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[2015年5月:公表]

サクラサイトの運営業者に対し不法行為責任を認めた事例

 本件は、複数の有料メール交換サイトの運営業者Yが、サクラを使って消費者Xをサイトに誘い込み、金銭の供与等を持ちかけるサクラとのメール送受信等を通じて多額の金銭を振り込ませるなどしたとして、Xが、詐欺による不法行為に基づき損害賠償を求めた事案である。原審は、サクラとYの関係等につき主張上明らかでないとして請求を棄却した。これに対し、Xが控訴した。

 裁判所は、Yが、本件各サイトにおいてサクラを使用し、資金援助や連絡先交換等が実現する可能性があるとXを誤信させ、利用料金として多額の金銭を支払わせており、詐欺に該当するとし、Yの不法行為責任を認め、Xの損害賠償請求を全額認容した(東京高裁平成25年6月19日判決) 。

  • 『判例時報』2206号83ページ

事案の概要

原告:
X(消費者)
被告:
Y(有料メール交換サイト運営業者)

 Yのサイトはいわゆる「出会い系サイト」である。

 一般に出会い系サイトでは、利用者はまずポイントを購入する。利用者宛にメールが届くと、サイトの運営業者からメールのタイトル、差出人のハンドルネームと本文冒頭が通知され、利用者は全文を読むためにメールに添付されたURLのサイトにアクセスし、メールのやり取りを行う。

 本件各サイトでは、メールのやり取りなどの操作ごとにポイントが引き落とされる。アドレスの添付や専用回線利用などはさらに高額なポイントが必要だった模様である。

 Xは、日頃から参加無料の懸賞サイトに登録し懸賞に応募していたが、Xのメールアドレスに「現金をお渡しします」というタイトルのメールが届き始めた。これらのメールの全文はリンク先にアクセスしないと読めないため、Xがリンク先をクリックしたところYの有料メール交換サイトの1つに接続した。メール交換のためには会員登録が必要であったので、Xは2009年3月に会員登録をした。すると同月より2010年にかけて10 名を超える相手から大量にメールが送られてきた。いずれも何らかの理由で数百万〜数千万円の金銭の供与を申し出るものであった。Xは相手方らの指示に従い、セキュリティーが強化された専用回線やスピードアップの使用、アドレスなどのやり取り(通常の送受信のほかにポイントを必要とする)、指示に従った暗号(数字とアルファベットの組み合わせなど)の大量の送信、相手方との面会日時や場所設定のための大量のメール送受信(相手方が約束を頻繁に変更したりする)などを繰り返し、大量のポイントを消費し、さまざまな方法で利用料金を支払った(合計約2000万円)。しかし金銭の供与、面会などは一切実現していない。

 原審(横浜地裁平成24年6月11日判決)は、Yの不法行為の日時、内容など、Xの誤信内容、錯誤に基づくYへの送金ないしポイント購入の時期および金額につき特定がなく、サクラとYの関係等につき主張上明らかでないとして請求を棄却した。これに対しXが控訴した。



理由

 本件各相手方等(Xが本件名サイト内でメール交換をした相手方は、本件相手方のほかに名前が明らかではない人が2〜3人程度いた。彼らを総称して「本件各相手方等」という)からの申し出は、見知らぬXに対し、指示に従えば数百万円ないし数千万円という多額の金銭を供与する、面談や実験対象となってくれれば相当の対価を支払うなど、ありえない不自然な話で、そのいずれについてもまったく実現していないのであり、本件各相手方等がこれを実現する意思、能力を有していないことは明らかである。

 本件各相手方のXに対する指示((1)メールの送受信に専用回線を使わせたり、メールアドレス、電話番号、個人の氏名を添付する必要があるなどとして高額ポイント消費をさせる、(2)暗号入力操作、口座番号の入力操作などを命じ、さらにその送受信に多大なポイントが消費されるよう際限なくその手続きの繰り返しを要求する、(3)面会や金銭の手渡しを約束してはキャンセルすることを繰り返し、極めて多数の送受信を余儀なくさせている)に合理性は見いだし難く、その目的はいずれもXにできるだけ多くのポイントを消費させ、Xに利用料金として高額の金銭を支払わせることにあることは明らかである。

