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[2012年3月26日:掲載]

ペットの治療費を一部しか負担しない販売店

購入したペットが長期の治療を要する状態と判明したため、ペットショップに治療費を請求したが、一部しか支払わないと言われた事例を紹介する。

相談内容

 ペットショップに出向き、生後2カ月未満の犬を約15万円で購入した。契約時に特別な説明もなく、健康な犬と思っていたが、数日後に突然けいれんを起こし、瀕死(ひんし)の状態になった。動物病院で診察を受けたところ、この犬はまだ幼いので十分な検査ができない。薬剤を投与して発作を抑えながら経過観察を行う、と言われた。

 犬を手放すつもりはなく、飼い続けたい。入院等の費用として既に約30万円支払っており、今後も治療費等がかかる。ショップに事情を伝えたが何もフォローがない。

 契約書には、飼育上重大な支障をきたす先天性疾患が見つかった場合は販売価格の10%を上限に治療費を支払う旨の記載がある。しかし、今後支払うことになる分も含めて、治療費等を全額負担してほしい。

(30歳代 女性 自営・自由業)

結果概要

 相談者によれば、ペットショップ(以下、販売店)と自主交渉をする中で、購入価格の半額を返金する旨の提案を受けたという。しかし、相談者は、今後の分も含めて治療費等の全額を販売店に負担してほしいということだった。

 相談を受けた国民生活センター(以下、当センター)では、相談者から契約書の送付等を受け、以下の2点を確認した。

  • 販売店は、動物愛護法*10条に基づく動物取扱業の登録を受けている。
  • 契約書には、保証期間(販売日から30日)中に飼育上重大な支障をきたす先天性疾患が見つかった場合、販売価格の10%を上限として治療費を支払う旨の記載がある。

 この記載について、当センターの法律相談を受け、以下の見解を得た。

 《販売店がまったく責任を負わないという内容ではなく、一概に不当との判断はできない。先天性疾患は、販売店でも事前に分からない場合が多いと思われ、むしろこれは購入者に有利な条件とみることもできる。

 ただし、販売店が契約前に疾患を知っていた等の事情があり、債務不履行ないし不法行為が成立する場合には、損害賠償の請求が可能であろう。もっとも、先天性か後天性かという点や発症の時期等は、獣医師の意見が大きく影響する問題であり、販売店が疾患を知っていたことの証明は難しいだろう。

 賠償額は、購入契約を解除せず犬を飼い続けるのであれば、一概には言えないが、疾患を知るための検査費用にとどまる可能性が高い。解約して犬を手放すなら、これに購入価格が上乗せされると考えられる。》

 次に、販売店が契約前に疾患を知り得たかどうか、相談者を通じ獣医師に確認した。

 《先天的な疾病による発作の可能性は高いが、販売店にいる間に症状が現れていたかどうかは不明。症状がなければ疾病を知り得た可能性は低い。》

 健康な犬と判断した根拠について、販売店は犬を入手する際に受け取った書面により判断したという。当センターがその写しの提供を受け確認したところ、体の状態が「扁平」である旨の表示しかなく、これだけで先天性疾患の有無を判断することは難しいと考えられた。

 一方、動物愛護法によれば、ペットの販売業者は、購入者に対し、所定の18項目について契約前に書面を交付して説明しなければならない(同法施行規則8条4号)。しかし、契約書のほか、販売店が相談者に交付したと主張する販売飼育書(相談者は受け取った覚えがないというので、販売店に再発行を依頼し取り寄せたもの)を確認したところ、18項目中、先天性(遺伝性)疾患の発生状況や病歴に関する記載がなかった。販売店は「契約書の特記事項欄に記載がなければ、問題はないということだ」と主張した。一方、相談者の「犬の健康状態等に関し販売店から口頭で説明されたこともなく、健康な犬と思って購入した」という主張は理解できる。

 以上のことから、当センターでは、販売店は犬の疾病を知らなかった可能性が高く、購入価格の半額を返金する旨の販売店の提案は、相談者にとって極めて不当な内容とはいえない旨を相談者に説明した。そのうえで、販売店の提案に応じるか、解約を主張するか検討を求めた。その後、相談者は販売店の提案に応じるかたちで販売店と合意し、提案どおりに返金を受けた。

 また、当センターから、法定項目の記載に不備がある旨を販売店に指摘し対応を要望したところ、早急に改善するとのことであり、相談を終了した。

  • *正式名称:動物の愛護及び管理に関する法律

問題点

 先天性疾患はいつ発症するか不明なケースが多く、購入後に発症した場合、販売店の責任を問えないこともある。そうなると、治療費等は購入者が負担せざるを得ない。

 ペットも動物であり、先天性疾患を完全になくすことは困難としても、繁殖業者(ブリーダー)や販売業者には、先天性疾患のある動物の繁殖や販売を極力避ける等の対応が望まれる。

 事業者に対し、先天性疾患の発生状況等を契約前に正しく伝えるよう求めることも重要といえよう。


ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。