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[2007年9月3日:掲載]

一部無効になった証券会社に保護預かり中の株券

 近年、金融商品に関する相談は、増加傾向にある。

 今回紹介する事例は、購入した株を名義変更せずに証券会社の保護預かりにし、約8年後に証券会社に名義変更の手続きを求めたら一部株券が無効になっていたという消費者相談の中でも珍しいケースである。


相談内容

 1989年に証券会社に委託して、時価2000円の株8万株を購入。2年後、1万5000株を1900円で売却した。残り6万5000株も時機をみて売却する予定で、手続きに時間のかかる名義変更をせず、証券会社による保護預かりで保管してもらい預かり証を受け取った。ところがバブルの崩壊で株価が下がったため売却のチャンスを逸してしまった。

 1997年、証券会社に6万5000株の名義変更を求めたが、5000株が名義変更できなかった。理由は、1995年に5000株の元の名義人が亡くなり相続人が紛失届を出し、再発行の手続きを裁判所に申し出たが名乗り出る者がいないため、除権判決を得て旧株券が無効になり株券が再発行された(*公示催告・除権判決)ためであると説明された。

 本来、「保護預かり」は、購入した株券を自宅で保管すると盗難や火災の危険があるので、証券会社に預ける制度であるはずだ。信頼を裏切られた気持ちである。証券会社には、そもそも管理責任があると苦情を言ったが、「(株券が無効になったのは)名義変更をしなかったのが原因。株券の返還については相続人と交渉してほしい」と言うだけで責任を認めようとしない。

 証券会社には保管する証券への注意義務はないのか。納得できない。証券会社の管理責任を問いたい。

*公示催告・除権判決とは
 株券の所有者が株券を紛失、焼失、盗難などの理由で株券をなくした場合、簡易裁判所に申し出ることにより株券を再発行してもらう手続きのこと。裁判所は当事者の申し立てにより公示催告(紛失の事実を官報等に載せる)を行い、6ヶ月後に無効とする除権判決を受けることにより株券の再発行を請求することができる。



処理概要

 すでに相談者が弁護士に相談していることや相談内容から国民生活センター(以下、センター)のあっせんは難しいため、業界団体の苦情相談窓口と、証券業の所管庁(金融監督庁)を紹介した。

 だが、相談者の主張も理解できることから次の点について当センターの法律担当弁護士に見解等を求めた。

(1)株券を取り戻す方法について
 相談者が名義書き換えをしなかったため株の配当や通知は元の株主にされていたのであろう。元の名義人が亡くなったとき、相続人が株券のないことに気づき公示催告したものと考えられる。

 したがって真の所有者である相談者は相続人に対しどちらが正当な権利者であるのかを決し、再発行された株の引き渡し請求をすることが必要となる。

(2)株券の保護預かりをすれば安心という考えが定着しており、相談者の手元に預かり証があるのなら、これに基づき証券会社に一部責任があるとは考えられないのか。

 保護預かりの約束の内容にもよるが、証券会社が官報等を注意して見て公示催告について、知るべきであったともいえるかもしれないが、このように考えて証券会社に責任があるとした判例はない。

業界団体への問い合わせ

 日本証券業協会(以下、協会)の相談窓口に証券会社の管理責任について尋ねたところ、次のような回答であった。

 一般的には株式を購入した後、自分で保管せず、証券会社の保護預かりや(財)証券保管振替機構の保管振替制度を利用することが多い。自分で保管する場合や保護預かりの場合は、名義書き換えの手続きをする必要があるが、保管振替制度を利用した場合は一括管理して機構名に書き換えられるため名義書き換えの手続きの必要はない。

 業界の定めた保護預かり約款では、公示催告、除権判決等についての調査などは行わないことや名義書き換えの通知を行ったにもかかわらず手続きをしなかった場合には免責されるとしていることなどからして名義書き換えの責任は顧客にあり証券会社にはない。



問題点

 保護預かりは民法や商法の寄託に当たり、受託者には善管注意義務があるが、本事例においては証券会社が株券そのものをなくしたわけではないので注意義務を果たしていないとはいえないだろう。

 しかし、本事例については次のような問題点が挙げられる。

  1. (1)名義変更をせずに売買することは特に異例ではないと思われる。協会の保護預かり約款に免責規定があるのは通常の取引において起こり得るトラブルを想定しているとも考えられる。
  2. (2)相談者は、保護預かりにしたため、一度も株券を見ておらず、公示催告についても調べようがないと主張している。一般の消費者が官報を新聞のように読むとは思えず、官報をチェックすべきであるというのは酷である。
  3. (3)保護預かり約款には公示催告申し立て、除権判決の確定等についての調査や通知はしないと明記されているが業務上所有している情報量や調査のノウハウは証券会社のほうが消費者より格段上で調査も不可能とはいえないだろう。
  4. (4)保護預かりの手続きをする際、名義変更をしない場合の不利益について顧客に十分周知されているとは言い難いのではないのか。

 消費者契約法に照らして考えてみると、消費者契約法第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)第1項との関連で、投資家の保護より証券会社の責任を軽くする免責条項の可否について検討することが望まれる。

* 参考論文
吉田光碩 「公示催告・除権判決と善意取得」 (判タ№1061、51ページ)




※当相談事例は2001年11月に掲載し、一部加筆・訂正を行い、再掲しました。



ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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