないことを保証するサービス(以下、買取価格保証)に20,000 円を支払って加入した。車を引き渡した3日後に事業者の担当者から電話があり、「ルーフパネルの交換歴が判明した。知っていれば買い取らなかった。車を返すから代金を返してほしい」と求められた。「お客様の事故、メーター改ざん、水没以外はすべて事業者が負担する」と言われて「買取価格保証」を申し込んだのに、話が違うので承服できない。後で思い出したが、過去に雪害でへこんだルーフを保険で修理したことがある。商談中、「事故は起こされましたか」と尋ねられたが、駐車している車の屋根に雪が落ちたことを「事故」と思わなかったので、申告していない。

(60歳代 男性 無職)

結果概要

 相談を受けた国民生活センター(以下、当センター)が相談者から聞き取りを行ったところ、以下の問題点が考えられた。

  1. (1)相談者から送られてきた契約約款に「買取車両につき、修復歴などについて契約車両についての記載事項と買取車両との間の相違が判明したとき、消費者の認識の有無を問わず、事業者は直ちに催告なしで契約解除や損害賠償請求ができる」旨の条項があった。一般社団法人日本自動車購入協会(JPUC)の買取モデル約款*の規定では、瑕疵(かし)担保責任について、消費者は、売却契約を結ぶときに分かる限りの情報を伝えればいいとされており、前述の条項は、このモデル約款から大きくかけ離れているだけではなく、事業者の過失の有無や消費者の認識の有無を問わずに事業者側に契約解除を認めている点で、消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に抵触するように思われた。
  2. (2)車の修復歴(ルーフパネルなど車体の骨格に当たる部位の修正または交換歴がある場合、修復歴があるとされる。車の価値に大きく影響する)については、プロである事業者が通常の注意を払えば修復歴を発見でき、事業者に過失があるため消費者に対して瑕疵担保責任を問えないのではないかと思われた。

 以上について、事業者とも事実関係の整理をするために、相談者から当時のやり取りの経緯文を事業者に送付してもらった。

 引き続き相談者からの聞き取りをしていたところ、買取価格の商談のやり取りを録音した音声ファイルがあることが判明した。内容を確認したところ、修復歴については詳細な話がなかったこと、「買取価格保証」について担当者が「お客様の事故以外は事業者が負担する」「買取価格保証があれば今後の詳しい査定での減額も防げる」と「買取価格保証」に入れば今後何があっても金額は変わらない、と消費者が受け取って当然と思われる説明があったことが分かった。

 以上を踏まえて、当センターから事業者に、相談者は契約続行を希望していること、事業者の約款はモデル約款から大きく離れていること、「買取価格保証」の説明が不十分であったことなどを伝え、具体的な提案や事実関係の確認への協力を求め、来訪を受けた。

 来訪で分かった事実、事業者の姿勢は次のとおりである。

  • 契約書の項目は、担当者が相談者に確認しながら記入した。
  • 雪害での修復も契約書の中の「事故による修復歴」に当たる。事業者からみれば災害も含めて事故は事故だ(当センターから、事故という表現ではいわゆる交通事故を想像するのでは、と伝えた)。
  • 査定時に、ルーフ交換などを100%把握するのは無理。修復歴を事業者オークションの段階で指摘された。今回のような場合は折り合いをつけつつ値段を下げる(日常的に再査定があると認めている)。

 当センターでは、事業者が社内で状況を整理して再度提案を持ってくることを確認し、相談者は契約続行を希望していること、契約約款の再考を強く求めることを改めて伝えた。

 何回ものやり取りの後、事業者から「社長指示で今回は契約続行とする」と連絡があり、契約は当初の条件での続行となった。

問題点

 紹介した事例は、査定の見落としを消費者に転嫁する契約条項を基に、いったん高値を出してから、後日解約や減額を主張する、いわゆる「再査定」に関するものである。

 修復歴が見つかれば事業者側の過失を問わず契約を解除できる条項については、消費者契約法10条により無効である旨の判例(右京簡裁平成18年3月10日判決)があり、同様の条項に関するトラブルでは活用できる。

 「買取価格保証」の運用にも問題がある。「買取価格保証」の対象はエンジンやブレーキに関する部位など確認に時間がかかるもので、ルーフなどすぐに確認できる部位はきちんと査定することが前提と思われるが、今回はそれを逆手にとって契約解除の根拠としている。

 中古車買取業界では、2011年3月の東日本大震災以降の相談件数の激増を受けて業界団体であるJPUCが発足し、トラブルを防ぐためのさまざまな取り組みが進められており、今後の業界の改善が待たれる。


ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。