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[2017年1月:公表]

劇場型勧誘で使われた電話転送サービス提供事業者の責任

 本件は、当時72歳の高齢者に「確実に利益があがる」「元本は保証する」などと勧誘し、宝石の売買会社への投資と称して約900万円を支払わせたことに関して、高齢者が特殊詐欺の勧誘業者(以下、勧誘業者)の代表取締役(会社は既に破産)に対しては共同不法行為責任による損害賠償請求、固定電話回線のレンタルサービス(電話転送サービス)を勧誘業者に提供した者(以下、電話転送サービス事業者)に対しては本人確認などの注意義務違反による損害賠償請求をした事例である。

 裁判所は、犯罪収益移転防止法により契約相手に関する本人確認義務が法律で義務化される前ではあったが、事業者が本人確認を怠った過失により勧誘業者に加担したとして、電話転送サービス事業者に、勧誘業者と連帯して不法行為による損害賠償を命じた(過失相殺なし)(さいたま地裁平成27年5月12日判決)。

  • 『消費者法ニュース』104号370ページ

事案の概要

原告:
X(消費者)
被告:
Y1(C社の代表取締役)
Y2(電話転送サービス業を営んでいた者)
関係者:
A社(Y2の屋号)
B(電話転送サービス契約の名義人)
C社(Xに架空の投資を勧誘した業者)
D(経営コンサルタントと称する者)
E・F(自称C社の従業員)
G社(「品川商事」、買取会社と説明された会社名)
H(自称弁護士)

 2012年6月初めごろから、C社からXのもとに宝石の販売会社の会員にならないかと勧誘するパンフレットなどの資料が同封された封筒が郵送されてきていた。その後経営コンサルタントのDと称する人物から「C社のパンフレットは届いたか」という内容の電話がかかってきた。Xが「パンフレットは捨ててしまった」と答えたところ、C社から再びパンフレットが送られてきた。すると間もなく、DやC社の従業員と称するEやFらから相次いで電話がかかってくるようになった。「C社という会社は宝石の販売をしている。会員にならないか」「宝石に興味がなくても、名前だけでもよい」と電話で言われ、最初は断っていたが再三頼まれたことから、名前だけならばいいかと思い会員になることにした。するとDは、何回も電話で「会員が宝石を買うとポイントが付く。G社のところでポイントを換金すると宝石を買った時に支払った以上のお金が戻ってくる。お金を出してもらえませんか」と言ってきた。Xは最初断っていたが再三電話で勧誘されたうえDが「私はG社に信用されているので私が掛け合えばXが支払ったお金を1.2倍から1.5倍にしてすぐお返しする」などと述べたことや、EやFらがDを「先生」と呼んでいることからすっかりDを信用してしまった。さらにその後Hから電話があり「私は弁護士をしている。Dは信用できる人物でありG社から大変信頼されているので1.2倍どころか1.9倍分以上の金額が戻ってくる」と言われたためいっそう信用してしまった。そして、「今の金額ではG社が換金に応じないのでもっとお金を出してほしい。より儲(もう)けることができる」「お金は絶対に戻ってくる」などといった勧誘を受けるたびにXは数百万円を支払った。Xは「宝石に価値はあるのか、払ったお金は本当に戻ってくるのか」と時折疑問を持ちつつも、結局合計4回にわたり宝石代金として合計約900万円をFらに手渡した。しかしその後Fから電話があり「Dが入院したので代わりに自分がG社に行って換金して来て支払う」との連絡があったのを最後に連絡が取れなくなりお金は一切戻ってこなかった。

 勧誘に使用された電話番号を調べたところY2がA社の屋号で営んでいる固定電話回線のレンタルサービス(以下、電話転送サービス)を利用したものであり、契約名義人は本件とは無関係のBとなっていた。Bは名義を勝手に使用されたに過ぎなかった。Xは、Y1はC社が違法な業務をしないよう監視する義務を怠っていたことから、取締役としての監視義務違反による損害賠償責任があるとし、Y2には契約名義人の本人確認などの注意義務を怠っていたことから過失による不法行為責任があるとしてY1(C社の代表取締役)とY2(電話転送サービス事業者の経営者)に対して損害賠償を求めて提訴した。



