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[2012年11月6日:更新]
[2003年5月20日:掲載]

海外パック旅行中車の転落事故でけが

  旅行に関する相談は、毎年、多数寄せられている。今回は、海外パック旅行中に運転手の乱暴な運転で事故に遭い、旅行会社に対して補償を求めた事例を紹介する。

相談内容

 旅行会社を通じて海外パック(主催)旅行を申し込みモロッコへ行った。観光のため5台の現地運送会社の手配した車で、山中の遺跡へ向かった。その途中、自分が乗った車の運転手がスピードを出し、対向車と衝突しそうなほど乱暴な運転をしていた。遺跡に到着し、ツアー添乗員にどうにかしてほしいと頼んだが、添乗員は「そうですか、注意します」と言うだけで、直接運転手に注意した様子はなかった。遺跡からある村に向かったとき、山道のカーブを猛スピードで片手運転し、道から転落。私は肋骨を6本骨折し、現地で6日間入院し帰国した。帰国後も痛みが続き、生活に支障が出た。

 最初に旅行会社から連絡があり、28万円の返金を提示されたが、旅行会社に事故の責任があり、損害賠償が請求できると思う。添乗員は、運転手の危険な運転について、現地運送会社のボス格に注意したと言っているが、運転手に伝わっていたのか疑問であり、現に事故が起きた。添乗員が事故の起きた車に一緒に乗り直接注意することもできたのではないか。また、添乗員は村まで往路と同じ道を通ると思っており、事故の起きた道を通ることを知らなかったという。添乗員が道の選択にかかわらないのは安全確保義務を果たしていないのではないか。自分で旅行会社と交渉をした結果、約145万円が支払われることになった。しかし、最終的な事故の責任は、現地運送会社にあり、約款による賠償責任はないと譲らない。納得できない。

(40代 女性 給与生活者)

処理概要

 相談を受けて相談者の申し込んだ海外パック旅行の約款を確認したところ、運送機関の事故により発生する損害を被った場合、旅行会社は損害賠償責任を負わない、という旨の条項があった。また、同様の海外パック旅行中のバス転落事故では、旅行業者は、旅行者に対し、「旅行者の生命、身体、財産等の安全を確保するため、旅行目的地、旅行日程、旅行サービス機関の選択等に関し、あらかじめ十分に調査・検討し、専門業者としての合理的な判断をし、また、その契約内容の実施に関し、遭遇する危険を排除すべく合理的な措置を取るべき注意義務(安全確保義務)」があるという判決(東京地裁平成元年6月20日判決 判例時報1341号20頁)がある。旅行会社に損害賠償責任があるか、これを踏まえて検討をした。

(1) 当センター顧問弁護士の助言

 基本的には判例の考え方に立ち、旅行会社に運転手等の選定について過失が存在しなければ、原則として旅行会社の責任はないと考えられる。ただし、運転手が危険な運転をしているのを知りながら添乗員が放置していたような事情があれば、旅行会社は責任を認めなければならないと思われる。ボス格に注意をしたからといって十分義務を果たしたとは言い難いがそれ以上に何かできたかどうかが問題となる。旅行会社の責任の程度は、添乗員の対応や危険予知の程度により決まる。

(2) 旅行会社のお客様相談室の見解

 事故の原因は運転手の運転ミスであり、当社のツアーの企画、手配に過失がないので、最終的な事故の責任は、現地運送会社にある。また、その道は著名なルートの公道であり、安全確保義務を怠ったとは考えていない。ただし、添乗員が運転手の交代や添乗員の同乗といった適切な処置を取っていなかったことは判断ミスと認め、慰謝料を支払う。現地の補償額はとても低いので、現段階で提示した金額を当社が支払い、現地運送会社に請求するが、どのくらい支払ってくれるかは分からない。

(3) (社)日本旅行業協会の見解

 旅行会社がした現地運送会社の選定に問題があったかどうか。また、添乗員は運転手に命令をする権限がなく、現地運送会社から注意をするしかないので、添乗員の行動は許容範囲であろう。運転手も、現実に免許を持っていれば、選定に問題があったとまではいえない。通った道の選択についても、ほかの車は事故を起こしていないことから、その道を選択したことによって事故が起きたとは考えにくい。

 以上の考え方をまとめて、旅行会社に全責任を問うことは難しく、現在の提示金額以上の要求をする根拠はないと考え、裁判にゆだねるしかない旨を相談者に伝え相談を終了した。相談者は、「事故後、初めてこのような場合に、旅行会社が責任を取ってくれないことを知った。現地運送会社の責任というなら、現地運送会社についての情報は事前に知らせるべきである」と主張した。

問題点

 消費者は、通常申し込みをする旅行会社を信頼して契約をするのであり、契約の際に、現地運送会社がどのような会社か、事故が起きたときに補償する資力があるかどうかを知ることはできない。トラブルの際は旅行会社がすべて面倒を見てくれると考えがちである。

 現状は、標準旅行業約款に特別補償の規定があり、旅行会社に、主催旅行契約に基づく債務不履行責任があるか否かを問わず、定められた基準を満たせば、死亡補償金、後遺障害補償金、入院見舞金、携帯品損害補償金を旅行会社が支払うことになっている(旅行業者は、特別補償の支払い責任を担保するための主催旅行保険に加入している)。その額が不満な場合には、裁判で旅行会社の損害賠償責任を問うことになる。旅行会社の責任が認められなければ、特別補償以上の補償金を求められないため、損害実費は消費者負担になる。万が一の場合に備えて旅行傷害保険をかける必要がある。


ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。