 高額な利用料金を支払わせることによって利せられるのはYをおいて他にない。本件各相手方にとっても高額な利用料金の負担が課せられるはずであるが、それにもかかわらず、本件各相手方がXに利用料金を支払わせようとしている事実は、相手方には利用料金の負担義務が課せられていない事実および相手方がYの利益を意図して行動している事実を推認させる。

 したがって、Xが本件各サイトにおいてメール交換した相手方等は、一般の会員ではなく、Yが組織的に使用している者(サクラ)であるとみる他はない。

 以上によれば、Yは本件各サイトにおいて、サクラを使用して、かつサクラであることを秘して、資金援助や連絡先交換または待ち合わせなど、役務ないし利益の提供をする意図もないのに、それらが一定程度実現する可能性があるとXを誤信させ、Xに役務ないし利益の取得のため、送受信等を多数回繰り返させたり、上記資金援助等の目的達成のためには虚偽の暗号送信等の手続きが必要であるとの虚偽の事実を申し向けてその旨Xを誤信させ、利用料金として多額の金銭を支払わせた詐欺に該当するものというべきである。YはXに対し、民法709条による不法行為責任を免れることはできない。



解説

 サクラサイトによる被害はマスコミにも取り上げられ、広く知られるようになったが、訴訟で被害を回復するにはサクラと思われる相手方とサイト運営業者の関係を立証する必要があり、難しい。原審はその他にYの不法行為の日時、内容など、Xの誤信内容、錯誤に基づくYへの送金ないしポイント購入の時期および金額についての特定も求め、結果としてXの請求を棄却している。

 本件はまず、個々の相手方ごとの勧誘時期・内容や要求してきた操作等の概要、分かるものについてはメールの回数(数百回から千回を超えるものもある)を認定している。そのうえで、(1)相手方からの申し出が、見ず知らずの者に多額の金銭を供与するようなあり得ない不自然な話であり実現もしていないことから、相手方に実施の意思・能力がないこと、(2)行為の目的ができるだけ多くのポイントを消費させ高額な利用料を支払わせることにあること、を認定している。さらに、高額な利用料支払いで利益を得られるのはY以外にいない(相手方も一般の会員であるとすれば、多くのメールの送受信には当事者双方にとって高額の利用料金の負担義務が生じるので当事者にとってメリットはないとしている)にもかかわらず、相手方がXに利用料金を支払わせようとしている事実から、相手方には利用料金の負担義務が課せられていない事実、および各相手方がYの利益を意図して行動している事実を推認させるとしている。そして、これをもって相手方等を一般の会員ではなくサイト運営者が組織的に使用しているサクラであると認定した。

 このような方法でサイト運営者とサクラの間の関係を立証できれば、救済される事例が増えると思われる。

 本件でもう1つ特徴的なのは、Yのサイトの利用料金すべてを損害と認定した点である。Xがメールを送受信した中に一般の会員がいれば、その利用料金は損害とはならないはずである。 しかし判決は、判明した相手方以外について、Xがメール交換をした相手方は他にも2、3人程度いるが、「それらの相手方からのメールも暗号を入れると金銭を贈与するなどという内容のものであった」「Xが本件各サイトにおいてメール交換をした相手はすべてサクラである」として利用料金全額を損害としている。

 なお、X側訴訟代理人が本件訴訟係属中に地域およびハンドル名を変えて女性名で本サイトに3件登録したところ、数分後から大量のメールが届いたが、3件とも同一名の相手方から財産の譲渡を示唆(しさ)するまったく同一の文言のメールであった。返信するとYへの入金を促す個別メールが繰り返されたが、いずれも同一名で、地域と待ち合わせ場所・出身地等以外は内容も同一文で、同一時刻に送られていることが多かった。判決はこれをもって、メールの送信を専属的に担当する者から多数の会員宛に組織的に送信されていることがうかがわれるとしている。



参考判例

  1. (1)東京地裁平成25年5月23日判決
    (LEX/DB)
  2. (2)東京地裁平成25年4月25日判決
    (LEX/DB)
  3. (3)東京地裁平成25年4月9日判決
    (LEX/DB)
  4. (4)さいたま地裁平成23年8月8日判決
    (『消費者法ニュース』89号231ページ)


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