独立行政法人国民生活センター

検索メニュー

×閉じる

現在の位置:トップページ > 相談事例・判例 > 消費者問題の判例集 > 廃棄物が埋められた土地を販売した業者の瑕疵担保責任が認められた事例

ここから本文
[2018年12月:公表]

廃棄物が埋められた土地を販売した業者の瑕疵担保責任が認められた事例

 本件は、別荘地の購入後、建物の基礎の施工中に東日本大震災が発生し、建物基礎に生じたひび割れを補修するために土地を掘削したところ廃棄物が埋められていたことが分かったことを理由に、消費者が土地の販売業者に対して、瑕疵(かし)担保責任に基づいて損害賠償を請求した事例である。

 裁判所は、当該土地に「隠れた瑕疵」の存在を認め、土地の販売業者に廃棄物の除去費用・処理費用等の支払いを命じた(建物の基礎の撤去・再築費用の支払いは否定)。

 建物の基礎施工中に廃棄物の存在が明らかになった事例における「瑕疵」の有無の判断と損害賠償の範囲について、参考になる判決である。(東京地裁平成26年11月17日判決、LEX/DB掲載)


事案の概要

原告:
X1、X2(消費者)
被告:
Y(土地販売業者)
関係者:
A(建物の建築を請け負った業者)

 Xらは、別荘地として分譲された一画にある土地1および土地2(土地1の隣接地)を2010年4月29日に1000万円でYから購入した。その後Xらは土地1に木造丸太組工法の建物を建築することとしてAと請負契約を締結した。建築工事は2010年11月1日に着工され、基礎工事が進められた。しかし2011年3月11日に東日本大震災が発生した。現地は震度5強だったが、本件別荘地で建物の損壊や土地の液状化が生じた事実はうかがわれない。震災後、施工中の基礎に2カ所のひび割れが生じ、土地1・2に隣接する側溝および道路は陥没し、電柱も傾いた。この基礎の補修のためAの下請会社が土地1の基礎のそばを掘削したところ、基礎のすぐ下の地中から産業廃棄物が発見された。そこでさらに基礎回り幅1.5m、深さ2mを掘削すると、コンクリート塊、大柄な配管パイプ、缶、瓶、石等合計2トンの廃棄物が掘り出された。同年4月にYも現地で廃棄物の確認をした。そのうえでYはXに「通知書」と題する書面を送付し、「発見された場所の深さからして、基礎工事中には既に埋蔵物が発見されており、施工業者が強度に問題なしと判断して基礎工事をしたものと思われる。廃棄物についてはYの費用で掘り出し撤去するが、基礎の撤去および再施工費は基礎工事中に廃棄物の存在を認識しながらXにもYにも知らせず工事を続けたAの責任である」と伝えた。

 Xらは土地1の廃棄物を撤去することとし、基礎を解体撤去し、廃棄物を取り出し、改めて基礎を設置した(基礎をジャッキアップする工法もあったが、費用がより高額になると判断して前記工法とした)。

 Xらは2012年1月11日にYに既存基礎撤去、表層改良、新規基礎設置、産業廃棄物除去および処理費用約402万円の支払いを請求した。訴訟においては土地2の廃棄物処理費用(隣接地である土地2にも土地1同様廃棄物が埋設されていることが合理的に推察されるとした)も含め約500万円を請求している。Xらは、瑕疵担保責任(民法570条)による損害賠償請求権に基づき、選択的に(1)産業廃棄物を撤去する費用自体を損害として、または(2)土地1に産業廃棄物が存在したことにより、東日本大震災の際に、前記基礎に亀裂が発生したとして基礎の亀裂を損害として、請求している。

理由

隠れた瑕疵の有無について

(1)土地1について

 宅地の売買において、その土地上に建物を建築するのに支障となる質・量の異物が地中に存在する場合には、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の瑕疵になるものと解すべきである。

 本件売買契約は、別荘を建てることを目的としているところ、本件廃棄物は、本件基礎のすぐ下に、かつ大量に存在し、その中身も大柄な配管パイプ等であったことからすれば、建物の建築について支障となる質・量の異物が地中に存在しているといえ、宅地として通常有すべき性状を備えていないというべきであるから「瑕疵」に当たると認めるのが相当である。そして、本件廃棄物は、その存在した場所からすれば、取引上要求される一般的な注意では発見できないといえるから、民法570条の「隠れた瑕疵」に該当するといえる。

(2)本件土地2について

 Xらは、本件土地2にも産業廃棄物が埋設されていると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

本件廃棄物の撤去のための費用としての損害およびその額(選択的請求1)

 (土地1埋設の本件廃棄物が瑕疵に当たるので)本件廃棄物の撤去自体に要する費用は、本件瑕疵に基づく損害である。さらに、Xらは、本件廃棄物の撤去には、本件基礎の解体および再築が必要であることから、これに要する費用についても、本件廃棄物の撤去に必要な費用として、Yが賠償すべき損害であると主張する。

