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[2017年4月:公表]

L&Gによるマルチ商法的な巨額詐欺事件における上位会員の不法行為責任

 本件は、株式会社エル・アンド・ジー(以下、L&G)が企画し、出資の募集・勧誘等を行った金融商品に出資した消費者らが、その金融商品についての出資の募集・勧誘等は出資法に違反し、マルチ商法で組織的詐欺行為を構成するものである等として、勧誘者である上位会員、およびグループ会社の役員、従業員に対して損害賠償を求めた事例である。

 裁判所は、グループ会社の役員と上位会員の勧誘者で組織の破綻(はたん)の予見可能性があった者に対して損害賠償を命じたが、あまりに高金利である話に飛びついた被害者にも落ち度があるとして勧誘者の損害賠償責任については5割の過失相殺をした(役員については過失相殺を否定)(東京地裁平成27年3月30日判決、LEX/DB掲載)。


事案の概要

原告:
Xら(判決時62名)
被告:
Y1(L&Gの代表取締役)、Y2ら(L&Gのグループ会社の役員および勧誘員ら、判決時38名)
関係者:
株式会社エル・アンド・ジー(L&G)

 L&Gは、1987年の設立当初は健康食品や健康器具などの物販事業をマルチ商法的な手法で行っていたが、2000年に年利12%の出資金を募るようになり、2001年からは年利23%の預託金ビジネスを始めた。さらに、2003年からは元本保証で年利36%の金融商品の販売を始めるなど、その後も次々に新たな金融商品の販売を行うようになった。これらの金融商品の販売方法は、従来のマルチ商法的手法を転用したものであった。なお、2002年11月の時点でほとんど売り上げはなく、物販事業からは完全に撤退し、以降は金融商品の販売に注力していた。

 その後、2007年4月から、マスコミでもL&Gの商法の問題性が取り上げられるようになり、同年10月にはL&G本社に警視庁等の強制捜査が入り、11月26日には破産開始決定がされた。L&Gの破産管財人の調査によると、L&Gグループが集めた総合計入金額は2403億円に上っていた。

 L&Gが販売した金融商品に出資したXらは、L&Gおよびその子会社等の関連会社(L&Gグループという)によるその金融商品の出資の募集・勧誘等は出資法に違反し、公序良俗に反するものであるほか、その勧誘方法もY1を頂点として組織的に行われたマルチ商法(連鎖販売取引商法)であり組織的詐欺行為を構成すると主張した。また、L&Gグループの役員・従業員、およびL&Gの上位会員らにも、L&Gによる出資金等の返還が早晩行き詰まり、新たに出資した者がその返還を受けられないことまたはその蓋然(がいぜん)性が高いことを認識し、あるいは認識できたにもかかわらず、上記募集・勧誘時に必要不可欠な役割を分担し、直接または間接的にXらを勧誘するなどして出資させたとして損害賠償を求めた。



理由

●L&Gの商法について

 L&Gの投資商法は、不特定多数の会員から、一定の金員をL&Gに交付させ、交付金の元本と同額の返還を前提として、高利回りの配当を約束するものであり、交付金が出資法上の「預り金」に該当するから、出資法2条1項に違反する。また、L&Gの勧誘手法は、マルチ取引またはネズミ講的な手法を用いたものであり、(1)L&Gの投資商法における高利配当の原資は、もっぱら新規加入者の拠出金であるから、新規加入者がねずみ算式に増加していかなければ、既存の加入者に対する配当金が停止し、巨額の負債が残り破綻することが明らかであること、(2)年利23%、年利36%、円天(解説参照)受取保証金に至っては100%という高利をうたっており、これらは加入者の射幸心を不当にあおるものであること、(3)L&Gの投資商法において、既存の会員等に対する配当原資は、新規会員の拠出金のみであり、上位会員が紹介料等の名目で多額の利益を得る一方、いったん破綻すれば、新規会員を中心に元本を回収できない被害が多数現れること(加入者の相当部分が損害を被ること)、というネズミ講類似の要件を備えていることから、ネズミ講と同様、公序良俗に反するというべきである。さらに、L&Gは、L&Gの投資商法の破綻が必然であったにもかかわらずこれを隠ぺいし、あたかも同社が信用できる会社であるかのように装い、金融商品の販売と勧誘を続けてきており、このような行為は組織的詐欺と評価すべきであった。以上によればL&Gの行っていた投資商法は、違法なものであることが明らかである。

●勧誘員の損害賠償責任について

 Xらに直接勧誘した勧誘員は、当該勧誘員が主観的要件(故意・過失)を満たし、その行為とXらの損害との間に相当因果関係が認められる場合には、不法行為責任を負う。また、上位の勧誘員が直接勧誘していない場合であっても、同様に主観的要件を満たし、傘下の者を道具または手段として勧誘行為を行わせていたと評価できる場合には、直接勧誘を行ったものと同視し、不法行為責任を負う。

