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[2005年1月20日:掲載]

内容に納得できないと解約を申し出た自己啓発用教材

 契約後の解約については、クーリング・オフが適用される場合以外は、基本的に事業者との話し合いによる合意解約となる。しかし商品の場合、通常商品が引き渡されれば契約完了となるため、その後解約を希望しても簡単には合意に至らないことが多い。今回は教材の内容とその支援(フォロー)が不満で解約を申し出た事例を紹介する。

相談内容

 仕事の人間関係で悩みを持っていたとき読んだ本で、自己啓発用の教材のことを知り資料を請求した。その後事業者の担当者から電話があり、資料請求をした理由や悩みのことなどを話した。担当者から「この教材を活用していけば思考力や決断力がつく。考え方がプラス思考に変わっていくので緊張や不安などがなくなり、自信を持って仕事に臨めるようになる。人間関係でも、相手の言った内容をどのように解釈し、どのように自分に返していけばよいかなど具体的な接し方が分かるようになるので、主体的な立場で関係を展開していくようになれる」と説明され、コース教材を勧められた。高額なため迷ったが、「今後変わっていく自分を実感して、この時期に決断してよかったと思うようになる。今契約すれば年内に商品を届けることができる。早いスタートの方がよいのではないか」と言われ、承諾した。

 数日後、女性担当者が自宅近くまで来て、近所の公園で商品の構成や契約内容の確認をし、その場で契約書類に記入することになった。商品金額の総額238万円という金額を見てやはり不安を感じたが、女性担当者から、プログラムの価値を絶賛する人はいても今まで解約した人を見たことがないこと、電話で話した担当者がいかに人望のある人かなどの話を聞き、その人がフォローしてくれるのだから信用できると思った。

 まじめに使用し、はじめのうちこそ自信がついてきたような気もし、定期フォローでアドバイスを受けたり相談にのってもらえたが、3回ほどの定期フォローの後はなかなか連絡が取れなくなった。教材の内容も、自分が望んでいた人間関係が円滑になるというものではなく、あまりに自分の成功のみを志向するような内容であるように思え、強い抵抗感を感じるようになった。その違和感を相談しようと何度か担当者に連絡したが、いつも不在を伝えられ、だんだんと事業者への不信感も募っていった。もう自分には役に立つものだとは思えないので解約したい。

(20歳代 女性 給与生活者)

処理概要

 当初、相談者の居住地の消費生活センター(以下、受付センター)が相談を受け、事業者と交渉を行っていた。国民生活センター(以下、当センター)にも当該事業者の相談は多数入っており、教材を使用し続けるための支援サービス(フォロー)についての約束が守られない等の苦情が目立っていた。そこで、フォロー体制や勧誘時にフォローについての説明に問題があるのではないかと考えられたため、受付センターから引き継ぎ、当センターで三者面談を行い、それぞれの主張を聞いた。

 事業者は、あくまで契約は教材の販売である、相談者が不満を表明しているフォローについては、サービスで行っているだけであり、その旨は契約書にも明記している、フォローが途切れたのは相談者と担当者の時間が合わなかったためであり、こちらからも連絡はしていたがすれ違いになり迷惑をかけたことは申し訳なく思っている、教材の内容については今後しっかりとフォローをし、納得した使い方をしてもらえると思っている、と主張した。

 しかし相談者は、教材の内容が、自分が望んでいた人間関係をスムーズにするようなものではなく、自己の成功のみを志向するものであり、期待していたものとは違うと思っていること、信頼していた定期フォローも受けられず不信感を持ったこと、今からフォローをしっかりすると言われても、もう不要なので解約を望むと強く要求した。そこで、事業者は解約の方向で検討すると回答した。

 当センターからは、高額な契約にもかかわらず、公園で契約書の記入を要求したのは契約を急がせるためと感じられること、フォローについてはサービスだというが、寄せられる当該事業者への他の相談にも、フォローを頼りにして契約を決心したという事例が多く、契約の意思決定に重要な要素となっていると思われる旨を伝えた。

 事業者は、フォローについてはサービスなのだから、それが解約の理由にはならないと主張を繰り返し、当センターは、役務に近い実態があるのだから、それに不備があったのなら解約理由として認めるべきではないかと主張したが、これについては平行線のままであった。

 フォローについての考え方は認めなかったが、最終的に事業者は契約を急がせたことを解約理由として認めるとし、返品解約に応じ、全額返金された。

問題点

 契約内容が商品の購入の場合は、商品が全部渡されれば契約は成立したことになる。しかし、その商品が契約したはずのものと違う場合、契約が成立したとはいえない。

 それが、今回のような商品の場合どう考えるかは難しい。契約書面上の商品一式は確かに全部渡されたが、購入者が実際に購入したのは、その「効果」や「結果」であるからである。効果があったと思えた人には何百万円もの金額も必ずしも高くはないであろうが、効果がないと思った人には、「説明された内容と違う」という不満になってしまう。

 事業者の扱う商品は金額的に高額なうえ、その効果が得られる保証がないという点を考慮した場合、フォローの有無が消費者の契約の意思決定に大きな影響を与えているものと思われる。実際、本件の相談者の契約も同様だった。事業者は「フォローはあくまでもサービスであり、役務ではない」としているが、フォローに関する苦情が多発している現状を鑑みると、フォローに関わる考え方やフォロー体制の再構築が望まれる。


ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。