理由

1.Y1の損害賠償責任について

 C社の違法行為は、その営業方針に由来するものであり、C社の経営に代表取締役として関与したY1はC社とともに共同不法行為責任を負う。また、Y1はC社の代表取締役であるからC社が違法な業務をしないように監視する義務が存在するところ、故意または重大な過失によりこれらの監督責任を果たさなかったから、会社法429条1項(役員等の第三者に対する損害賠償責任)に基づき、Xが被った損害を賠償する義務を負う。

2.Y2の共同不法行為責任について

 Y2は他の関係者のことは知らないと主張し共同不法行為責任は無いと争った。しかしY2はA社の屋号で電話転送サービスを営んでおりB名義で契約した電話がC社の詐欺行為に使用されたことが認められる。そして、Y2がB名義の契約の際、電話転送サービス事業者に課せられた本人確認義務を怠ったことが認められるからY2には過失がある。本人確認を怠った電話回線が本件のような詐欺に利用されることは容易に予見できることである。そうすると、Y2はC社のXに対する不法行為について過失により加担したものとして共同不法行為責任を負うと認めるのが相当である。



解説

 本件はいわゆる「買え買え詐欺(劇場型勧誘)」に関する事例である。被害者である消費者が、電話転送サービスに対してレンタル契約を締結する際に契約相手の本人確認を怠ったことは過失による不法行為に当たるとして、特殊詐欺業者と連帯して劇場型勧誘による被害全部の賠償を求めた事例である。

 劇場型勧誘などの犯罪収益を防止するための法律として「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、犯罪収益移転防止法)がある。同法では「顧客に対し受付代行業者の電話番号を顧客が連絡先の電話番号として用いることを許諾し顧客宛ての又は顧客からの当該電話番号に係る電話を受けてその内容を顧客に連絡するサービスを提供する者」は「電話受付代行業者」として契約締結時に本人確認義務を課している。

 しかし「顧客に対し自己の電話番号を顧客の電話番号として用いることを許諾し顧客宛ての又は顧客からの当該電話番号に係る電話を当該顧客が指定する電話番号に自動的に転送する役務を提供する者」については「電話転送サービス事業者」として2011年の犯罪収益移転防止法改正により特定事業者として新たに規制対象とされ、同改正法は2013年4月1日から施行された。

 本件は同改正法施行前の2012年の事件であり、本件の勧誘に使われた電話サービスは従来から規制されていた電話受付代行事業ではなく電話転送サービスに該当するものであったことから、改正法施行前の事業者にも本人確認を怠った過失による不法行為責任があるか否かが争点となった。判決は2011年の犯罪収益移転防止法改正が、既に電話転送サービスが犯罪に利用されている実態が社会問題となっていたことによるものであり、改正法施行前であっても予見可能性があったとの視点に立って不法行為責任を認めた。類似のケースの参考になる。

 なお、犯罪収益移転防止法は特定事業者が特定取引等を行う際には本人特定事項・取引を行う目的・職業と事業内容・実質的支配者を確認することを義務づけ、その確認記録と取引記録の作成と7年間の保存を義務づけている。さらに、取引時に確認した事項について最新の情報を保つように努めるとともに、特定事業において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある場合には、速やかに警察に届け出ることを義務づけている。



参考判例

  1. [1]東京地裁平成26年12月10日判決
    (私書箱サービス事業者につき過失による不法行為責任を認めた事例、過失相殺4割『消費者法ニュース』103号283ページ)
  2. [2]東京地裁平成27年3月4日判決
    (「競馬必勝法」提供事業者に銀行口座を提供した者に対して過失によって詐欺行為を幇助(ほうじょ)したと認定して不法行為責任を認めた事例、過失相殺9割)


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