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[2007年9月3日:掲載]

株式の買い付け注文をコンピューターに入力ミスした証券会社

 日本の個人金融資産は2005年末に1500兆円を超えたが、長く続く超低金利時代に、少しでも有利な運用先を求める個人投資家は少なくない。

 今回は、証券会社が顧客から受けた株式の買い注文を誤ってコンピューター入力したことに端を発したトラブルを紹介する。


相談内容

 証券会社の支店の窓口に出向き、午前の場で、ある企業の株式1万株を239円で買うよう注文した。ところが、担当者がコンピューターへの入力を249円と誤り、成り行き買いで242円で3000株、243円で4000株、244円で3000株の取引(以下、取引Aという)が成立してしまった。

 その場で担当者のミスを指摘し帰宅後、本社の顧客窓口に相談したところ、夜、支店の上司から電話があり、「午後の場で1万株が239円で買えました(以下、取引Bという)。午前の場での取引はなかったことにします」といわれた。

 自分としては、午前の場で出した注文は入力ミスがあった時点で消滅したはずで、午後の場まで生きていないので、取引Bは無断売買だと思うので、当日のすべての取引をなかったことにしてほしいと伝えたが、証券会社は「希望どおり239円で買えたのだからいいでしょ」という態度で、誠実に対応しない。

(60代 女性 家事従事者)



処理概要

(1)処理経過

 通常、消費生活センター等に証券会社とのトラブルにかかわる相談が寄せられても、証券会社がセンターのあっせんに応じるケースはまれである。それは、原則として損失補てんが証券取引法で禁じられていることと、証券業界の顧客対応が家電や自動車など他の業界に比べて遅れているためと指摘する向きもある。

 相談者にこれまでの経緯を詳しく尋ねたところ、相談者宅には、なかったことにするといわれた取引Aの取引報告書が送付されていた。相談者は、取引報告書が手元にある以上、決済される可能性があるので、取引報告書の効力を否定する文書を証券会社が出すべきだと主張してきたが、証券会社はとにかく面談したいと繰り返し、こう着状態となったので、センターに相談したとのことだった。

 相談者は、証券会社と話し合うにしても、第三者の立ち会いが必要であるとしたため、当センターは証券会社に連絡し、相談者の意向を伝えた。証券会社は、これに応じる意向を示したため、当センターで両者が面談することになった。

 面談の場で相談者は、取引Bの取り消しと送付されている取引報告書の効力を否定する文書の提出を改めて求めたのに対し、来所した証券会社支店長らは、まず部下が入力ミスを犯した事実を認め、この点を謝罪した。ただし、トラブル発生後の手続きとして、支店の内部管理責任者(支店内における営業活動が法令その他の諸規則等に準拠し違反する行為が行われていないか監査する役職)の責任において顧客から事情を聴き、事実確認を行うというプロセスを踏むルールになっているため、相談者に話し合いの場を設けてくれるようお願いしたが、応じてもらえず、半月以上トラブルの処理ができなかったと、証券会社側の事情が説明された。

 双方の主張を聴いたところで当センターは、以下の点を整理してみるよう促した。

《1》入力ミスが発生した場合の事後処理のルールついて

 取引成立後3日以内であれば、金融庁への事故報告なしで取引の補正(事実上取引Bの状態にする)または取り消し(事実上取引Aがなかったことにする)ができる(取引成立後4日目まで金融庁への事故報告なしで取引の補正または取り消しが可能な証券会社もある)。その際は、内部管理責任者の責任において顧客に事実確認を行うルールになっているという。

《2》今回のトラブルが発生した後の経緯について

 双方の話を聴いてみると、支店上司は、入力ミスのあった当日、取引の補正または取り消しができる旨の説明を行わず、午前の場で相談者が出した注文どおり午後の場で買えたからこちらに任せてくれとの一点張りだったため、相談者の不信感が助長されたようである。

 さらに聴き進めると、なかったことにすると証券会社が言っていた取引Aは、面談日時点で相談者の取引として存在していたとともに、取引Bについては存在していないことが明かされ、これまでの証券会社の説明が事実と反することが確認できた。

(2)処理結果

 当センターでは、証券会社が法令や諸規則等に抵触した行為を行ったか断定することはせず、トラブルの解決に向け話を進めることにした。

 その結果、証券会社は、入力ミスおよび事後処理においての一切の不手際を認めたうえで、「取引Aの1万株を売却させてもらい、損失(売却損、手数料、税金を含む)が出ればその一切を当社が負担する。結果として相談者に実損が出ないようにし、取引がなかった状態にする」という解決案を示した。

 相談者がこれを受け入れたため、翌日取引Aで買い付けた1万株が売却された。株価が値上がりしていたため、証券会社による損失補てんの必要はなかったが、金融庁に対する事故報告は行うとのことだった。



問題点

 人間はミスを犯すものである。そのことが責められるのではなく、そのミスをいかに適正に処理するかが重要である。事業者は、インシデント(小さな事故)をアクシデント(大きな事故)に発展させないよう努めなければならない。

 一般の消費者にとって証券会社はまだまだ敷居の高い存在である。本事例のように、証券会社が顧客に対して誠心誠意説明責任を果たさなければ、顧客からの信頼を損ねるばかりか、新規に取引を始める消費者は増えようがない。

 証券会社にかかわる相談は少なくない。同業界のコンプライアンス体制の一層の拡充が望まれる。




※当相談事例は2002年3月に掲載し、一部加筆・訂正を行い、再掲しました。



ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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