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[2006年4月28日:更新]
[2006年2月20日:掲載]

入院給付金の支払いを拒否する生命保険会社

 大手生命保険会社が金融庁から業務停止命令を受けるなど、生命保険会社の保険金不払いが社会問題化したが、生命保険会社が明確な理由も示さず、入院給付金の支払いを拒否した事例を紹介する。


相談内容

 数年前に夫婦で定期保険特約付終身保険に加入した。その後、妻が14日間入院したので、生命保険会社(以下、事業者)に入院給付金を請求したが、支払いを拒否された。

 その理由について尋ねたところ、「入院中にリンパ節腫脹の摘出手術を行ってはいるが、退院後の病理検査にて悪性リンパ腫と確定している。退院後に病理が確定したものは、成人病を直接の原因とした入院とは認められない。よって、成人病入院給付金の支払い対象外となる」とのことだった。しかし、その旨は約款には明記されておらず、納得いかなかったので、何度も事業者に問い合わせたが、明確な回答は得られなかった。

 その後、新聞報道等で事業者の保険金不払い問題を知り、内容証明郵便で保険金の請求をしたが、返事がなかったので、国民生活センター(以下、当センター)に相談することにした。

(50歳代 男性 自営・自由業)



処理概要

 当センターは、まず、事業者に相談者の苦情を伝え、経緯を聞いた。

 事業者は、「相談者の主張している入院保険特約(「悪性新生物」)に定める特約保険給付金については、支払い対象外である」と相談者に伝えたと同様のことを回答してきた。その詳細は次のとおりである。

(1) 当該保険の入院保障特約の条項には、被保険者が責任開始時以後に発病した成人病を直接の原因とし、治療を目的とした入院に対し、成人病入院給付金を支払いする旨を定めている。「成人病を直接の原因入院」とは、成人病の確定診断がなされるだけでは足りず、成人病として治療がなされていることを要する。

(2) (相談者が入院した)病院に事実の確認を実施した結果、初診時および入院時に悪性か良性か、リンパ腫か別の病気かの区別はつかず、退院後に診断が確定されたことを確認している。本件については、前項の治療すらされていないということであれば、約款規定からは成人病入院給付金の対象にすらならないと判断している。

 当センターでは、事業者から当該保険の約款等を入手し、事業者の回答が約款に記載されているのか精査した。

 約款によると入院保障特約の条項には、「この特約は、特定の成人病によって入院された場合の保障に重点を置き、その入院については、他の疾病により入院された場合の3倍相当額の入院給付金を支払う」と特典を強調した内容になっている。

 また、成人病入院給付金の支払い条件を「被保険者が次のすべてを満たす入院をしたとき」として

(1) この特約の責任開始時以後に発病した成人病を直接の原因とする入院であること
(2) この特約の保険期間中に開始した入院であること
(3) 治療を目的とした入院であること
(4) 病院または診療所への入院であること
(5) 入院日数が継続して5日以上であること

となっている。

 しかし、事業者の回答の内容(退院後に病理が確定したものは、成人病を直接の原因とした入院とは認められない)はここには書かれていない。

 さらに、被保険者が入院を開始したときに入院の直接の原因となるべき別の疾病を併発していた場合、またはその入院中に入院の直接の原因となるべき別の疾病を併発していた場合は、次に定めるところによる、としている。

  • 併発しているそれらの疾病いずれも一般疾病の場合またはいずれも成人病の場合には、その入院を開始した直接の原因となった疾病により継続して入院したものとみなして、当会社は、疾病入院給付金または成人病入院給付金を支払います。
  • 併発しているそれらの疾病が一般疾病と成人病の場合には、その入院を開始した時から成人病により継続して入院したものとみなして、当会社は、成人病入院給付金を支払います。

 これらの条項からも事業者の回答は矛盾しており、また「病理組織診断の結果が退院後に確定すれば、保険の給付対象ではない」とは明確に記載されていないことを指摘した。

 その後、事業者から相談者に支払いをする旨決定を変更したとの連絡があった。事業者は、保険金等の支払いに関する約款の解釈や運用について見直しを行っており、「悪性新生物」についての支払い判断も一部変更した。具体的には、従来手術前に悪性新生物と診断されていた場合にしか適用していなかった手術給付金支払いを、手術後に悪性新生物と判明した場合にも適用することとした。本件についても、この改正を遡及して適用し、手術給付金・成人病入院給付金の追加支払いを決定したものである、とのことだった。



問題点

 事業者は、相次ぐ顧客からの苦情、金融庁の指摘を受け、保険金・給付金の支払いに該当しないと判断していた契約についても、遡って点検・調査し、支払うことが妥当と判断された契約については速やかに支払うとの取り扱いを決めた。本件もこれらの契約に該当すると考えられるため、給付金が支払われることになったのであろう。

 PIO−NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)にも生命保険に関する相談件数は多く、今回の件のような支払われるべきであるはずのものが支払われなかったという申し出も多数みられる。

 生命保険はかなり複雑な契約であり、事業者には事前に説明するべき義務がある。その契約内容等が約款に書かれているわけであり、一般的にトラブルが発生したとき、事業者は「約款にある」と言って対応する。しかし、今回の件は、約款に書いていないことを保険金を支払わない理由に掲げており、事業者としての姿勢を問われると考えられる。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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