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[2012年7月26日:掲載]

施工説明書どおりに設置されず震災で転倒した蓄熱暖房器

自宅に設置した蓄熱暖房器が震災で転倒した。本来取り付けるべき固定金具が使われていなかったことなど設置の際の不備が判明したが、設置方法に問題はないとして、修理等にかかる費用をすべて自己負担することを事業者から求められた事例を紹介する。


相談内容

 自宅を新築した際、標準仕様*1として複数の部屋に蓄熱暖房器(以下、暖房器)*2を設置した。しかし、2011年3月の東日本大震災により暖房器は転倒し、300kgの暖房器が床面2カ所だけで金具固定されていたことが分かった。住宅メーカー、暖房器メーカーおよび設置工事業者に対し、壊れた本体の修理と再設置を求めたが、「施工説明書(以下、マニュアル)どおりの施工をしており、設置方法に問題はない。しかも、今回は震災による転倒であった。当社に責任はないので、修理と再設置にかかる費用はお客様の負担になる」という回答であった。

 後日、暖房器メーカーのホームページでマニュアルを確認したところ「厚さ12mm以上の合板等の壁下地補強材を施工の上、付属の転倒防止ビスと壁固定金具で本体と壁を固定するように」という指示が記載されていた。しかし、自宅に設置された暖房器には壁下地補強材、転倒防止ビスおよび壁固定金具は使われていなかった。

 事業者側には、マニュアルどおりに施工しなかった責任を認め、無償で本体の修理と再設置をしてほしい。

(30歳代 男性 給与生活者)

  1. *1 新築戸建住宅やマンションに設定されている、設備機器、外装・内装仕上げなど、その商品の標準となる仕様。
  2. *2 深夜電力でレンガに熱を蓄え、その熱を日中徐々に放出することによって暖房を行うものである。


結果概要

 相談を受けた国民生活センター(以下、当センター)は、暖房器メーカーのホームページでマニュアルを確認した。すると、「!壁下地補強材を施工の上、付属の転倒防止ビスと床固定金具で本体と床・壁を固定すること。地震等により本体が倒れてけがをするおそれがあります」「!背面の壁材の仕上げは不燃材を使用すること。火災のおそれがあります」との記載があった。また、その項目に付いている「!」マークは「指示図記号。製品の施工において、指示に基づく行為を強制する図記号」と説明されていた。暖房器メーカーにマニュアルの指示について尋ねたところ、「『!』マークが付いているのは、設置工事業者が守るべき必須項目である。これを守らず施工した場合、当社は暖房器本体の安全を保証できない。固定する壁面の壁下地に、厚さ12mmの合板材を用いて補強するよう規定している」とのことだった。

 また、当該住宅の設計図等を確認したところ、暖房器を固定する壁面の材質は、ネジ釘のきかない石こうボードだった。

 当センターは、マニュアルにのっとった壁面の補強および暖房器の修理・再設置を求める書面を住宅メーカーに送るよう、相談者に助言した。

 しかし、住宅メーカーはマニュアルどおりに施工したと言い、さらに地震による免責を主張した。そこで当センターより、住宅メーカーに壁面への固定をしなかった理由を尋ねたところ、「当社が採用している工法では、壁面パネルに重量のある暖房器を直接固定し、その暖房器が倒れた場合、壁面パネルが損傷し、住宅の躯体(くたい)自体の強度が保てず、建物自体が倒壊するおそれがある。そのため暖房器を壁に固定しなかった」という説明があった。また、壁面の材質については「耐火性能に影響するので、壁面の材質をマニュアルどおりの木質にすることはできない」ということだった。

 当センターが建築士と住宅メーカーの見解や設計・施工方針について検討したところ、「建物の構造上、暖房器の設置が他の安全性を脅かすのであれば、そのような暖房器を当該住宅に設置すべきではない。何の対策も講じず、暖房器を標準仕様とした住宅メーカーの方針は不適切であり、規定を守らなかったのは同社の落ち度である」との見解を得た。

 また、法律の専門家に見解を尋ねると「住宅メーカーが地震による免責を主張できるのは規定を守ったうえでのことであり、規定を守らなかった責任は免れない」とのことであった。

 しかし、関連する事業者それぞれと交渉しても解決策がまとまらなかったため、関連する事業者全社と面談を行った。

 住宅メーカーは、相談者が暖房器を使えず気の毒な状況にあるため無償で修理・再設置をすると回答したものの、設置方法の問題点は認めなかった。そこで当センターが、関連する事業者に対してこれまでに確認・指摘した内容を説明し、住宅メーカーがマニュアルどおりに設置しなかった責任を追及したところ、態度を一変させ「マニュアルを無視するような施工をしたのは、当社の落ち度である」と認め、住宅メーカーと設置工事業者の判断で床付け固定をしていたと述べた。その後、本件の解決策として、金属パネルを使用して暖房器を設置し直すという提案があった。

 当センターは住宅メーカーに、暖房器を設置している顧客へ今回の転倒事故について周知すること、全国の暖房器の設置状態を確認し、固定が不十分な場合には適切に設置し直すことを要請した。住宅メーカーは、設置台数を確認し、該当する顧客には個別に連絡してすべて無償で設置し直す、と約束した。

 相談者に事業者側の提案を伝えたところ合意に至り、無償で改修されたため、相談を終了した。



問題点

 当初、住宅メーカーは、施工方法について事実に反した主張を行い、無償の修理・再設置に応じなかった。

 地震等の天変地異による被害については事業者が規約等で免責条項を設けている場合が多い。しかし、これら免責条項による危険負担の主張は、事業者が法令その他の遵守すべき規定を守ったうえで初めて主張できることであり、本件のように事業者がマニュアルの規定を守らず事故が起きた場合に主張できることではないと思われる。

 今回は幸いにして危害は起きなかったが、暖房器の本体は室内に設置されるため、転倒すれば人が下敷きになる等の重篤な被害が起きてもおかしくない。事業者側には、暖房器の設置状況を迅速に点検し、不適切な設置状況となっているケースについては確実に修理・再設置を行うことが強く望まれる。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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