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[2019年2月:公表]

サクラサイトに加担した収納代行業者の不法行為責任を認めた事例

 本件は、出会い系サイトを利用したいわゆるサクラサイト*1商法の被害にあった消費者が、収納代行業者2社とその代表取締役に対して、共同不法行為による損害賠償請求をした事例である。

 裁判所は「収納代行業者とその代表取締役は、自らの行為が振り込め詐欺における『出し子』に当たることを十分に認識しており、サイト運営者と一体となって詐欺行為を行っていたものと認められる」と判断して、収納代行業者らに損害賠償を命じた。

 サクラサイトの事例で収納代行業者の責任を認めた点において、参考になる判決である。(東京地裁平成29年5月10日判決、LEX/DB掲載)

  • *1 サイト業者に雇われた“サクラ”が異性、タレント、社長、弁護士、占い師などのキャラクターになりすまして、消費者のさまざまな気持ちを利用し、サイトに誘導し、メール交換等の有料サービスを利用させ、その度に支払いを続けさせるサイト。

事案の概要

原告:
X(消費者)
被告:
Y1(収納代行業者)、Y2(Y1の代表取締役)、Y3(収納代行業者)、Y4(Y3の代表取締役)
関係者:
A、B、C(サクラ)、D(本件サイト運営者の担当者)

 Xは、2015年4月頃から、連日のようにX宛てに届いた迷惑メールの本文のリンクを経由して出会い系サイト(以下、本件サイト)を利用するようになった。その後、毎日のように本件サイト運営者から「〇〇様からメッセージが届いている」という内容のメールが届くようになった。Xは、本件サイトでメールのやりとりをするために、最初は既にアカウントに入っていたポイントを利用していたが、他の登録会員から次のような要請を受けてポイントを購入するようになった。

 すなわち、4月8日、Aなる名称の会員から、「私が譲渡したポイントを1回の手続きで換金を行って個人情報も受け取ってもらえませんか?」などのメッセージを受け、本件サイト運営者からも同内容のメッセージを受けた。Xは、同ポイント等を受け取りたいという旨の返信をし、その後、ポイントを換金するための手続きのためにYらの口座に振り込みをした。また、同日にBなる名称の会員からも、8500万円を無償で贈与したいなどとするメッセージを受け取り、会いたいと返信すると、Bから「待ち合わせ場所が文字化けしており、文字化けを解除するために本件サイトのポイントを購入して一定の合言葉を本件サイトに送信する必要がある」旨のメッセージを受けた。またCなる名称の会員からも文字化け解除の手続きを要求するメッセージを受け、その後Yらの口座に指定された金額を送金するなどした。なお、Y1の口座については、2015年5月13日に振込先が変更されている(それぞれ「旧Y1口座」「新Y1口座」とする)。

 Xは、前記のように本件サイト運営者に言われるまま、本件サイト運営者から指定されたYらの口座に、さまざまな名目で繰り返し振り込みを行った。その内訳はY1口座につき合計1549万円(旧Y1口座290万円、新Y1口座1259万円)、Y3口座につき合計232万円である。Xと本件サイト運営者とのやりとりやA、B、Cなるものの実態が不明であることから明らかなように、本件サイトは、本件サイト運営者に雇われたいわゆるサクラが、Xのさまざまな気持ちを利用し、本件サイトに誘導し、メール交換等の有料サービスを利用させ、そのつどに支払いをさせるようなサクラサイトである。

 Y1およびY3は、収納代行業者であり、Y2およびY4はそれぞれの会社の代表取締役であり、両社とも他に従業員はいない。Y1およびY3は、2015年4月、セーシェル共和国に所在すると称する、本件サイト運営者のDと名乗る者から「御社サービスをお申込したくご連絡致しました」との日本語のメールを受け取り、その後もすべて日本語でのメールでやり取りし、また、Y2は電話でDと日本語でのやり取りをし、本件サイトが出会い系サイトであること、口座が止められる可能性があることを知ったが、Dの本人確認書類を要求することも、サイト運営会社の会社情報の照会をすることもないまま収納代行業務を行う契約をした。その際、Dが知らせてきた電話番号は無関係な第三者のものであることが後日判明した。

 Y1は、当初は、事務所近くのATMから1日2回現金を引き出し紙袋に入れた状態で本件サイト運営者の指示した人物に駅近くの屋外喫煙所か喫茶店で引き渡していた。上記口座が凍結された後に、Y1は直ちに新しい口座を提供し、1日数回、多いときは1日に6回の不自然な引き出し行為を行い、引き出す度に上記と同様に現金を手渡ししていた。Y3についても、相手方の確認もしないままに口座を提供し、口座に振り込まれた金員を頻繁に現金で出金し、本件サイト運営者に直接手渡していた。

 以上の状況の下で、Xは、収納代行業者Y1およびY3と各社の唯一の業務従事者であり代表取締役であるY2およびY4に対して、被害金額全額について共同不法行為に基づく損害賠償を求めて提訴した。

