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[2017年10月:公表]

除霊サービスと不法行為責任

 本件は、自称スピリチュアルカウンセラーが、除霊ができると称する人物と共謀して、悩みを抱えている消費者と夫に対面相談を行い、生命・身体・財産に対する危険が生じるなどと述べて消費者らの不安や恐怖心をあおり、除霊費用として650万円を支払わせた事例である。

 裁判所は、自称スピリチュアルカウンセラーらの行った除霊の勧誘行為は、消費者の精神的不安につけ込んだもので、社会的相当性を著しく逸脱したものであったとして、不法行為に基づいて弁護士費用も含めた715万円の支払いを命じた。

 消費者の悩みや不安につけ込み、高額な契約をさせる典型的な事例について、一切過失相殺を認めなかった点でも参考になる判決である。(東京地裁平成26年3月26日判決)

  • 『消費者法ニュース』101号338ページ掲載

事案の概要

原告:
X(消費者、当時30歳代半ばの女性)
被告:
Y(自称スピリチュアルカウンセラーでサロンの主宰者)
関係者:
A(サロンで除霊を行っていた者)

 Xは、当時30歳代半ばの会社員の女性で同い年の夫がいる。Xは、2005年に義兄が難病になり家族との会話が少なく孤独を感じるようになったこと、子どもができないこと、2007年頃から知人男性と親密な関係になり罪悪感や自己嫌悪を抱くようになったこと、同年実父が病気で亡くなったことなどから、精神的に不安定となり、親族や知人には相談しづらい悩みを聞いてもらうためにスピリチュアルカウンセラーを自称するYの電話占いを受けるようになった。

 YはXから前記の悩みを聞いて、自分には超自然的能力があり、「魂」「過去世」「霊」等が存在することを前提として、Xに対して回答やアドバイスなどを行っていた。Yは電話占いだけではなく、Y主宰のサロンで面談(セッション)する必要がある旨を述べてXを誘い、サロンでの面談も行うようになった。電話占いでは、Xが親密になった知人男性には「色情霊」が憑(つ)いているとして除霊を勧め、2009年9月にサロンにおいて「対面交霊コース」(25,000円)を行った。サロンにはYとAがおり、Yは「透視」「リーディング」「チャネリング」を、Aは「除霊」を担当していた。

 その後も、電話で2回相談をし、メールでやりとりした。このときYは「夫の状態が非常に悪いので早急に対処すべきである」ともとれる旨のメールをXに送った。そのため、Xは「除霊をすぐに受けなければならない。少なくとも夫を伴ってYとすぐに面会しなければならない」と考え、夫を説得して夫とともに同月にサロンに出向いた。X夫婦は、Yから除霊費用を半額にするなどと説得され、650万円を「非常に安い金額である」として提示されたので、除霊を受けることにした。除霊費用の支払いについてはマンションを売却して支払う話も出たが、最終的に夫の母から不妊治療費として700万円を借りて支払った。

 なお、Xらは各面談が行われる前には、「セッションは治療行為ではなく、効果を保障する(原文のまま)ものではない」旨や、「魔法のような効果を期待している人は受けられない」旨の免責条項が記載された書面に署名をしていた。

 Xは、2012年にYに対して損害賠償を求め、Yが応じなかったので提訴した。



理由

違法性について

 Yらによる説明の内容が科学的に証明できないものであることの1点のみを理由に、直ちにその勧誘行為が違法であると評価すべきではないが、社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものである場合などには、そのような行為は反社会的なものと評価され、公序良俗に反するものとして違法なものになるといわざるを得ない。

 本件においては、客観的にみれば、精神的に不安定であったX(ないしX夫妻)の不安を助長し、そうした心理状態につけ込んで除霊の勧誘がなされたとみることができる。そして、本件で支払われた650万円という金額は、それ自体高額であるうえ、支払原資の調達方法に鑑みてもX夫妻にとって高額である。これらの諸事情に鑑みれば、YらのXに対する除霊の勧誘行為は、それ以前の状況も踏まえると社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものであり、違法なものといわざるを得ない。

クレームを受け付けないとの特約について

 Yは、X夫妻が、クレームを受け付けない旨記載された契約書に署名していること、除霊後にXから感謝のメールがあったこと、Xは除霊後も長時間相談を継続し、除霊費用の返還を求めるようになったのも3年近く経ってからであることを指摘する。しかし、かかる諸点については、不安定な精神状態のX(ないしX夫妻)の不安を助長し、そうした心理状態につけ込んでの除霊勧誘であったという事柄の性質上、格別上記の認定に反するものではない。



