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[2008年12月15日:更新]
[2005年1月14日:掲載]

返金されなかった賃貸マンションの敷金

 転勤のため、賃貸マンションを退去することになった。入居の際に礼金と別に敷金4ヶ月分の56万円を支払った。契約時にそのうちの2ヶ月分は返金されないと説明されていた。

 自分ではきれいに使用していたつもりだったが、残り2ヶ月分のうち23万円以上がリフォーム代に充てられると言われた。夫婦2人のみで子供はおらず汚れていないと思う。内訳を出してもらったが、クロス張替部分で納得できない費用もある。

(30歳代 男性 給与生活者)


アドバイス

 賃貸借契約が終了すれば賃借人は建物を明け渡さなくてはいけません。この時に賃借人は建物を元の状態に戻す義務があります。この義務のことを原状回復義務といいます。これは取り付けた造作物等を取り外すことをいうもので、新築で借りたら新築のようにきれいにして戻すというものではありません。賃借人が通常の使用方法で生活した場合の損傷(いわゆる自然損耗)は貸主が負担すべきであるとの学説・判例が示されています(注1)。この考え方が定着していないことが敷金をめぐるトラブルの大きな問題点だと思われます。

 この相談では、業者がクロス張替費や塗装費、諸経費分(18万円)は返還するとし、相談者と合意しました。



コメント&解説

 敷金をめぐるトラブルは年々増加しており、あらゆる損傷の補修費を賃借人に負担させているケースや敷金を上回るハウスクリーニング代を請求されるケースもあります。

 このような状況を受け、国土交通省(当時は建設省)と(財)不動産適正取引推進機構では、1998年3月に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発表し、2004年2月には「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」改訂版【概要本文】(pdf形式)も出しています。ガイドラインであるため、法律的な強制力はありませんが、原状回復の考え方について参考になると思います。

 また、住宅金融公庫の融資を受けて建築された物件については、公庫法、同施行規則等に基づいたガイドライン「入居者の方々との賃貸借契約における注意事項(平成18年度以前お申し込みの方)」が設けられているので確認しておくことも必要です(このガイドラインが適用されるのは融資金の返済中です)。(2008年度加筆:19年度以降の融資物件には、別途「入居者の方々との賃貸借契約における注意事項(平成19年度以降お申し込みの方)」(現:住宅金融支援機構)があります)

  • 礼金、権利金、謝金、更新料などの金品を受領しないこと
  • 退去時に敷金返還に際してあらかじめ一定額を償却するという取り決め(敷引き)がないこと
  • 借主の退去時の原状回復義務の範囲に、通常の使用に伴う損耗分を除いていること

 なお、新たに賃貸マンションを契約する際には、国土交通省が示している「賃貸住宅標準契約書」が参考になるでしょう。

 また東京都では、「東京における住宅の賃貸に係る紛争の防止に関する条例」(2004年3月31日公布、同年10月1日施行)により、宅地建物取引業者に退去時の原状回復などについての説明が義務づけられました。

 トラブルが解決しない場合、少額訴訟(注2)や民事調停制度の利用を検討してみるのも一つの方法です。

(注1)判例の紹介
 原状回復や敷金の返還をめぐり、多くの判例があります。判決内容は自然損耗分は貸主の負担とするといったものが多いのですが、中には自然損耗分も含め賃借人が負担するとした判決もあります。

  • 自然損耗分は貸主の負担とした判決例
  • 京都簡裁 平成6.11.22判決

判決要旨
「本件賃貸借契約は、新改築した新しい本件建物につき締結されたが、賃借人に本件賃貸借契約開始時の状況を復元維持する義務まで課したものではない」

なお、第二審の京都地裁平成7.10.5判決では、「本件賃貸借契約においては、(中略)自然の損耗や汚損についての改修の費用を負担して賃貸当初の原状に復する義務を負っていたとは認められない」との判決がなされました(上告審である大阪高裁平成8.3.19判決も控訴審判決を維持しました)。

  • 自然損耗分も含め賃借人が負担するとした判決例
  • 東京地裁 平成12.12.18判決

判決要旨
「自然損耗分を賃貸人が負担すべきであるとの判断も、実質的妥当性という観点からは一つの合理性を持った見解であると評価できる。しかしながら、消費者保護の観点のみならず、取引の安全、契約の安定性もまた重要な観点として考慮されなくてはならず、(中略)自己の意志に基づいて契約を締結した以上はその責任において契約に拘束されるのが大前提である。よって、本件特約条項(賃借人がハウスクリーニング等の費用を負担する条項)は文言通りの拘束力を持ち、自然損耗分も含め賃借人が負担するものである」

なお、この判決は第二審であり、第一審(東京簡裁平成12.6.27判決)では通常の使用では生じない汚損・損耗分は賃借人の負担とし、それ以外の敷金は賃借人に返還すべきとする内容の判決が出されていました。

(注2)少額訴訟について
少額訴訟の特徴

(1)60万円以下の金銭の支払いをめぐるトラブルに限って利用できます。
(2)原則として審理は1回です。直ちに判決を言い渡します。
(3)少額訴訟判決に対して不服がある場合、判決をした裁判所に異議申し立てをすることができます。
(4)申立手数料は、訴訟額5万毎に500円です。
(例えば、23万円の敷金返還請求の訴えを起こす場合、手数料は2,500円となります。)
(5)裁判所には定型訴状用紙や定型答弁書用紙が備え付けられています。

※2008年12月15日に一部加筆・訂正を行いました。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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