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[2002年4月19日:掲載]

判断不十分な高齢者への着物の過量販売

 近年、高齢者の相談は増加傾向にある。今回紹介する相談は、家族の気がつかないうちに高齢者がたくさんの着物などを購入していたという事例である。


相談内容

 父が5年前に亡くなり、77歳の母は一人で年金生活をしていた。あるとき、預金通帳の残高がほとんどないことに気づき母に尋ねたところ、着物を買ったようだ。家の中を探すと契約書等が出てきて、この2年間で13回も着物や帯を購入していた。母が着物を着ることはめったにない。

 地元の市役所に相談したところ、母に正常な判断能力があるかどうか医師の診察を受け、診断書を持って弁護士相談に行くように助言された。ところが、弁護士には「この診断書では過去の契約にさかのぼって解約交渉するのは難しい」といわれた。せめて最近のものだけでも解約できないか。

(相談者 男性 41歳、自営業)

(当事者 相談者の母親、77歳、無職)



処理概要

1.資料の検討と当事者への聞き取り

 13回の契約内容は約2年間で着物類と帯各6点、小物類2点、総額約930万円。販売店は同じだが信販会社は3社にわたる。相談者に直近の契約書と診断書を送付してもらった。2002年5月の診断書には「アルツハイマー型痴呆症」(以下痴呆症)とあり、発病時期、痴呆の程度等の記載もなかった。

 当センターから当事者の母親に電話で内容を確認した。

 母親は「押し売りされた。車が迎えに来て展示会へ連れて行かれた。『展示会に来た記念にサインをして』といわれ名前を書かされたが着物を買った覚えはない。着物はいらない」という内容を繰り返し話した。

2.販売店との交渉

(1)2002年5月に痴呆症と診断されているので、すでに契約時に十分な判断ができたか疑問だ。「押し売りされた」と言っており、契約を理解していない。

(2)ほとんど着物を着ない人にこれほどの契約は過量販売といえる。

(3)契約内容を説明せず「記念に名前を書いて」と言って、クレジット書面に署名させている。

(4)相談者は、母には着物を購入した認識はないと主張している。

 これに対し販売店は「以前から展示会への招待や反物をお宅へ持参して買ってもらっている。80歳以上のお客様も大勢いるし、着ることだけが目的でない人もいる。販売方法等に落ち度はないと思っているので返品・返金は受けられない。支払いが大変なら減額する」と回答し、最後の契約の237万円を200万円に減額すると伝えてきた。しかし、相談者の希望とはかけ離れているので再検討を依頼した。

3.信販会社との交渉

 センターは信販会社のお客様相談室にも回答を求めた。

(1)クレジット書面の署名は本人によるものだが、それ以外は他の人の筆跡であるがだれが記入したのか。

(2)年金生活者であるにもかかわらず非常に高額な(当該信販会社による契約は計492万円)契約を結んだのは過剰与信ではないのか。

 (1)の問いは展示会であったので会場に当社の社員が出向き、直接面談調査をした。その際、社員が記入した。

 (2)には今まで延滞したことがないので与信した。高齢者という理由で与信しないことはない。年齢で与信を拒否するのは差別になる。母親の痴呆症に気づかない家族にも責任があるのではないか。とはいえ、全体として販売に行き過ぎがあったことは認めるので、さらに調査したい。解決案をすぐに提示はできないが、高齢者契約は今後増加し、トラブルもあり得るので検討したい。

 交渉の末、やっと四者(販売店、信販会社、当事者ら、センター)面談が実現した当日、早めに相談者と当事者に来所してもらった。最初、母親は、「着物の金額について説明されていない。237万円もするなんて知らなかった。着物を買ったつもりもない」等と答え、契約したことに対する認識がない様子だったが、突然、興奮して「着物は着ないけど、私の趣味。好きなの」と声高にまくし立てるという具合に急激に話が変化した。そこで精神的に不安定な状況になったようなので別室に待機してもらうことにした。

 相談者は「質素に暮らしていた母が父の遺産を着物に投じてしまうなんて信じられない。必要以上に買わされた。年寄りに優しくしてこんなに高額なものを売るのは悪質だ」等と訴えた。販売店は「強引な売り方はしていない。欲しいといわれたので、支払いができるかを何度も確認して契約に至った。痴呆とは思わなかった。寸法も本人に合わせて縫っているので返品は受けられない。販売店は支払いが大変なら120万円まで下げる」としたが、相談者は「払えない」と拒否した。

 信販会社から「現在、支払い中で商品が納品された2件の支払いはしてほしい。未納の着物は当社が引き取る。家族の責任として違約金を支払ってほしい」という提案であった。違約金の具体的な数字はなかったが、この案に三者が合意した。その後、相談者から違約金10万円の申し出があり信販会社が了承した。



問題点

(1)販売店はこれまで過量販売の苦情はなく、納得して契約に至ったと主張したが、年金生活の高齢者に900万円を超える契約は過量ではないのだろうか。

(2)信販会社は、今まで延滞したことがなかったので与信したと説明したが、結果的に与信に全く問題がなかったとはいえない。また高齢者への与信については会社として今後検討するべきことがあるという見解を明らかにした。

 今回は、相談者の主張が信販会社に認められ解決に至った。今後、被害の未然防止のためにも信販会社には慎重に与信をしてほしい。

 一方、家族も高齢者を孤立させないことが未然防止には大切だろう。痴呆の進み具合によっては成年後見制の利用の検討も必要ではないか。




ここに掲載する相談事例は、当時の法令や社会状況に基づき、一つの参考例として掲載するものです。
同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況や問題発生の時期などが異なれば、解決内容も違ってきます。

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