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[2011年11月28日:掲載]

システム障害により生じた損失の補てんを拒むネット証券

ネット証券で株取引をしたところ、後日、システム障害があったとして取引価格を一方的に訂正され、損失を被った事例を紹介する。


相談内容

 ネット証券(インターネット専業の証券会社。以下、業者)を利用した信用取引で、証券市場の取引開始時刻(以下、開始時刻)前に株式の売り注文を出したが、開始時刻が過ぎても業者から売買成立(約定)の通知がなかった。開始時刻直後の相場状況(値動き)から、自分の売り注文が約定しないのはおかしいと思い、業者のホームページ上で何度も確認したが、約定した旨の表示は出なかった。数分後に業者から通知が来たので、その時点で約定したと思い、同じ銘柄の株式を買い戻して利益を確定させた。しかし数日後、業者から、当時はシステム障害が起きていたので、約定価格を訂正し、訂正後に損益を再計算して口座から過誤金を引き落とす旨の連絡があった。業者に苦情を申し出たが「金融商品取引法にのっとった処理で問題ない」と言われ、数日後過誤金とされた額の引き落としがあった。

 システム障害は業者に責任があり、消費者に損失を押し付けるのは納得できない。

(30歳代 男性 給与生活者)



結果概要

 国民生活センター(以下、当センター)では、相談者から取引の経緯をまとめたメモや約定履歴画面の写しを取り寄せ、事実関係を確認した。

 本件について、当センターの法律相談では、専門家から次のような意見が得られた。

 <今回のケースでは、相談者に過失はないと考えられる。インターネット上の株取引は一刻を争う場合もあることから、業者のシステム障害への対応状況によっては、業者の過失責任を問えるだろう。>

 また、業界団体からは、システム障害が起きた際の対応について次のような説明を受けた。

 <各社のシステムの違い等により対応は一律ではないが、通常はシステム障害の発生を確認した時点で顧客や関係者への周知を図り、監督官庁に報告する。事故確認の制度を利用し顧客の損失を補てんするかどうかは、各社の判断による。>

 金融商品取引法(以下、金商法)第39条によれば、証券会社が顧客の株取引による損失を補てんすることは原則として禁止されている。しかし、証券会社の注文間違い等で顧客が損失を被った場合、証券会社が監督官庁に届け出て「事故」である旨の確認を受けていれば、例外的に損失補てんが認められる。

 本件は、業者がシステム障害による相談者の損失を「事故」と認めず返金に応じないため、トラブルになっていると推測された。しかし、そうした事情であっても、当センターや消費生活センターのあっせんにより相談者と和解した場合、業者は事故確認を受けていなくても顧客の損失を補てんすることができる(金融商品取引業等に関する内閣府令119条1項6号)。

 そこで、システム障害の状況や顧客への周知等の対応について業者に確認した上で、当センターでは、本件は業者のシステム障害に原因があり、相談者は、その事実を知ることができないまま取引を行ったため損失を被ったとして、返金を求めていると業者に伝えた。また、当センターのあっせんにより顧客と和解し、損失を補てんする場合は事故確認の必要がない旨を説明した。

 後日、業者から連絡があり、当センターのあっせんで相談者と和解し、訂正後の約定価格をもとに減額処理した分は返金するということだった。その後当センターも関与して当事者間で和解を証明する確認書が作成され、相談者から和解のとおり返金を受けたと連絡があったため、相談を終了した。



問題点

 本件では、相談者が取引当時、業者のシステム障害の発生を知ることができず、損失を被った可能性があると考えられた。

 このようなケースでは、業者のシステム障害への対応に問題はなかったか、また相談者に落ち度はなかったかを慎重に確認し、業者が相談者に損失を負担させることの適否の見極めが解決のポイントになろう。

 同様のケースで、証券会社が「損失補てんの禁止」を理由に返金を拒む場合は、消費生活センターが行うあっせんの趣旨とその効果を丁寧に伝え、消費者との自主的な和解を促すことも重要であろう。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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