 また、勧誘者らは、L&Gが自転車操業状態をさらに悪化させ早晩破綻するしかないということを認識できなかったというような個別の特段の事情がない場合には、2004年5月11日に新たな詐欺的金融商品の販売が始まったころには、L&Gが早晩行き詰まり、新規出資者が出資した場合にその返還が受けられないことまたはその蓋然性が高いことを認識できたと推認できる。したがって、それにもかかわらず自ら勧誘し、あるいは傘下の者に勧誘させるなどの行為をし、その行為とXらの損害との間に相当因果関係が認められる場合には、不法行為責任を免れないというべきである。その場合には、勧誘者らの上記認識可能性が認められる時点が2004年5月11日頃であることから、Xらの2004年6月以降の拠出分に対応する損害について不法行為責任を認めるのが相当である。

●過失相殺について

 Xらは異常に高配当であるL&Gの金融商品に拠出して損害を受けており、勧誘者との間においては一定の落ち度を認め、その損害について過失相殺をすべきである(5割の過失相殺)。Yら役員との間においては、Y1が、L&Gの投資商法において、L&Gの役員として重要な業務を行った(Y1は一貫して事業を統括していた)ことに照らせば、過失相殺をするのは相当ではない。



解説

 本件は「円天」に関する民事裁判の事例である。その実態は「円天」という名称の仮想通貨を用いた通信販売事業を行っていると称して(通信販売の実体はなかった)、元本保証・高配当との説明をして出資の勧誘を行い、さらに出資した者が知人などを勧誘して出資させることによってさらに大きな利益が得られるしくみを取る詐欺的取引である。マルチ商法的手法で勧誘して拡大していったが、最終的には破綻し、出資法違反で刑事摘発された後に、組織的詐欺罪で有罪判決が確定した。刑事摘発された後に、弁護団が被害者の会を組織して破産申立をしたものの、会社にはみるべき資産がないことが判明したため、関連するグループ会社の役員と勧誘者である上部会員百数十名に対して、共同不法行為による損害賠償請求をしたのが本件である。

 判決では、本件商法そのものについては「ネズミ講類似の要件を備えていることから、ネズミ講と同様、公序良俗に反するというべきである。さらに、L&Gは、L&G投資商法の破綻が必然であったにもかかわらずこれを隠ぺいし、あたかも同社が信用できる会社であるかのように装い、金融商品の販売と勧誘を続けてきており、このような行為は組織的詐欺と評価すべき」であると判断した。

 勧誘員の責任については、関与した時期等によって破綻の予見可能性の有無を判断し、破綻の予見可能性がある者については、不法行為の主観的要件を認め、対応する被害者に対する損害賠償を命じた。勧誘員の破綻の予見可能性については、事業者が設立当初はマルチ商法的手法で健康食品等の物販をしていたものの、徐々に高金利の金融商品を同様の手法で販売するようになり、2003年に物販から撤退し、翌年5月にはさらに高利率をうたう実態のない金融商品を販売し始めたという変遷があった(当初からネズミ講的なものであったわけではない)などの事情を踏まえて、予見可能性があったと認められる時期を2004年6月以降と認定した。そして、原則としてこの時期以降に、自分で勧誘をした者だけでなく、傘下の者に勧誘をさせていた場合についても不法行為に該当するとして損害賠償を命じた。ただし、異常に高配当(年利23%・年利36%)であることを信じたことについて被害者にも落ち度があるとして、勧誘員の損害賠償については5割の過失相殺をした。役員の不法行為責任については、過失相殺を認めていない。

 金のペーパー商法*について、詐欺的金融商品による被害者が、勧誘や電話でアポイントをとる仕事をしていた女性パートに対しても損害賠償請求をして認容された事件に豊田商事事件がある。この事件で損害賠償を命じられたのはすべて豊田商事の従業員であった(参考判例[2])。本件事件では勧誘者は従業員ではなく事業者と契約して拠出金を支払って会員となって下部会員の勧誘を行っていた勧誘者である点に特徴がある。

  • *純金などの現物を売るとして消費者から代金を受け取るが実際には現物を渡さず、紙切れを預かり証などとして渡す商法。


参考判例

  1. [1]最高裁昭和31年8月30日判決(刑集10巻8号1292ページ)旧貸金業取締法7条(現在の出資法2条に相当する条文)の預り金該当性について判断した事例
  2. [2]大阪高裁平成元年3月31日判決(『判例時報』1327号40ページ)豊田商事の従業員の不法行為責任を認めた事例


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