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[2016年2月:公表]

電話占いで相談者をおびえさせ、祈とう料などを払わせた商法を不法行為だとした事例

 本件は、電話占いで「お稲荷さんのたたりがある」などと述べて相談者の不安をあおり、災いを取り除くことができると虚偽の事実を告げて祈とう料と護摩代を支払わせておきながら、実際は祈とうをしていなかった占いの運営者に対し、不法行為による損害賠償請求をした事例である。

 裁判所は、運営者の商法はひどく不当だったとして、占いの運営者の不法行為責任を認めて、総額約70万円の支払いを命じた(さいたま地裁平成26年2月24日判決)。

  • 『消費者法ニュース』101号335ページ

事案の概要

原告:
X(消費者)
被告:
Y(電話占いの運営者)
関係者:
A(Xの交際相手)

 Yは、「電話鑑定」と称する電話を利用した占いの営業をし、2008年から2009年頃、広告用のホームページ(以下、本件ホームページ)を開設して顧客の勧誘をしていた。Yは、不倫関係について占いを求める顧客には、必ず術外し(代金15万円)および魂抜き(30万円)をセットにした祈とうの勧誘をしていた。

 顧客から祈とうの申し込みを受けた場合、既存の有名な寺社に顧客の名義で祈とうの申し込みを行っていた(Yは「代理祈とう」と称する)。なお、Yが自分で祈とうを行うことはない。

 Xは、交際する男性Aが既婚者と知り、Aとの交際を継続するか悩んでいた。Xは、本件ホームページを見て、Yの電話鑑定を受けることにし、本件ホームページに記載された電話番号に電話をかけ、YにAとの関係についての相談をした。

 Xは、約1カ月後に、再びYに電話をかけ、Aとの関係について相談した。このときYはXの住所、電話番号、生年月日を聞き出し、次に電話があった際には、子宝に恵まれるための祈とうを勧誘するか、術外しと魂抜きのセットを勧誘することとした。Xは、約2週間後にYに電話をかけ、YにAとの関係についての相談をした。Yは、電話鑑定と称し、Xに対し、Aとの関係について「お相手の方は宗教をやっていますね」「宗教的に非常にきついものを感じます」「この実家のお稲荷さんが荒れていて、災いが起きています」「お稲荷さんというのは、とても強力な力を持っているものです。きちんと礼を重んじていればありがたい存在ですが、そうでない場合には大変恐ろしいことになります」「あなたは、相手の奥さんから見たら憎い存在、非常に排除すべき存在だから、あなたにも災いが来る。術とはそういうものだ」「お稲荷さんは動物霊になりますので、動物霊は非常に憑依(ひょうい)するというものが非常に強力なものであるから、大変困りましたね」などと述べた。Yの話を聞き、Xは自分に神の災いが及ぶとの思いに捕らわれ、強い恐怖心を抱いた。続けてYは、術外し15万円と魂抜き30万円で、Aの妻が神道系の白魔術を使ってかけた術を外し、妻とAを離すことで、妻が今後災いをかけることはなくなると説明し、「私が108日間の祈とうをします」と述べた。Xは、お稲荷さんによる災難から自らの身やAの身を守るためにはYの言う術外しと魂抜きをしなければならないと信じて、Yに対し祈とうを依頼した。翌日になってXは、祈とう料45万円と電話鑑定料32,700円を指定口座に振り込んで支払った。Yは、振り込まれた翌日に善光寺に、Xの名義で願いごとを「心願成就」とする護摩祈願を申し込み、祈願料30,000円を納付した。Xは、約3週間後、祈とうが成功するか不安で、Yに電話をかけた。Yは、「祈とうはうまく進んでいますよ。問題ありません」「ただ、Xさんがそれほど不安な気持ちを持っていることが祈とうに影響してはいけません。Xさんが守られる護符があります。これがあれば間違いなく大丈夫です」と説明して、護符を購入すれば祈とうが成功すると信じたXに護符を購入させ、護符代30,000円と電話鑑定料17,600円を支払わせた。Yは5日後、善光寺にXの名義で願いごとを「心願成就」とする護摩祈願を申し込み、祈願料30,000円を納付した。その後、XはYの祈とうに疑問を抱き、Yに問い合わせたがYは誠実に対応しなかった。そこで、Xは弁護士に依頼して、Yの商法は不法行為だとしてYに損害賠償を求めた。なお、Yは弁護士からの損害賠償を請求する通知に対して「Aの奥様に対する宗教的問題などの事例について、私は一切申しておりません」と記載した書面により回答した。



