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[2006年6月20日:掲載]

保険募集時の説明や適合性原則が不十分だった証券会社

 個人年金保険とは、保険料を支払って定められた年齢から年金の支払いが開始される代表的な私的年金の金融商品である。今回は高齢者に対して適合性原則の順守が不十分だった事例を紹介する。


相談内容

 亡くなった夫と取引のあった証券会社の女性外務員2名から一時払い定額個人年金保険を執拗に勧められた。今日中にと言われて、すでに証券会社に預けてあった金額に公的年金からも捻出して約500万円を一括支払いすることにして契約を結んだ。しかし前日にがんが見つかり、入院・手術等で自由に使えるお金も必要であり、そのことは外務員にも話したが、契約して9日目にやめたいと言ったら100万円以上も差し引くことになると言われた。納得できない。

(80歳代 女性 家事従事者)



処理概要

 相談を受け付けた居住地の消費生活センター(以下、受付センター)が契約時の状況を尋ねたところ、相談者は息子家族と同居しているが昼間は一人で、その間に外務員2名が訪ねてきたとのことだった。その際に、契約書に記されている引受保険会社である生命保険会社(以下、保険会社)についての説明はなかったという。また、相談者は外務員が訪ねてきた日の前日にがんが見つかっており、精神的に動揺していた。現実問題としては手術代等自由に使えるお金が必要であり、そのことを外務員に言ったにもかかわらず、契約を急がされたとのことだった。

 受付センターで、契約のしおり、保険証券等を確認したところ、クーリング・オフはできない旨が書かれていた。正常な判断ができないと思われるときの強引な契約について今後、どのように進めていけばよいかと国民生活センター(以下、当センター)に問い合わせがあった。

 そこで、当センターでも契約のしおり等の書類を詳しく見てみた。今回、相談者が契約した保険は「一時払い定額個人年金保険」で10年保証期間付終身年金となっている。10年間は必ず年額約30万円が支払われ、保証期間経過後は、年金の支払日に被保険者が生存している限り年金が支払われるというものである。

 契約のしおりの「クーリング・オフ制度について」の項では「この保険の保険料払い込み方法は、『当社が指定する金融機関口座への送金』のみに限定されています。この場合、お申込者またはご契約者様が十分検討のうえ自発的な意思によりお申し込みをされるとともに保険料が送金されたものとみなされます。したがって、保険料送金後はご契約のお申し込みを撤回することはできません」とある。これによると、本契約は指定口座への送金後は撤回できないとなっているので、相談者は年金から出した分をその場で渡しているのか確認した。受付センターによると、相談者がその年金分を店に持っていったとのことであった。

 当センターから、相談者は80歳代と高齢であり、10年間保証付終身年金の契約は適合性原則に照らして問題であること、がんであることが分かり、手術代等が必要な事情があるにもかかわらず契約を急がせたこと、証券会社は引受会社の保険会社のことを説明しなかったことなど、契約時の問題点を再度申し入れた。

 その後、保険会社から証券会社との話し合いをもったとの報告があった。その内容は、「証券会社の募集は適切で、消費者は納得して契約している。しかし、消費者のニーズの確認や商品のしくみや契約先に関する説明には不安が残ると言っている。今後、証券会社と消費者が話し合い、消費者の希望にできる限り近いかたちで対応したい」とのことであった。

 数日後、保険会社から「相談者と証券会社が話し合った。相談者は解約の意向が非常に強く、証券会社としては十分に説明をしたつもりであるが、保険会社は勧誘に問題があったと考え、契約を取り消して全額を返金する」との連絡があった。その後、相談者と保険会社で書面を取り交わしたことを確認した。



問題点

 そもそも「保証期間付終身年金」とは、「保証期間中は生死に関係なく年金が受け取れ、その後は被保険者が生存している限り終身にわたり年金が受け取れます。保証期間中に被保険者が死亡した場合、残りの保証期間に対応する年金、または一時金が支払われます。保証期間のないものもあります」とある(生命保険文化センター『生命保険・相談マニュアル』)。

 今回の件は、契約者が生存している限り毎年約30万円ずつ支払われ、契約者がその間死亡したとしても契約した日から10年間は継続年金受取人が契約上の一切の権利義務を承継し、同じ金額を受け取れるというものである。また、一括して年金を受け取ることもできるが、それは保証期間中の最後の年金支払日前に限り、その場合は、基準となる金額から「年金一括支払控除」と市場金利情勢に応じた「市場価格調整」を行った金額となるという。これらから試算してみると、相談者は現在80歳代後半であるので、少なくとも100歳まで生存しないと支払った保険料分は受け取れないことになる。
 一方、相談者が途中で死亡した場合、継続年金受取人は相談者が支払ったよりかなり低い金額しか受け取れない。適合性原則の順守が十分でなかったと考えられる。

 また、証券会社は勧誘時に十分説明したとしているが、相談者が高齢であることや前日にがんの告知を受けていた精神状態などを推測すると、相談者が証券会社の説明を完全に理解していたとは考えにくい。

 今回は、当センターの指摘を受け、保険会社が短時間に適切に対応した例である。しかし、PIO−NETには、個人年金保険の相談は多く、特に証券会社や銀行の窓口販売で個人年金保険を契約したという相談では、説明義務や適合性原則の順守が不十分と思われるケースであっても保険会社が解約に応じる例は少ない。

 証券会社や銀行による勧誘で契約した保険についてのトラブルは増加傾向にあり、今後もその動向を注視していきたい。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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