理由

Yらの共同不法行為責任の成否

 本件サイトはいわゆるサクラサイトであり、本件サイト運営者は、自らまたはサクラであるAらを使って、Xに対して資金供与を受けられる旨の虚偽のメッセージを送信し、これを閲覧したXをしてその旨誤信させ、ポイント購入を名目に多額の金員を支払わせたいわゆるサクラサイト商法により、Xに対する詐欺を行っていたものである。また、Y1およびY2は、自らの行為が、振り込め詐欺における「出し子」に当たることについては、十分認識しており、本件サイト運営者と共謀して詐欺行為を行っていたものというべきである。さらに、Y3およびY4も、本件サイト運営者と一体となって詐欺行為を行っていたものである。

全損害についての共同不法行為責任について(関連共同性*2についての判断)

 Y1およびY3は、出会い系サイトを使った本件詐欺商法において、本件サイト運営者らに自ら開設した口座を利用させ、Xからの騙取金(へんしゅきん)を受け取る役割を果たした者らであり、本件詐欺商法に必要不可欠な道具として自らの預金口座を詐欺行為に利用させることによって、またY2およびY4は、自らXから騙取した被害金を口座から引き出し、本件サイト業者に届けるなどして、本件全体に加担していたとして、Xの全損害について、実行行為者である本件サイト運営者らとの共同不法行為に当たるとXは主張する。しかし、Y1およびY2との本件サイト運営者との共謀、Y3およびY4ならびにサイト運営者との共謀は認められるものの、Y1およびY2ならびにY3およびY4との共謀を認めるに足りる証拠は存在しない。そして、Xの本件の一連の詐欺被害に関して、Xの各振り込みについて個々に見れば、各振り込みごとに完結しているといえるから、各Yらが責任を負う範囲は、Y1およびY2については新旧Y1口座が用いられた範囲内で、Y3およびY4については、Y3口座が用いられた振り込みの範囲内で、それぞれ本件サイト運営者の行為と関連共同性を有するにとどまり、本件犯行全体について共同不法行為が成立するものと認めることはできない。

  • *2 それぞれの行為が客観的にみて共同で加害行為を行ったと認められること。

解説

 いわゆるサクラサイト商法による被害が多発しているが、サクラサイト商法では、サイト運営者を特定することが困難なことが多く、被害者である消費者が支払ってしまった金銭をサイト運営者から取り戻すことは困難なことが多い。本件は、典型的なサクラサイト商法について、サイト運営者に対して振込用の口座を提供していた「収納代行業者」とその代表取締役について、詐欺行為の「出し子」に当たることを十分認識していたのであり(業者らは否定したが、裁判所は事件当時の社会事情、業者の行為態様などから業者の言い分を不自然として認めなかった)、サイト運営者との間に共謀があったもので一体として詐欺行為を行っていたものと認定し、共同不法行為責任を認めた事例である。

 本件は、第一に、サクラを利用した出会い系サイトについて、サクラサイト商法であり不法行為に該当すると判断した点が、類似の消費生活相談の参考になる。第二に、サイト運営者に口座を提供した「収納代行業者」およびその代表取締役について、サイト業者と一体として詐欺行為を行っていたとして共同不法行為責任を認めた点が参考になる。なお、原告代理人は、2社の「収納代行業者」には、全損害について共同不法行為を構成すると主張したが、判決では、「収納代行業者」2社との間の共謀は証拠上認められないとして、各振り込みごとに、該当する振り込みに口座を提供した部分について関連共同性を認めて共同不法行為責任を認めた。

 本件判決が不法行為についての共謀があったと認定した事情としては、収納代行の契約の際に本人確認や会社の照会手続きなどをしていないこと、出会い系サイト業者であることおよび口座が凍結される可能性を知りつつ契約していること(Y1)、口座が凍結されると直ちに新しい口座を提供していること(Y1)、1日に複数回振込金を引き出し、紙袋に入れて直接手渡すといった不自然な引き渡し方法をとっていること、などの特殊な事情があったことが指摘できる。

 詐欺行為に対して詐欺行為に使用する道具を提供した者について不法行為責任を認めた事例には、下記の判決などがある。買え買え詐欺などに私書箱サービス(参考判例[2])、銀行口座(参考判例[3])、電話転送サービス(参考判例[4])などを提供していた者について、契約締結時の本人確認を怠るなどの過失による不法行為を構成するとして損害賠償を命じた事例である。本件ではサイト運営者との共謀があったものでサイト運営者と一体となって詐欺行為を行ったと認めた点に特徴がある。

参考判例

  1. [1]大阪高裁平成29年4月20日判決(裁判所ウェブサイト 安愚楽牧場事件(関連共同性に関する事例))
  2. [2]東京地裁平成26年12月10日判決(『消費者法ニュース』103号283ページ)
  3. [3]東京地裁平成27年3月4日判決(ウエストロー・ジャパン)
  4. [4]さいたま地裁平成27年5月12日判決(『消費者法ニュース』104号370ページ)、劇場型勧誘で使われた電話転送サービス提供事業者の責任(2017年1月)