理由

 Yの商法は、占いの看板を掲げ、不倫関係の占いを求める顧客に対しては、1セット45万円の術外しと魂抜きのセットを申し込むように勧誘し、代金の支払いがあると顧客の名前で既存の神社に祈願の申し込みをして祈願料30,000円を納付するとの営業方針を取るものだった。Yは、この営業方針のもと、不倫関係の占いを求めるXに対し、強い神の災いがXに及ぶと虚偽の事実を告知して術外しと魂抜きのセットを申し込むように勧誘し、おびえたXが承諾してセット代金を支払うと、善光寺に護摩祈願を申し込んで祈願料30,000円を納付している。後日、恐怖が拭えないXが再び電話をかけると、あたかもY自身が祈とうを行っているかのように新たな商品をXに売りつけ、かたちばかりに再度善光寺に護摩祈願を申し込んで祈願料30,000円を納付している。以上の経緯をみれば、Yの商法は、商行為として著しく不当で、社会的に許容できず、全体として不法行為を構成する。したがって、Yは、Xに対し、祈とう料などの額約53万円、慰謝料10万円、弁護士費用約60,000円を合わせた額を賠償する義務がある。



解説

 消費者の悩みに付け込んで、鑑定会、相談会、勉強会などの名目で近づき、根拠のないことを告げて消費者をおびえさせ商品を売りつけたり、加持祈とうなどの名目で多額の金銭を支払わせたりする霊感商法や霊視商法などが社会問題となり、不法行為に該当するとして損害賠償請求が認められた事例もある(参考判例(1)〜(4))。最近では、スピリチュアルブーム、占いブームなどにより、類似の被害が増加傾向にあるといわれる。電話占いや遠隔祈とうなど、加害者が消費者と対面しないケースも出ている。

 本件は、ホームページで見つけた占い師に電話相談をし、電話で祈とうの依頼をしたケースについて、不法行為に該当するとして損害賠償を命じた事例である。

 参考判例(5)は、家族関係や不倫関係の悩みを持ち精神的に不安定だった女性がスピリチュアルカウンセラーと称する者に電話占い相談したことをきっかけに、カウンセラーが自分には超自然的能力があるとしてアドバイスをしたうえで「不倫相手には色情霊がついているので除霊をする必要がある」とか「夫婦そろって除霊を受けなければ災いが起こる」などと述べて合計650万円を支払わせた事例である。裁判所は、「原告に対する除霊の勧誘行為は、それ以前の状況も踏まえれば、社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものであるといえ、違法なものと言わざるを得ない」として、支払い済みの650万円と弁護士費用65万円の支払いを命じている。

 以下の要件を満たす場合は、不法行為と認められると考えられる。

  1. 1.消費者の窮迫・困惑等に乗じて、ことさらに不安や恐怖心をあおり、自分に超自然的な能力などの特別な能力があるように装い、その結果、消費者を誤信させるという社会的に見て不当な方法で行われていること
  2. 2.その結果、消費者の正常な判断が妨げられた状態で、
  3. 3.過大な金銭の支払いを要求する行為

 ただし、本件のように、加害者に欺罔(ぎもう)の意思が認められる場合には、2.3.の要件がなくても、不法行為を構成すると考えられる。



参考判例

  1. (1)大阪高裁平成11年6月29日判決(『判例タイムズ』1029号250ページ)
  2. (2)福岡地裁平成11年12月16日判決(『判例時報』1717号128ページ)
  3. (3)新潟地裁平成14年10月28日判決[PDF形式](裁判所ウェブサイト)
  4. (4)大阪高裁平成20年6月5日判決(『消費者法ニュース』76号281ページ、兵庫県弁護士会ウェブサイト)
    易断に鑑定料または祈とう料の支払いを求める行為が、不法行為と認められた事例(国民生活センター)
  5. (5)東京地裁平成26年3月26日判決(『消費者法ニュース』101号338ページ)


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