 しかしながら、本件廃棄物は本件基礎のすぐ下に埋設されていたところ、Aが本件基礎を作る際に、本件廃棄物の存在にまったく気づかなかったという点に疑問がある。そして、Aの担当者の、本件基礎の施工に当たり施工場所周辺を30cmほど掘り下げたが産業廃棄物などは出なかった旨の陳述記載を直ちに採用することはできず、他に、Xらより首肯できる説明もなされていないことからすると、Yが指摘するように、Aが本件廃棄物を認識していたにもかかわらず、本件基礎の設置を行った可能性を否定できない。そうすると、Y側からすれば、本件基礎の設置場所のすぐ下に本件廃棄物が埋設されているにもかかわらず、何らの対応も取られないまま、X側の施工業者によって本件基礎の設置が進められた後に、本件基礎の解体および再築の費用までも本件瑕疵から生ずる損害とされることを予見するのは困難であって、本件基礎の解体および再築費用の損害を、Yに負担させるのは相当ではない(破損原因調査費用も否定。結局、損害額を廃棄物撤去に必要な採掘費、埋め戻し費、セメント改良費(地盤改良)および地中埋設物処理費、合計約98万円とした)。

本件廃棄物の埋設により本件基礎が破損したことに基づく損害およびその額(選択的請求2)

 Xは、東日本大震災による本件廃棄物の埋設を原因とした土地の陥没を原因として、または前記土地の陥没に起因して、本件廃棄物と本件基礎とが接触したことを原因として、本件基礎が破損したと主張する。

 しかしながら、Xらの前記主張を認めるに足りる的確な証拠はなく、Yが主張するように、本件廃棄物の埋設とは関係なく、前記地震によって本件基礎の破損が生じた可能性も否定できないことからすれば、Xらの前記主張は採用できない。

解説

 購入した土地に廃棄物が埋設されていた場合に、買主が売主に瑕疵担保責任を追及した事件は多数存在する。多くの事件は単に廃棄物が埋設されていただけでは瑕疵としない傾向にあるが、たいていの場合土地を購入する目的は建物所有であり、それゆえ、建物築造に支障が出れば瑕疵と認められやすい。コンクリート塊や建築廃棄物等が埋まっていると基礎工事に支障が出ると認められている事案が多数ある。本件もその傾向の一事案といえよう。ただ本件は廃棄物があるにもかかわらず基礎工事自体はできていたので、瑕疵がなかったと評価される可能性もあった。しかし裁判所は、確かに本件基礎は施工されていたと認めつつ、本件廃棄物が本件基礎のすぐ下にあったことから、建築される建物の大きさや構造等によっては、建物の建築に支障が出ることは否定できないとして瑕疵の存在を認めている。つまり、一般論としての「建物」を想定している。この点、土地売買契約において築造する建物の形状等が特定されていた場合には、その建物さえ築造できれば瑕疵がないのか、問題が生じ得る可能性がある。

 前記にも関係するが、過去の裁判例と比較して本件で特徴的な点は、基礎が概(おおむ)ねできてから廃棄物の存在が発覚している点である。過去の多くの裁判例では、購入後の調査や建築工事の着工・掘削によりすぐに廃棄物の存在が明らかになっているのに対して、本件は基礎工事がある程度できてから震災を起因として廃棄物の存在が買主に明らかになっている。そのため単なる廃棄物撤去費用だけでなく、でき上がった基礎の撤去・再築費用も賠償の対象となるかが争われている。この点、選択的請求1では建築請負人であるAがおそらく認識しつつXに伝えなかったであろうことを取り上げ、Yの予見可能性を否定することで賠償範囲から除いている。一方、この判決文からは、Aが土地の瑕疵となるような廃棄物の存在を認識しつつXに連絡せずに工事を続行した場合、Aに対する基礎の撤去・再築工事費の請求の余地があることがうかがわれる。選択的請求2では、基礎のひび割れ自体が地震によって生じた廃棄物に起因する陥没によるとの証拠がないとして、こちらも認めていない。そうであればX側が廃棄物の存在が震度5強の揺れで建物の基礎のひび割れを起こしたと立証できれば、認められる余地があったかもしれない(廃棄物の存在に気づいたはずのAが基礎工事に着手しなければ生じなかった損害とみれば、いずれにせよ認められなかった可能性もある)。

参考判例

  1. [1]東京地裁平成25年11月21日判決(LEX/DB)マンション建設目的の土地売買で地中のコンクリート杭を瑕疵と認めた。
  2. [2]さいたま地裁平成22年7月23日判決(裁判所ウェブサイト)宅地販売における廃棄物埋設事案で、建物築造ができ日常生活が送れているとして解除は認めず損害賠償のみ認容した。