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[2002年9月20日:掲載]

百貨店のエレベーターのドアの透き間に手を挟みケガ

 閉まりかけたエレベーターのドアの透き間に手が入り込み、7針を縫うケガを負ったというまれな事故で、施設管理者であるデパートに損害賠償を求めた事例である。

相談内容

5ヶ月前、デパートの6階から自動運転のエレベーターに乗り、2階で降りようとした際、ドアが閉まってきたので、思わず左手でドアを止めようとしたら、えぐられるような痛みを感じた。左手薬指からかなりひどく出血したので、救急車で病院に運んでもらった。7針を縫ったが、腱は切れていなかったので、その日は帰宅した。

 翌日、デパートの責任者が来訪し、「当方の施設内で起きた出来事ですから、治療費は全額当社が負担しますが、それ以上のことは考えていません」と告げられた。

 無理な利用の仕方はしていないのに、なぜ結果として3ヶ月も通院するケガをしてしまったのか。ほかに対処方法があったとは思えない。だとしたら、今後も同じような事故が起こるかもしれない。施設設備の管理上の責任をどう問うことができるか。

(50歳代 女性 家事従事者)

処理概要

1. 相談を寄せるまでの自主交渉の経緯

 相談者から詳しい経緯を聴き取ったところ、事故当日行動を共にしていた友人がデパートの責任者と交渉を続け、(1)治療費の実費、(2)通院慰謝料、(3)後遺障害慰謝料の3項目合計で約110万円の支払いを請求したという。これに対してデパート側は、(1)は全額を、(2)については、承服できない点もあるが請求どおりに、(3)については、治療に当たった病院の診断結果や事故の場合の後遺障害別等級表等を参考に検討したが、要求額(約110万円)の7分の1を支払う。以上3項目を合計すると52万円余りとなるが、発生原因および設備上の問題点等について検討した結果、当方の負担を7割とし、36万円余りの額を支払うとの回答だったという。

 相談者らは、事故現場を自ら検証し、内側ドアと外側ドアの透き間は大人の手がすっぽり入ってしまうほどのもので、内側の折り返し部分は、切断面がほとんど切りっ放し状態で、面取りの不備があると感じたという。

2. デパートからの事情聴取

 デパート側は、相談者が同社施設内のエレベーターで負傷した事実を認めたうえで、事故の際、当該エレベーターには相談者ら2人しか搭乗しておらず、2階に到着後も強引にほかの利用者が乗り込んできた様子もないことから、なぜドアが閉じるまでに降り終わることができなかったのか疑問が残るとのことだった。

 本件は行政庁に事故の報告を行っているし、法定の定期検査も受けており、整備・点検等に問題はなかったが、相談者はお客様であり、円満な解決をしたい。ただ、設備管理上の手落ちがあったわけでもなく、相談者の請求する補償額全額を支払うことはできないとのことだった。

3. エレベーター製造者およびメンテナンス会社からの事情聴取

 当該エレベーターは、到着後ドアが開いてから8秒間開いたままになるよう設定してあったが、事故後の検証では設定どおり機能していた。通常この設定は4秒であり、乗降時間としては十分であったと考える。ドアを開いた状態で維持したければ、操作パネルの「開」ボタンを押し続ければ可能であり、さらにドアにぶつかりそうな場合は、ドア先端に取り付けられた安全シュー(いわゆる安全ストッパー)に手を触れることで、ドアの動きを反転させることができるため、そうするのが通常の乗客の動作だと思われる。内側ドアと外側ドアの間に手を入れることは、通常予見される使用形態とは考えていないし、事故の防止に当たっては、利用者側もドアの動きに注意を払う必要があると思われる。

 また、製造者に残存する過去17年余りの記録によれば、利用者による同種事故は発生していない。

 内側ドアと外側ドアの関係寸法、ドアの隠し板構造などは法令等では規定はなく、ドアの周辺の基準はあるが、当該エレベーターはこれらの基準をすべて満たしたものである。

 製造者らからは、以上のような説明があったが、実際に事故が発生したことにかんがみ、万一利用者が当該部分へ手を入れた場合に、被害を未然に防ぐ対策を検討し、新規生産品への反映をしたいとの意向が示された。既設品については、注意ラベル等による注意喚起を実施することを推奨したいとのことだった。

4. 法律相談の弁護士による助言

 当センターの弁護士は、「当該エレベーターは不特定多数の人が利用することから、高度な安全性が要求され、今回のような事故で負傷することがあることは予見できたと思われる。双方の過失割合は明確にできないが、相談者に3割の過失というデパート側の主張に納得できないという気持ちも理解できる。ただ、ケガの状況からすると、後遺障害慰謝料を求めるのは困難と思われる」とのことだった。

5. 結果

 相談者は、当センターが間に入ったことにより、交渉における透明性が担保できたことと、弁護士の助言により解決水準の目安も理解できたことから、最終的にデパート側が、65万円の和解金を支払うことで、合意した。

問題点

 不特定多数の人が利用する施設のエレベーターでは、より高度な安全性が求められる。製造者はこの点を踏まえた製品作りを目指してほしい。また、施設管理者も利用者に対する注意喚起が必要と思われる。利用者も、余裕を持って乗降したい。


ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。