解説

 宗教活動と不法行為との関係については、宗教団体に対して行った献金について不法行為に基づく損害賠償請求を認めた参考判例[1]の下記の判断が、同種の事件に関する基本的な基準とされている。

 「一般に、特定宗教の信者が存在の定かでない先祖の因縁や霊界等の話を述べて献金を勧誘する行為は、その要求が社会的にみても正当な目的に基づくものであり、かつ、その方法や結果が社会通念に照らして相当である限り、宗教法人の正当な宗教的活動の範囲内にあるものと認めるのが相当であって、何ら違法でないことはいうまでもない。しかし、これに反し、当該献金勧誘行為が右範囲を逸脱し、その目的が専ら献金等による利益獲得にあるなど不当な目的に基づいていた場合、あるいは先祖の因縁や霊界の話等をし、そのことによる害悪を告知するなどして殊更に相手方の不安をあおり、困惑に陥れるなどのような不相当な方法による場合には、もはや当該献金勧誘行為は、社会的に相当なものとはいい難く、民法が規定する不法行為との関連において違法の評価を受けるものといわなければならない」

 本件は、宗教団体による事例ではなくスピリチュアルカウンセラーと称する個人の行った有料での除霊について、同様の考え方に基づいて判断した事例であるといえる。

 本件のポイントは、(1)精神的に不安定であったX(ないしX夫妻)の不安を助長し、そうした心理状態につけ込んで除霊の勧誘がなされた、(2)支払金額が高額である、ことの2点にある。

 近年では、消費者の悩みにつけ込むような同種の事案が少なくない。

 参考判例[3]は、被告らが、不安や恐怖心をあおるような言動を繰り返して消費者を畏怖・誤信させ、浄霊代等の名目で多額の金員を支払わせた事例である。裁判所は、被告寺院および被告らが行った6年間にわたる行為を全体的にみて、「家族の健康等に対する不安や畏怖を継続的に抱えていた消費者の心理状態につけ込んで、多額の対価を支払って寺院が主催する各儀式を継続的に受けざるを得ないようにするために行われたものであり、消費者の自由意思に基づくものとはいえない状態で行われたといわざるを得ない」と認定し、寺院および勧誘にかかわった被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求を認めた。

 参考判例[4]は、寺の尼僧を標榜(ひょうぼう)する者が健康上の悩み等の相談に来た消費者に対して、その悩みを知りつつそれにつけ込み、狐(きつね)の除霊をしなければ重度のアレルギー症状が持続するとの害悪を告げて殊更に消費者の不安ないし恐怖心をあおり、総額250万円もの不相当な金額を支払わせた事例である。裁判所は、当該行為について、社会的に相当と認められる範囲を逸脱したものとして違法と認定した。

 参考判例[5]は、祈とう師である被告が、専ら利益目的で、霊能力があるように装い、被告の祈とうを受けないと不幸になるなどと消費者の不安をあおって畏怖・誤信させ、祈とう料名目で多額の金銭を支払わせた事例である。裁判所は、当該行為について、社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており違法であると認定した。

 参考判例[6]は、心身の悩みなどで精神的に追い詰められ平常心を失って混乱した消費者の精神状態に乗じて、霊力等がもたらす災いを繰り返し説くことによりさらに不安感をあおり、その災いを取り除くためには被告の提示する諸費用を納めて被告の信奉する神の力に頼るほかないと信じさせて著しく高額な献金(900万円以上)を承諾させ収受した事例である。裁判所は、宗教者が行った献金を求める行為について、その目的、方法、結果のいずれにおいても社会的に相当なものとして是認できる範囲を逸脱しているとした。



参考判例

  1. [1]福岡地裁平成6年5月27日判決(『判例時報』1526号121ページ)宗教団体の信者らによる違法な献金勧誘行為について不法行為の成立を認めた事例
  2. [2]さいたま地裁平成26年2月24日判決(消費者法ニュース101号335ページ)、
    電話占いで相談者をおびえさせ、祈とう料などを払わせた商法を不法行為だとした事例
  3. [3]名古屋地裁平成24年4月13日判決(『判例時報』2153号54ページ)
  4. [4]東京地裁平成23年11月18日判決(『消費者法ニュース』92号344ページ)
  5. [5]大阪地裁平成22年3月29日判決(『判例時報』2093号92ページ)
  6. [6]神戸地裁平成7年7月25日判決(『判例時報』1568号101ページ)


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