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[2014年12月:公表]

海外不動産使用権を対象にした劇場型勧誘について、被害金額全額と弁護士費用の損害賠償が認められた事例

 本件は、カンボジアの不動産使用権を対象にした、いわゆる「劇場型勧誘」における被害金額全額と、弁護士費用相当額について、被告事業者の共同不法行為による損害の賠償を命じ、事業者が主張した被害者の損益相殺および過失相殺を認めなかった事例である(被害金額465万円、弁護士費用相当額約50万円) (東京高裁平成26年2月20日判決、カンボジア不動産投資被害弁護団公式サイト)。


事案の概要

被控訴人(原告):
X
控訴人(被告):
Y1(販売会社、第1次販売代理店)
Y2(国内代理店、日本総代理店)
Y3(Y1、2代表取締役)
Y4(Y1の従業員)
関係者:
A1(電話勧誘業者)
A2(A1の従業員)

 Xは、69歳で中学卒業後から働き始め、22歳で結婚したものの、17年前に夫は死亡しており、本件事件当時はヘルパーをしながら娘と2人暮らしをしていた女性である。

 貯金は老後の蓄えとして約500万円あり、投資経験はない。

 Xは、2012年5月22日頃、A2と称する人物からの電話で「郵便は届いたか。カンボジアの土地が欲しいので名義を貸してほしい。一口(15万円)買ってくれたら20万円で買い取る」と言われた。

 数日前にY1から封書が届いていたので、XはY1に電話し、1口分を購入する旨伝え、15万円を郵便為替で支払った。

 Xは、A2から追加購入を依頼され、Y1に連絡したが30口という大口しかないと言われ、A2に確認を取ったうえで購入することにし、X宅に訪問してきたY4に450万円を手渡した。

 その後、XがA2に買取代金の支払いを求めたところ、Y1に名義変更の書類の郵送を依頼するように指示された。Y1に連絡すると、「あと1500万円分買えば名義変更できる」と言われた。

 これをA2に伝えたところ、Y1に500万円送金するとのことだったが、Y1から「500万円がXの名前でA1から送られてきたがどういうことか。違反だ。受け取れない。すぐにあなたから1500万円を送ってほしい」などと言われた。

 Xは途方に暮れて家族に相談したところ、だまされているのではないかと指摘され、警察や消費生活センターに相談した結果、本件訴訟を提起したものである。

 本件は、カンボジアの農地使用権(永借権)(以下、本件権利)に関する「買え買え詐欺」といわれる劇場型勧誘である。

 Xは、本件権利のA1の第一次販売代理店Y1、日本総代理店Y2、両者の代表取締役Y3、Y1の従業員Y4に対し、共同不法行為および会社法429条1項の任務懈怠(けたい)による損害賠償を求めて提訴した。

 原審では、本件取引は本件権利を購入する意思のなかったXに虚偽の話を告げ、本件取引を行わせたものであり、それ自体詐欺であり共同不法行為に該当するとして全額の損害賠償を命じる判決が出たものの、Y1らが控訴した。

 Y1らの控訴理由は、何ら面識のないA2からの電話による勧誘に応じ、同人の身分や立場等を確認せず、名義を貸しただけで15万円が20万円になって戻って来るとの話を信用し、465万円を支出したものであるから、Xの落ち度は大きく、過失相殺をすべきである、本件権利は実体のある権利であるからその価格相当額は損益相殺すべきなどというものであった。



理由

(1)損益相殺について

 本件取引により、Xに販売された本件権利は、その性質が必ずしも明らかでなく、取引について市場価格が形成されているとは認められないから、金銭的価値を把握することはできず、そもそも損益相殺をする前提を欠くというべきである。

 もっとも、Xは、Y2から事業収益として6万4635円および11万9245円の送金(配当)を受けたことを自認しているけれども、本件取引は、A1のA2がY1・Y2らと共謀し、実態不明な永借権について、Xが購入した同権利を買い取るとの虚偽の話を告げて行われたものであり、その売買代金も合計465万円と高額であり、反倫理的行為に当たるというべきであり、これを損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することも許されないものというべきである。

(2)過失相殺について

 本件取引は、前判示どおり反倫理的行為に基づくものであり、Xは、Y1・Y2・Y4らと共謀したA1のA2から虚偽の話を告げられ、誤信した結果金銭を騙取(へんしゅ)されたものであるから、A2の身分や立場等を書面等で確認することなく同人の話を信用し、本件取引に応じたとしてもXに過失と言えるほどの落ち度があったとは認められない。

 したがって、Y1・Y2・Y4らの共同不法行為として行われた本件不法行為(本件取引)について、過失相殺は認められない。

 なお、Y3の責任も、Y1・Y2の不法行為について、代表取締役としての任務懈怠を原因とするものであるから、同様に過失相殺を適用するのは相当ではない。



解説

 いわゆる「買え買え詐欺(劇場型勧誘)」によるカンボジアの農地使用権に関する事例である。「買え買え詐欺」とは、相手方が複数の登場人物を用意し、いろいろな役割を演じることで消費者に「買い取ってもらえるので、自分には投資リスクはない」と誤信させ、さまざまな投資金名目で金銭をだまし取るものを指す。金融商品などを購入する意思のない消費者に対し、本件のように名義を貸してほしいとか、代わりに購入してくれれば手数料を上乗せして買い取るなどと持ちかけ、消費者名義でいったん買い取らせる手口から「買え買え詐欺」と呼ばれる。

 未公開株、社債、各種事業投資などのファンド、ダイヤモンド、有料老人ホームや墓の使用権、実体のない権利、外国の不動産など投資対象商品は多様化している。

 本件被告らはもっぱら「カンボジアにおける農地使用権」や「高齢者向けアパート」等を対象に「買え買え詐欺」を行っていたものであるが、これらの権利の実態は不明である。

 近年「買え買え詐欺」などの詐欺的投資話による消費者被害が増加しており、警察庁では振り込め詐欺などと合わせて特殊詐欺とし、注意を呼びかけている。

 本件では、本件権利の実態が不明であると認定し、価値も評価できないこと、興味を持っていなかった消費者に対し、販売業者とは無関係な事業者を装って名義を貸してほしい、代わりに購入してなど、その気もないのに虚偽の話を持ちかけ、契約させた点などから、社会的相当性を逸脱する違法な勧誘であって、違法であり、不法行為に該当すると判断、代表取締役については悪意または重過失による任務懈怠があるとして会社法429条1項に基づく損害賠償責任を認めた。

 被告らは別会社の従業員と名乗る人物からの「名義を貸してほしい」との電話を信用した点に大きな過失があるから過失相殺をすべきであること、本件権利の価値などについて損益相殺すべきであると主張したが、本件が消費者の資産をねらった社会の倫理、道徳に反する醜悪な行為(反倫理的行為)であることから、過失相殺も損益相殺もともに認めなかった。



参考判例

【損益相殺・過失相殺関連判決】

  1. (1)最高裁平成20年6月10日判決『最高裁判所民事判例集』62巻6号1488ページ
  2. (2)最高裁平成20年6月24日判決『最高裁判所裁判集民事』228号385ページ

【本件の原審判決】

  1. (3)東京地裁平成25年11月6日判決(*)

【関連判決】

  1. (4)東京地裁平成26年1月17日判決(*)
  2. (5)東京地裁平成26年1月30日判決(*)
  3. (6)東京地裁平成26年4月24日判決(*)
  4. (7)東京地裁平成26年3月28日判決(*)
  5. (8)東京簡裁平成26年3月27日判決(*)

(*)カンボジア不動産投資被害弁護団公式サイトより



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