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[2005年3月18日:掲載]

高齢の母親が訪問販売で契約した個人年金保険

 最近、金融機関でも、外貨建ての預金や金融商品を利回りが高いとして積極的に勧める傾向がある。しかし外貨建て商品は、為替の変動によるリスクや手数料がかさむといったデメリットもあり、より一層の注意が必要である。今回は外貨建て個人年金保険のトラブルを紹介する。


相談内容

【事例1】

 その銀行とは以前から付き合いがあり、担当者がしばしば預金の出し入れに自宅に来訪していた。

 最近、新しい担当者が来訪した際、家族に金融商品を勧めたいと言ったが断った。その後再び担当者が来訪し、今度は78歳の母に勧めた。母は、近々満期になる父名義の定期預金が積立預金であったため、積立預金ならよいと思い契約したようだ。

 その夜、娘の自分が母から契約書を見せてもらったところ、積立預金ではなく、米国通貨建て積立利率変動型個人年金保険であった。保険料は一時払いで1万USドル。換算すると110万6065円であった。保険料は担当者の勧めで父名義の定期預金を解約し、手続き全部を担当者に頼んだとのことであった。母は積立預金と思って契約しており、自分が説明して初めて保険であることを知った。翌日、来訪した担当者に契約取り消しを申し出たが、応じてくれなかった。確かに約款には「クーリング・オフができない」と記載されている。母は脳の手術を受けたことがあり、痴呆気味でもある。普通に生活はしているが為替リスクなどまったく理解していない。

(40歳代 女性 給与生活者)



処理概要

 当初、相談者が居住地の消費生活センター(以下、受付センター)のアドバイスで自主交渉し、銀行は解約を認め差損があれば負担することになった。しかし翌日、「書類上の不備はなく法的には問題ない。契約を取り消す理由はなく、差益も差損も銀行が負う必要はない」とし、当事者の同意がないまま解約手続きをし、結局差損分4900円を差し引いた金額が一方的に口座に返金された。

 当事者は解約ではなく契約の取り消しを望んでいたため、差損を負担することに納得できないと再び受付センターに相談があり、国民生活センター(以下、当センター)と共同処理を行うこととした。

 当センターでは、銀行に来訪を求め、高齢者への長期の保険契約の不適切さ、契約当事者は商品の内容や仕組み、リスクについてを理解していなかったと思われること、銀行への信頼感を利用して夫の定期預金をもとに他の商品を契約させたことは問題である旨を伝えた。また、書面にクーリング・オフできない旨が書いてあるがそれについてもきちんと説明したかを尋ねた。

 これに対して銀行は、「この商品は米国通貨建て商品であり、保険と名前はついているが、入院したから保険金がもらえるといったものではないと説明した。また、元本割れの可能性や、預金とは違うことも説明した。保険なので死亡した際は娘が受取人になれるというメリット、解約すると元本割れすることや、為替が変動したら受け取り額に増減が生じるデメリットがあることなどはパンフレットを渡して説明した。この夫名義の口座は妻が開設手続きを行い、その後も手続きを妻が行っていたので今回の保険契約も同様にした。夫本人の意思を確認すべきだったとは思うが取り消しはできない」と回答した。

 それを受けて当センターからは、

 (1) 当事者は78歳と高齢であり脳の手術歴もあり為替リスク等の理解も乏しかったと思われること
 (2) 投資経験もないうえ、商品のリスクも理解できていないため、適合性の原則に反すると考えられること
 (3) 申込書はまだ銀行にあり契約の成立に疑問があること
 (4) パンフレットでは利益については分かりやすいが、損失については一読しただけで分かるようになっていないこと

などを指摘した。

 これに対して銀行は、「説明は十分に行ったし、勧誘に問題もなかった。為替リスクの説明も行った。預金との違いについて説明を受けた確認書にも署名してもらっている」と回答し、契約成立時期については保険料を振り替える伝票を書いたときか為替の伝票を書いたときであり、本件は両方記入しているため契約は成立している、と主張し、原則取り消しは認めないと言いながらも、持ち帰り検討するとした。

 その後銀行からの提案で、当事者、相談者等家族同席のうえ、受付センターにおいて話し合いが持たれた。その結果、理由は明らかにされなかったが、銀行より差額の4900円を返金することが提案され、当事者側が同意した。また、再発防止策として、高齢者との取引に関しての改善策が全店配布されることとなった。



問題点

 今回は投資経験のまったくない高齢者が「米国通貨建て積立利率変動型個人年金保険」を契約したものである。この商品はリスクも高く、仕組みも難しいため、適合性の原則に反するような取引であったと思われたが、銀行側は認めなかった。

 また、当該契約はクーリング・オフの適用外とされていたが、これは保険業法309条(保険契約の申し込みの撤回等)の施行令第45条、施行規則第241条(保険契約の申し込みの撤回等ができない場合)3項に、「預金または貯金の口座に対する払い込みによる方法」があるためである。しかし、振り込みだからといって、すべてのケースが適用外となるのか疑問であったため金融庁に問い合わせた。金融庁は「保険業法第309条1項6号では消費者保護に欠ける恐れがない場合を規定している。支払いが振り込みの場合にクーリング・オフできないとしているのは、振り込みは自発的意思で行っており、不意打ち性がないとしているためである。ただし、訪問販売等の不意打ち性のある取引では個別的具体的に判断している」とのことであった。

 今回のように訪問販売で銀行員の言うままに手続きをしたケースは「自発的意思による行為」とは言えない。適合性の問題と共に、消費者保護を怠った点にも問題はあろう。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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